2020年度の国内アウトドア用品・施設・レンタル市場は前年度比4.6%減の2,954億6,700万円、2021年度は同4.0%増と回復へ
~コロナ禍による外出自粛や小売店休業によりアウトドアアパレル市場が低迷し、市場全体が縮小~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のアウトドア用品・施設・レンタル市場を調査し、市場分野別の動向、参入企業動向を明らかにした。
国内アウトドア用品・施設・レンタル市場規模推移・予測
国内アウトドア用品・施設・レンタル市場 分野別構成比(2020年度)
1.市場概況
2020年度の国内アウトドア用品・施設・レンタル市場規模は前年度比95.4%の2,954億6,700万円と推計した。分野別の市場構成比は、用品のうちアパレル市場(ウエア、シューズ、ザック・バック類)が65.3%を占め、テント・タープ類やテーブル・チェア類、シュラフ等の用具市場は26.2%、次いで施設市場(キャンプ場、BBQ場、バンガロー・コテージ、グランピング等の宿泊施設)が7.9%、レンタル市場が0.6%となった。
アウトドア用品・施設・レンタル市場ではこれまで、キャンプブームを背景にキャンプ関連用具の販売が好調に推移したほか、有力ブランドのアウトドアウエアやバックパックのライフスタイル需要(日常生活やビジネスシーンでの着用)も拡大を続けており高い成長率をキープしてきた。しかし、2020年度は緊急事態宣言の発出による外出自粛や小売店休業などの影響で、約65%の構成比を占めるアウトドアアパレル市場が縮小したことでアウトドア用品・施設・レンタル市場全体が縮小に転じた。
さらに、感染拡大防止の観点から営業を休止する山小屋が続出し、登山者が山に登ることが物理的に不可能となったことで、登山用品(アパレル・用具)販売や登山用品レンタルなどが大打撃を受けた。特に富士山への入山が全面禁止となったことの余波が大きく、多くのエントリー層が登山を諦めざるを得ない状況となったことも、登山用品販売にマイナスの影響を及ぼす結果となった。
2.注目トピック
キャンプは”新しい生活様式に沿った安心・安全なレジャー”として好調に推移
家族や比較的少人数でも楽しむことができるキャンプについては、1 回目の緊急事態宣言期間には、小売店の営業自粛などで大きく販売が減少するなど影響があったが、それ以降はコロナ禍にありながらも「新しい生活様式に沿った安心・安全なレジャー」として注目を集めたことで、キャンプ関連用品(アパレル・用具)は好調に推移した。
小売店では、シーズンオフとされてきた積雪期に敢えて大自然の中で「冬キャンプ」として楽しむこともファミリー層やソロキャンパーを中心に関心が高まっていたため、「そうした層にはコロナ禍の影響は少なく、継続してキャンプを楽しむキャンパーが一定数存在した」という声が挙がっている。しかしながら、前述の通り、緊急事態宣言期間中の営業を全面的に取りやめた企業も多く、「6月以降に業績は回復傾向となったものの、全体としては売上減少分をカバーしきれなかった」というのが実情のようで、メーカー側の出荷にもこれらの影響があったものとみられる。
3.将来展望
今後もアウトドア用品・施設・レンタル市場は成長を続けていくと考えられるが、その市場スタイルの変化については注意深くみていく必要がある。実際、「コロナ禍でもアウトドアは盛り上がっている」という認識が一般的であり、そ終こには疑いの余地もない。しかし、「アウトドア市場」の中身について「登山」と「キャンプ」については切り分けてみていく必要がある。また、コロナ禍が終息に向かうにつれて、これまでアウトドア市場に向けられていた消費が、自粛が求められていた分野に分散する可能性がある。徐々にこれまでの日常に戻るにつれて、当該市場にも影響を及ぼすと考えられる。
しかしながら、コロナ禍をきっかけにアウトドアを始めたユーザーも多く、当該市場は拡大し、今後2~3年は一定規模の水準で推移する見込みである。新型コロナウイルスがなだらかに終息に向かうと仮定し、2024年度のアウトドア用品・施設・レンタル市場規模は3,111億3,000万円(2020年度比105.3%)になると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2021年5月~9月 2.調査対象: アウトドア用品メーカー、卸売業、小売業、アウトドア関連施設、サービス企業・団体、その他業界団体等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<アウトドア用品・施設・レンタル市場とは> 本調査におけるアウトドア用品・施設・レンタル市場とは、アウトドア用品(アパレル・用具)、アウトドア施設(キャンプ場、BBQ場、バンガロー・コテージ、グランピング等の宿泊施設)、アウトドア用品レンタルを対象として推計した。 なお主に「レジャーを目的に屋外で行う活動」とし、今回調査からスポーツおよびスポーツテイストの活動(競技スポーツとしてのアウトドアであるトレイルランニング、スポーツクライミング、クライミングジム等)や、釣り(釣り用具・用品、管理釣り場等)、関連サービス(山岳ガイド・自然ガイド等)、野外フェスティバル等は除外している。 |
<市場に含まれる商品・サービス> アウトドアアパレル(アウトドアウエア、シューズ、ザック・バッグ類)、アウトドア用具(登山・クライミング用品、テント・タープ類、シュラフ、照明器具、調理器具・食器類、コンロ・燃料類、テーブル・チェア類、クーラー・ジャグ類、フィールドギア、その他用品)、アウトドア施設(キャンプ場、BBQ場、バンガロー・コテージ、グランピング等の宿泊施設)、アウトドア用品レンタル |
出典資料について
資料名 | 2021 アウトドアビジネス |
発刊日 | 2021年09月29日 |
体裁 | A4 320ページ |
定価 | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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