日清オイリオグループ 久野社長
(画像=日清オイリオグループ 久野社長)

日清オイリオグループは11月12日、オンラインで久野貴久社長が中期経営計画「Value Up+」(2022〜2024年度)の進捗状況について説明した。その中で、2024年度経営目標である売上高4,000億円、営業利益170億円、ROE8%の達成に向け、「積極投資」「成長性」「持続性」「効率性」の観点から構築した4つのKPI(重要業績評価指標)管理のフレームワークを示した。

「成長性」では、BtoC、BtoB、BtoBtoCの売上拡大戦略を定め、「効率性」では、新たにROIC(投下資本利益率)を経営指標化し、効率性の追求を進めていく。「持続性」では、環境、サプライチェーンの取り組みを徹底して進め、「積極投資」では、戦略投資800億円、無形資産としての人材活用を積極的に進めていくとしている。

「成長性」について、BtoCでは油脂の価値向上の仕掛けにより、国内家庭用市場を拡張していく。2024年度に向けて、かけるオイルで500億円市場を形成し、機能性商品や健康オイルなどの戦略商品の構成比を40%まで高め、脂質の健康情報についての提供人数は4年間で累計3,000万人と設定している。上期の状況として、内食需要が急激に高まった前年の市場規模を割り込んだが、前々年同期と比較すると金額、重量とも上回り、付加価値品を中心に市場は堅調に推移しているとした。その中で、同社の付加価値品の売上高は前年同期比3%増となった。「ごま油の大容量化、味付けオイルの積極上市など付加価値油の提案、販売を強化し、好調だった前年同期を上回っている」と説明した。

機能性商品、健康オイルなど戦略商品の構成比は39%となっており、脂質の健康情報の提供人数は2021年度計画400万人に対し、360万人まで進捗しているとした。

BtoBでは、2024年度に向けたKPIとして、グループのユーザーサポート件数増加率130%(2019年度対比)を掲げる。外食産業を中心に厳しい状況が継続している中、上期は計画に対して伸長率58%となっている。付加価値型商品群などを軸にソリューション提案を強化し、機能性フライ油、付加価値油の売上高は前年同期比19%増と拡大している。

BtoBtoCでは、2024年度に向けたKPIとして、ヘルスサイエンス商品の伸長率は130%(2019年度対比)を掲げる。家庭用食用油におけるMCTの上期市場規模は22%増と堅調拡大したが、ヘルスサイエンス商品の上期の伸長率は、19年同期比で13%増となっているとした。MCTは自社商品で機能性表示を取得し、コミュニケーション理解と連動してMCT機能理解を促進する。また、脂肪燃焼体質に続く訴求エリアとして捉えているフレイル対策に向け、外部コンソーシアムに参画するとした。

〈パーム油、菜種、大豆油が高い状況、菜種の油分は通常年より2〜3P低い〉
また久野社長は、足元の原料相場の状況と見通しについて説明した。「夏場くらいまでは大豆、菜種が高いと説明できていたが、パーム油、菜種、大豆油が高いという状況となっている。特に供給面の制約を受けている菜種については、カナダ産の大幅減産が確定している。加えて、夏場の天候の影響で油分がかなり低い。通常の年に比べて2〜3P程度低く、必要な油を余計に搾る必要があり、結果的に需給に影響する。高止まる、ないしはさらに高くなることはあっても、下がる要素はなかなかない。加えて、原油相場も高くなっており、資源通貨が買われることになってカナダドルが高くなると、米ドル建てにした貿易上の価格はさらに高くなるので、上昇要因として懸念される」と述べた。

パーム油についても供給面での制約があるとし、「マレーシア国内のパームの収穫は外国人労働者に頼っており、コロナの影響により入国が進まず、収穫面で進捗しないことで、高止まりの要因がある。大豆の原料相場は菜種、パーム油に比べると若干落ち着くが、バイオディーゼル需要や、油脂が世界的にタイトであることから、大豆油はやはり高いため、下がる要素はなかなか見つかりにくいとした」とした。

現状1〜3月の原料コストの見極めに入ってきているとしているが、5度目の価格改定について、「可能性としては排除しない。全体的な相場の状況や、ここまで引き上げてきた価格改定の浸透状況を見極めた上で、総合的に判断していきたい」とした。

〈大豆油糧日報2021年11月15日付〉