食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈カギは冷凍在庫の動き、和牛4等級で2,500前後、ホルス強い〉
2021年11月の牛肉の末端需要は、小春日和となった日が多かったことから、鍋物関係の動きが弱く、輸入牛肉を含めた相場高、そして前年の裏年による内食需要の一服などから量販店の販売は厳しい展開となった。

一方で、緊急事態宣言が解除され、外食・観光業界では自粛の反動によるリベンジ消費に期待が持たれ、中旬から地方のホテルやブライダル需要が回復した。

結果、ホルスを中心にヒレ、ロースの発注が増えて評価が上がったことで、ようやくパーツばらしの販売ができるようになった。

枝肉相場も、月末につれて年末需要の手当ての動きが始まったことで徐々に値上がりし、月間平均(東京市場)では和牛去勢A5が前月から22円値上がりして2,740円(前年同月比27円安)、A4では138円値上がりして2,477円(前年同月比41円安)となった。

12月も1週目は年末に向けた手当てから5等級と4等級でそれぞれ加重平均は2,800円台後半、2,500円台後半でスタートしたが、年末にかけての実需には不透明感も多く、品質の良い枝の手当ての目途がつき次第、一服する可能性も高く、「早ければ2週目から相場は折れるかもしれない」(関東の卸筋)と見る向きもある。

外食関係も接待や忘年会需要はもともとあまり期待ができなかったが、新型コロナの変異株「オミクロン株」の警戒も高まっており、帰省の動きなど年末年始の需要に不透明感が出ている。市中に冷凍在庫があることを鑑みても、枝肉相場も乳雄以外は前年を下回るとみられ、月間平均では去勢A5で2,800円前後、去勢A4で2,500前後と予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、12月の成牛出荷頭数は和牛が前年同月比8.6%増の5.1万頭、交雑は前年同月比9.8%増の2.4万頭となる半面、乳用種は前年同月比5.9%減の2.6万tと予想している。輸入品はチルドで前年同月比13.7%減の2.0万tに留まる見通し。

年末は和牛中心の動きとなるが、輸入品のコスト高もあって乳雄の引合いも強く、パーツも品薄となっているため、年末まで需給が締まった状況が続きそうだ。和牛でも近年は量販店などで差別化のため、雌の評価が高まっており、市場上場数によっては全体の加重平均を引き上げる展開もありそうだ。

〈需要見通し〉
足元の末端需要は決して良くはないが、量販店では例年通り、年末年始は和牛を中心とした売り場づくりを展開する方向。この間、各社売価を見直してきたなか、相次ぐ物価の値上がりで消費者の財布のヒモは固くなっている。また、年末に向けてスライス材の冷凍在庫の出回りが増えてくるとみられるため、カット筋も発注に見合った無理な枝肉の買いは避けるとみられる。

一方、地方の量販店や外食・観光需要は年末年始の旅行や帰省客に期待したいところ。ただ、ここにきての変異株をめぐる報道を受けての自粛・規制など先行き不安感も出ている。大人数での会食を避けるなど、外食需要は完全に戻っておらず、コロナの状況次第では在庫滞留の恐れもある。いずれにしても、枝肉の手当てのピークは12月20〜21日ごろといえる。

〈価格見通し〉
2021年12月の枝肉相場も、前半は堅調にスタートしたが、2週目以降は一服する可能性もあり、最後の4週目前半を除いては緩んでくる流れとみられる。

このなかで和牛は品質の良いもの・悪いもので差が分かれ、交雑では3等級以上は4週目に向けてジリ上げと予想、乳雄は供給不足もあり高値横バイとみられる。このため、12月の月間平均相場は和牛が去勢A5で2,800円前後、去勢A4で2,500前後、去勢A3で2,300円、前後。交雑去勢B3は1,500円前後、交雑去勢B2で1,300円前後、乳雄B2で1,080円前後と予想される。交雑下位等級と乳雄の価格差はさらに縮小する流れになりそうだ。