日清オイリオグループ・久野貴久社長
(画像=日清オイリオグループ・久野貴久社長)

――2021年を振り返って

2021年は、CSV経営(共有価値の創造)を実践するための長期的なビジョン「日清オイリオグループビジョン2030」を発表し、その実現に向けた中期経営計画「バリューアップ+」をスタートする節目の年となった。

一方、製油業界を取り巻くコスト環境は、先行してコロナ禍から回復しつつあるエリアでの需要増や菜種の大きな減産などで、原料事情はこれまでになくひっ迫している。世界的な脱炭素の流れを背景としたバイオ燃料需要の増加による需要構造の変化が追い打ちをかけ、主要原料の大豆、菜種、パーム油の相場が歴史的高値圏で推移したことから、年4回の価格改定をせざるを得なかった。

――各事業の状況や取り組みについて

ホームユースは、価格改定への取り組みや、市場全体と同じく、昨年の内食需要の高まりの反動から、金額、容量ともに前年割れとなった。安定供給を前提とした汎用油の価格改定に真摯に取り組んでいる。

合わせて、油のカテゴリの更なる成長と活性化を図るため、こめ油などの付加価値油の継続的な拡販提案、ごま油、サプリ的オイルのアマニ油やえごま油といった「かけるオイル」の提案に加え、新たなカテゴリとして、「味付けオイル」の創造に取り組んでいる。ここ数年注力してきた付加価値油のカテゴリは、売上ベースで上期の実績は、前年同期比103%となった。

「味付けオイル」では、「使っておいしく、そしてたのしい」という、新たなカテゴリ創造に取り組んでいる。「やみつきオイル」のシリーズ展開と「ボスコシーズニングオイル」の発売、継続的な提案活動によって、「味付けオイル」を根付かせ、将来的には油を代表的な基礎調味料「さしすせそ」に次ぐポジションに高めることを目指している。

業務用は、コロナ禍による外出自粛、緊急事態宣言の再延長による飲食店に対する営業自粛要請期間が長期におよび、外食向けのパッケージ品の販売は苦戦した。ただ、需要の一部持ち直しと販売価格改定により、上期の売上は前年同期を上回った。「ニーズ協働発掘型」提案営業を展開し、長持ち機能を付加した「日清吸油が少ない油」などの機能フライ油や、「日清炊飯油」といった機能性油脂を含む付加価値型商品群の提案で、新規顧客開拓にも努めている。機能フライ油と付加価値油の上期売上高は前年同期比119%と伸びは大きい。

加工用は、緊急事態宣言の影響で全体需要が落ち込む中、適正価格の販売を維持したことで、上期売上高は前年同期を超えた。

加工油脂は、国内ではコストに見合った適正価格形成の取り組みと販売数量の回復で、上期売上高は前年同期を上回った。海外ではマレーシアのISF社の販売が堅調で、パーム油の高騰を受けた販売価格の改定により上期売上高は前年を超えた。

機能性素材・食品では、MCT(中鎖脂肪酸)は機能性素材マーケティングを展開し、加工食品メーカーや流通と連動したプロモーションを展開している。「日清MCTオイル」は機能性表示食品としてリニューアルし、店頭と連動したコミュニケーションを強化している。脂肪燃焼体質に続く、機能訴求として捉えているフレイル対策に関する外部コンソーシアムにも参画した。

〈需給の構造変化は継続する課題、価格改定に引き続き真摯に取り組む〉
――2022年に向けた取り組みは

2021年は製油業全体で、主要原料の需給ひっ迫に伴う原料コスト高騰への対応として、安定供給を前提に価格改定を真摯に進めた。2022年も需要と供給に関する構造変化は継続する課題と考えられ、常にお客さま、取引先さまへの情報共有を怠らず、「生きるエネルギー」の安定的な提供を前提として、価格改定に理解いただけるよう、引き続き真摯に取り組みを続けていく。

ホームユースは汎用油の適正価格の浸透と付加価値化に取り組み、油にできる価値「おいしさ」、「楽しさ」、「健康」の提供を、付加価値を通じて提案する。家庭内調理機会の高まりとともに、特に伸長したこめ油、ごま油、MCTといったカテゴリへの提案とともに、かけるオイルに続く新たなカテゴリとして「味付けオイル」の市場創造に取り組む。

業務用は、外食、中食における需要が消費者の生活導線に沿って、さまざまに変化し続ける状況で、潜在・顕在的な課題に対し、「ニーズ協働発掘型」営業を一層進めていく。コスト圧縮に向けてはフライ油の劣化抑制提案を、さらに調理工程の簡便化やテイクアウトにも対応した品質向上提案を軸にソリューションを提案し、常に取引先と寄り添い、選ばれるメーカーを目指していく。

加工油脂におけるチョコレート油脂では、欧州の需要回復を見据えた生産能力増強に向けた設備投資を進めるとともに、イタリアとマレーシアの生産連携により、グローバルサプライチェーンを構築していく。また、中国市場での拡販に向けたユーザーサポート機能も拡充し、ターゲット市場のトレンドに適した提案を強化していく。これらの取り組みで、グローバルトップグループの油脂ソリューション企業へ向けた事業展開を加速していく。

――キャノーラの需給がひっ迫する中での商品展開について

基幹的な商品はキャノーラ油だが、他に「日清ヘルシーオフ」などの商品があり、菜種のみの配合ではない。こういった商品の提案を通じながら、同じ価格帯の他商品へのシフトを進め、平準化に取り組んでいく。

――プラントベースフードの展開は

地球環境を考えると、何らかの形で手掛けていくべきテーマで、当社としてもチャレンジしていく。たん白質としてのアプローチはもちろんあるが、油脂としてのアプローチもある。あまり時間をおかず、具体化も進めたい。BtoCよりは、BtoBの商材になると思う。

――環境面を見据えた容器展開について

容器については、あらゆる可能性を排除しない。紙パックについても検討の対象になる。まずはリデュースということで進めてきているが、バイオマス由来の一部素材を組みこんでいくことや、まったくの新素材を用いた容器開発も選択肢に入ってくる。

〈大豆油糧日報2022年1月6日付〉