特定疾患に起因する以外にも、高齢により発症することの多い音声言語障がい
音声言語障がいとは、音声を全く発することができないか、発声しても言語機能を喪失しているような、音声や言語のみを用いて意思疎通をすることが困難なことを指します。先天性の場合や突然の事故、疾病の発症など原因は様々ですが、実は高齢により音声言語障がいを負う場合が大半です。統計では、世界中で音声言語障がいのある人は、1億2千万人もいると推測されており、これは世界人口に対して1.5%程で、そのうち65歳以上が1億人以上も占めているのです。また65歳以上の音声言語障がい者は、2050年までに15億人にも上ると国連は予想しています。国内では、音声言語障がい者数は346万人と言われており、国内人口比でいうと2.7%です。特に日本は、高齢化が進む中で、その数は増加傾向にあります。
音声言語障がいを持つ人には難しい音声認識機器の利用
最近では音声認識機器が生活に浸透してきました。特に2020年のコロナ禍を受けて、物に触れずに作動してくれる音声認識技術への注目が高まります。例えば、Amazonアレクサは、私たちが言葉で何かを指示し、それに対して対応してくれます。この音声認識機器もスタンダード・スピーチと言われる、その言語を使うコミュニティの成人メンバーに通常受け入れられ、容易に理解できる言葉であれば作動しますが、機器が認識できる範囲以外の発話であれば作動しません。音声言語障がいのある人の発話を、一般の音声認識機器が理解するのは、残念ながら不可能です。
パターン認識により重度の音声言語障がいの発話を理解できる言葉へと変換するVoiceitt (ヴォイスイット)
2012年イスラエルで創業したVoiceitt (ヴォイスイット) は、音声言語障がいで、理解するのが難しい発話であっても、聞き手に理解してもらえる言葉へと変換するテクノロジーを開発・提供します。Voiceittは音声認識のテクノロジーではなく、発声、リズム、呼吸、息継ぎ、方言など一人ひとり特徴のあるデータを利用して、パターンを認識。そしてこの音声パターンに固有のデータセットを作成し、AIによる機械学習で、パーソナライズされたモデルを構築します。Voiceittの音声と言語の専門家チームは、音声サンプルを測定して、アルゴリズムを調整・改良し、継続して精度を向上させます。Voiceittは、どこの国の言葉を話していても利用可能。このVoiceittがあれば、重度の音声言語障がいでも、音声認識機器が反応する程のスタンダード・スピーチに変換して発話してくれます。スタンダード・スピーチに変換された発話内容は、なんと90%以上の認識率が確認されています。
今回は、Voiceittの創業者でありCEOのダニー・ウェイスバーグ(Danny Weissberg)氏に創業に至った背景や、今後どのような展開がされるのか、社会に大きな貢献が期待される最先端技術についてインタビューをさせていただきました!
Voiveitte創業者兼CEOダニー・ウェイスバーグ氏インタビュー
―――Voiceittを創業したきっかけを教えてください。
約12年前、祖母が脳卒中を起こしました。そしてその影響で音声言語障がいを負い、私を含む家族全員が、祖母とそれまでのようにコミュニケーションを取ることが出来なくなってしまったのです。会話ができることの重要性に改めて気づき、言葉が通じない事にかなりの葛藤を覚えました。しかし、なぜか祖母を日常的に介護してくれる介護士さんは、祖母と会話ができていたのです。言葉による“会話”ではないのですが、きちんと意思疎通ができていました。
介護士さんは祖母の話し方や特徴を理解して、欲していることを汲むことができていたのです。それを目の当たりにした時に、AIによる機械学習を用いて、発話のパターンを学ばせれば、音声言語障がいを持つ場合であっても、人は会話ができるのではないか、と思いました。そして、このソリューションがあれば、音声言語障がいを負う方は、介護士さんといった特定の人だけではなく、みんなと会話ができると希望をもったのが創業のきっかけです。
―――Voiceittの機械学習モデルがパーソナライズされるまでに、どのくらいの期間が必要なのでしょうか?
Voiceittのアプリを通じて、自分だけのパーソナライズされたモデルを構築するのに要する時間はたった5分ほどです!各単語、フレーズ、指示など、アプリのステップ・バイ・ステップの簡単なフローに従って、予め用意されているシナリオに沿って自分の声で発音していただきます。もちろんその後もAIによる機械学習により、モデルは継続的にトレーニングされていきますし、シナリオにないカテゴリーの言葉も学ばせることができます。Voiceittは、誰もが簡単に利用できることを目指しています。
―――2020年のコロナ禍はVoiceittにどのような影響を与えましたか?
パンデミックは音声認識の業界において、追い風になったと思います。一つ目の理由は、エレベーターや身の回りの事などハンズフリーで指示ができるので、衛生面で役に立つニーズが高まりました。二つ目は、コロナ禍で籠りがちになった介護を必要とするような高齢の方にとって、音声認識の機器を利用することで、今までにない自立ができる発見につながりました。Voiceittはスタンダード・スピーチにのみ対応している機器が、それまで認識できなかった領域の発話も認識するので、音声認識の業界に革新的なテクノロジーをもたらしたと考えています。
―――Amazonアレクサや他の音声認識機器との連携が大変気になります。今後もこのようなパートナーシップが進みますか?
現在Voiceittのアプリはローンチを目前に、プレ・オーダーを受け付けています。2020年12月3日付でAmazonとの共同PR も出ました。今後VoiceittのSDKを搭載する機器や企業、政府関係、学校・団体などとのパートナーシップが加速すると思います。
こちらは実際にVoicetteとAlexaを使用している様子の動画です。
―――今後世界中での展開が期待されるVoiceittですが、日本市場との関係はいかがですか?
数年前、株式会社サムライインキュベート が開催したピッチ・コンテストで受賞した経験があります。そして最近では、日本企業とイスラエル企業の架け橋である ジャコーレ株式会社 の紹介で、日系企業から投資を受けました。日本は深刻な高齢化社会で、今後音声言語障がいを負う方は増えていくと想定されています。弊社にとっても注目する市場のひとつです。
―――最後に今後のVoiceittの展開を教えてください。
Voiceittは、音声言語障がいを負う方の自立した生活をサポートし、今までどおり自由に発話できることを実現していきます。是非プレ・オーダー でアプリの申込みをしていただきたいと思います。そして今後としては、弊社のSDKを組み込んだ音声認識機器がさらに台頭し、これらのコラボレーションを通じて、世界中の音声言語障がいで困難を感じている方の、生活の質を向上していくお手伝いをしていきたいと思います。Voiceittとシナジーを生み出す連携に期待しています。
Voiceittウェブサイト
https://voiceitt.com/