楽天、モバイル事業3,000億円の巨額赤字 楽天銀行が上場で資金調達も?
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

楽天グループがモバイル事業の巨額赤字に苦しんでいる。営業損益が赤字の状況が続いているが、それはモバイル事業の赤字が主要な要因だ。資金繰りも必要な状況になりつつあり、楽天銀行の上場も検討することになっている。楽天グループの最新動向に迫る。

モバイル事業の赤字に苦しんでいる楽天グループ

楽天の近年の業績を細かく見ていくと、同社がモバイル事業に苦しんでいることがよく分かる。2020年1~3月期以降において、楽天グループ全体の営業損益とモバイル事業の事業損益の金額は以下のように推移している。

楽天、終わらない巨額赤字 銀行上場で資金繰りもどうなる?

各四半期の決算短信では、決算期の始まりからその四半期までの累計の連結業績として営業損益が発表されている。その数字を四半期ベースの営業損益(①)として計算し直した上で、モバイル事業単体の四半期ベースの事業損益(②)と並べた。

①から②を差し引くと、かなり大雑把な解釈ではあるが、モバイル事業を展開していない場合の営業損益が導き出される。2020年1~3月期から2021年7~9月期にかけて、①から②を差し引くと全て黒字になっていることが分かる。

つまり、楽天の営業損益は2020年1~3月から2021年7~9月にかけては全て赤字だが、モバイル事業が大きく足を引っ張っているということだ。

楽天のモバイル事業が赤字に苦しんでいる理由は?

楽天のモバイル事業が赤字に苦しんでいるのは、モバイル事業のための基地局の設置や顧客獲得のためのキャンペーンに巨額の費用がかかっているからである。

これらの支出はいずれ小さくなっていけば、売上の増加との相乗効果で利益が出るようになるはずだ。現に、モバイル事業の売上高は2021年1~9月期は前年同期比26.5%増の1,622億800万円と伸びており、将来的な見通しは決して暗くはない。

ただし、現時点ではモバイル事業が負担であることは間違いなく、赤字が続けばキャッシュフローのさらなる悪化が避けられない。そんな中、楽天の三木谷浩史会長兼社長はこの状況をどう乗り切ろうとしているのか。多くの人が気になっている点ではないだろうか。

楽天銀行のIPOによる資金調達を検討

三木谷会長の打ち手の1つが、楽天銀行のIPO(新規株式公開)だと考えられている。IPOによって公開市場で資金調達を行えば、確かにキャッシュフローは改善する。報道などによると、これらの背景もあり楽天銀行のIPOを検討していることを三木谷会長は認めている。

楽天グループの三木谷会長の打ち手を、同社の株式を保有する個人投資家も注意深く見守っている。楽天グループの株式の過去5年間の騰落率はマイナス1.96%で、この1年の騰落率はプラス8.50%だ。この数字を「日経平均株価」の騰落率と比べてみると、以下の通りとなる。

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楽天グループの過去5年間の騰落率は、日経平均株価の騰落率をはるかに下回る数字だが、直近1年間の騰落率は日経平均株価の騰落率より高い。これらの数字を見ると、株式投資家からの三木谷会長への期待感は消えていないものと感じる。

目下の注目は楽天銀行のIPO

楽天グループに関しては最近、インターネット通販サイト「楽天市場」における「送料込み」に関する問題に関し、公正取引委員会が違反の判断をせずに審査を終了したことが話題になった。日本を代表する起業家の1人である三木谷会長も、とりあえずほっと胸をなで下ろしたはずだ。

楽天グループは、何かとニュースに事欠かない。2022年、三木谷会長はどのような動きを見せるのか。まず目下の注目は楽天銀行のIPOである。現在は検討段階だが、実際にIPOをするとなればいつのタイミングになるのか、多くの株式投資家の関心の的となりそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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