不二製油グループ本社 酒井社長
(画像=不二製油グループ本社 酒井社長)

不二製油グループ本社は11月11日、東京都内の会場とオンラインで2021年度上期決算説明会を行い、酒井幹夫社長らが出席した。

酒井社長は上期業績とともに通期業績予想、さらに次期中期経営計画(2022〜2024年度)のアウトラインを示した。

上期業績は、新型コロナの影響からの回復を主とした販売数量の増加、原料高に応じた価格改定などにより増収増益となった。酒井社長は「営業利益は79億円となり、前期比6億円のプラスとなったが、前期のカカオ先物益(13億円)の剥落の影響を除いた実質では、19億円のプラス」と話した。

事業別では、チョコレート用油脂、チョコレート、クリーム、大豆たん白素材(粉状・粒状)の4つの主要製品の販売数量は、新型コロナ拡大前の2019年度を上回る水準で推移した。大豆たん白素材については、健康需要の高まりの継続により、高付加価値品の堅調な需要が続いた。

同社は主原料価格の上昇を受けて、植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の全事業で価格改定を実施した。このうち植物性油脂は、日本において定価製品で段階的に価格改定を実施したが、一部下期にずれ込んだ。乳化・発酵素材は、東南アジア・中国ではマーガリンの価格改定の遅れ、日本では原料高の影響を受けたが、高付加価値品の販売数量の増加により収益性は改善した。大豆加工素材はコモディティ品の収益性は一部低下も、高付加価値品が堅調に推移しカバーできた。

通期業績予想は、売上高は4,300億円に上方修正した。酒井氏は「堅調な販売は見込んでいるが、更なる原料高と価格改定ずれ込みで苦しい下期になる予想も、通期の営業利益目標は変えずに180億円を必達したい」と強調した。

上期のトピックスでは、植物性油脂事業において、米国2拠点目となる油脂会社・新工場がニューオリンズで稼働した。「パーム油の需要増が見込める。米州においてバイオ燃料需要に伴う菜種、大豆からパームへの置き換え需要により販売数量が増加している。新工場のキャパシティは13万tだが、早い段階でフルキャパシティに持っていけるだろう」との見通しを示した。

〈業務用チョコの収益化、植物性素材・食品(PBF)のレベルアップなど次期中計構想を明かす〉
業務用チョコレートについては、「ブラジルのハラルド社の生産性、品質の改善、開発のスピードアップが進み、日本に近いレベルで高い生産性を示している。現社長がマーケティングを得意としていることから新しい市場、製品をつくり出し、またシェアが高いことから価格改定も進んでおり、利益貢献してきてくれると考えている。ブラマー上海は改善が難しいと考えていたが、想定以上のスピードで経営改善が進んでいる」と手応えを示した。

次期中計については、「大きくは4つポイントがある。業務用チョコレート事業の収益化では、米国ブラマー社の生産性改善に集中する。主原料の共同購入のスキームに2022年度から挑戦する。各エリアで価格交渉しているが、パーム油、カカオについては共同購入のスキームを進め、全グループでのコストダウンに取り組みたい。日本での植物性素材・食品(PBF)のレベルアップと拡販、PBFによる課題解決型のビジネスを進めたい。また、参入障壁が高く、付加価値がとれているスペシャリティ製品群の販売比率を増やし、開発のスピードアップに注力する。運営では、エリア制をとっているが、4つの事業軸でのマネジメント管理を強化したい」とアウトラインを示した。

大豆たん白素材については、高付加価値製品群の比率向上、具体的には健康、栄養に寄与する大豆たん白素材、差別化された大豆ミート原料の展開に注力する。酒井社長は「大豆ミートは、国内シェア5割以上を持ち、狙っているのは、第2、3段階の品質だ。PBFによる課題解決は、肉だけでなく、乳、卵なども考えている」と話した。

〈大豆油糧日報2021年11月12日付〉