歴史的な原料高騰で4回の価格改定、特売価格定着で前年超えの可能性も(画像はイメージ)
(画像=歴史的な原料高騰で4回の価格改定、特売価格定着で前年超えの可能性も(画像はイメージ))

歴史的な原料コストの高騰を受け、食用油業界では上期(4〜9月)に、3回にわたる価格改定を余儀なくされた。下期(10〜3月)の課題は11月からの4回目を含め、引き続き価格改定の浸透に向けた商談への注力となるが、足元では新穀菜種の油分低下などによる更なるコスト上昇も懸念されている。そういった中、家庭用では、食用油の一層の価値向上に向けた新たな取り組みが見られ、業務用では価格改定だけでなく、コスト削減につながる長持ちする油や、テイクアウト時の品質向上につながる提案が同時に進められている。

日清オイリオグループ推計による上期の家庭用食用油の販売実績は、金額が前年同月比5.2%減の817億円、重量は同8.8%減の16万4,451トンと、金額、重量ともに減少した。前年が内食需要の高まりで市場が大きく拡大した裏年であることに加え、上期に大手や中小メーカーが実施した3〜4月、6月、8月の価格改定により、特売回数が減った影響も見られたもようだ。

家庭用食用油市場規模(金額)(日清オイリオグループ推計)
(画像=家庭用食用油市場規模(金額)(日清オイリオグループ推計))

ただ、前々年比では金額は3.5%増、重量は0.5%増と、いずれも上回っていることから、日清オイリオグループでは、「家庭用の市場動向は堅調に推移しているとも言える」と捉えている。また、価格改定が進むにつれ、9月には金額面で2.5%増と前年の市場規模を上回り始めており、「汎用油の特売価格の値頃感が定着することで、下期ならびに通期の市場規模において、前年を上回る可能性もある」と見通す。

油種別で見ると、キャノーラ油は前年同期比5.3%減の209億円、オリーブ油は6.8%減の214億円、ごま油は2.4%減の192億円、アマニ油やえごま油、MCT(中鎖脂肪酸)などを含めたサプリ的オイルは17.1%減の78億円となった。

一方、価格改定を実施した汎用油との価格差が縮まったこともあり、こめ油は18.7%増の59億円と引き続き大幅に伸びている。

業務用は、新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言やまん延防止等特別措置の影響により、外食向けを中心に厳しい状況が継続したものの、2020年は市場がそれ以上に大きく減退し、その裏年ということもあって、日本油脂検査協会の4〜9月の食用植物油JAS格付実績を見ても、前年同期比18.0%増となっている。ただ、コロナ前の前々年比では12.7%減と2ケタ減で、依然として厳しい状況は続いている。

上期は3度の価格改定が実施されたが、各社に状況を聞くと、3〜4月分、6月分は環境についても理解され、家庭用、業務用とも概ね理解が得られ、ある程度反映できているという声が聞かれた。ただ、3度目となる8月分は50円/kgと、過去に例をみない水準の上げ幅ということもあり、「ユーザーも受け入れに時間がかかっている面もある」という声も。未改定の流通との商談を進めつつ、4度目となる11月分の改定の商談が進められている状況のようだ。

〈適正価格での販売を実現した上で、食用油の価値向上へ新たな取り組みも〉
原料コストの上昇については引き続き継続しており、菜種の新穀は夏場の天候の影響もあり、「20年ぶりとなる水準での油分低下が見込まれる」(Jオイルミルズ)。カナダドル高、円安の要因も加わり、第4四半期に向けて、さらなるコスト増も懸念されている。世界人口の増加とそれに伴う食料需要の増加、CO2削減が世界的な流れを受けたバイオ燃料向けの穀物、植物性油の需要増加などから、原料の高騰は一時的ではなく長期的なトレンドであり、構造的な問題とも捉えられている。

そのような環境下、各社の下期の方針では発表済みの価格改定への注力が掲げられている。適正価格での販売を実現した上で、これまで各社が努力してきた食用油の価値向上に向けて、「味付けオイル」という新たなカテゴリの創出、紙パック容器の新規採用、プレミアム油の大容量化といった新たな取り組みにも注目したい。

〈大豆油糧日報2021年11月26日付〉