2021年度上半期のニチレイフーズの業務用事業部門の売上げは新商品の貢献もあり予算を上回った。一方、原材料など各種コストの上昇により利益は前年を下回っている。下期は新型コロナウイルス感染症の影響によるタイ産チキンの供給不足をどのようにカバーするかが大きな課題となる。滝英明業務用事業部長に上期の業績と下期の見通しについて聞いた。
――上期の業務用事業部門の概況について
売上高は業務用調理品全体で前年比2%増だった。業務用事業部としても、前年の落ち込みに対して決して高い伸びではないが予算は上回った。
市場環境は前年と大きく変わっていない。外食市場は前年比100%いくかどうかというところ。給食のうち福祉関連は5%程度、惣菜の主戦場となるホットデリカは2%程度、それぞれ前年を上回っていると見ている。
ホットデリカはバラ販売からパック販売などに切り替わったことで、単身者が買いづらく、弁当に流れている状況がある。
当社業績としては外食・給食ともに前年超えで着地した。惣菜は大手ユーザー向けを中心に伸びているが、商談しにくい状況が積み重なって全体としては微増にとどまった。
利益面では、原材料価格の高騰、タイ産チキンの供給不足対応、海上運賃の増加と各種コストの増加が響いた。
自助努力だけでは吸収しきれない状況のため、商品の安定供給と品質維持を目的として11月1日納品分からの価格改定をお願いさせていただいた。今後は円安などの為替影響についても注視していく必要がある。もっともコストはさらに上昇しているので、この値上げで利益率が改善するとは言い切れない状況だ。
――新商品の動きについて
今期の春の新商品はいずれも好調で、例年よりも販売構成比が高かった。
春の新商品では「柔らかひれかつ」や「パラッと炒めチャーハン」が惣菜中心に販売を伸ばした。現在は、タイの供給不足で販売抑制をせざるを得ない状況ではあるが、生IQFの唐揚げも手ごたえを感じている。
秋の新商品ではタイ産チキンの代替として発売した中国産のチキン商品などが好調に推移している。衣付きのすり身天ぷら「(衣付き)たらとチーズのおつまみ天」も好調だ。食油の価格が上昇しているため、揚げ時間が短く、油が汚れにくい商品として選ばれている。
袋入りの揚げ物商品も全般的に好調だ。冷凍野菜や肉・魚介などの具材と調味料をセットにした「ベジデリカ」の販売も安定している。
新商品の好調要因は、コロナ禍においても堅調に推移している惣菜業態向けに、生活者のニーズにあった商品を投入していること。またバラ販売ができなくなったところに代替商品の需要を取り込めたということだろう。
惣菜売場も変わってきており、定番商品が少なくなっている。新商品を定期的に投入しないと売上げを取りにくい状況になっているといえるかもしれない。
――下期の見通しについて
通期の業務用調理品全体での売上げは前年比7%増を見込む。ただ10〜12月はリベンジ消費を見込んでいたが、飲食店の営業時間や酒類提供の自粛要請が解除されても、消費は恐る恐るという感じだ。自粛生活が長引き、新しい生活様式が定着したところもあるのだろう。
売上げの多くを占める惣菜は、安定した柱となるのでしっかりと商品カテゴリー毎に提案をしていく。課題はタイ産チキンの供給不足をカバーすることだ。チキンは中国産で代替提案しているが、カバーしきれない分がマイナス要因になると考えている。
ポテトも海上輸送が遅れている米国に加えて、欧州産も域内需要の高まりで供給不足が予想される。チキンとポテトの供給不足はこの11〜12月がピークになるだろう。
特にクリスマス需要に対しては、シェフ監修シリーズのハンバーグやチーズロールをはじめとした春巻類、彩りがありメニュー性の高いベジデリカなどの商品を提案していく。「クリスマスにはチキンを食べるもの」という固定概念にとらわれることなく、さまざまな商品で提案を行っていく。
外食・給食には卸売りとの商談だけでなく、ユーザーに情報を届けるために直接営業も始めている。
福祉給食は去年立ち上げた特販グループを起点として、その開発商品を全国展開する取り組みをしている。またシェフ監修シリーズの提案にも力を入れている。
外食は営業を続けている大手ユーザーに対して直接アプローチする取り組みも始めている。今後、外食応援として商品を発売したいとも考えている。生IQF唐揚げや衣付き商品は人手不足の助けになると思う。
デリバリー大手などコロナ禍で成長している企業との取り組みも考えていきたい。
〈冷食日報2021年11月30日付〉