中国、感染拡大を隠蔽?! コロナ公表前にPCR機器大量購入か
(画像=littlewolf1989/stock.adobe.com)

依然として発生源が不明なまま、新型コロナの世界的感染拡大から2年が過ぎようとしている。そのような状況で、中国が国内初の感染事例を公式発表する数ヵ月前に、大量のPCR(総ポリメラーゼ連鎖反応)機器を購入していた事実が明らかになった。

一方、WHO(世界保健機関)は「発生源追究の最後のチャンス」として、新たな科学諮問グループを編成し、中国側の協力を要請した。

中国では2019年夏から感染が拡大していた?

『中国武漢のPCR購入報告書(PCR Purchasing Report Wuhan China)』を作成したインターネット2.0は、データインテリジェンス分析を専門分野とする米豪サイバーセキュリティー企業だ。同社が中国のプロジェクト・入札データサイトbidcenter.com.cnから2007~19年のデータを収集・分析したところ、2019年5月以降、中華人民共和国湖北省におけるPCR機器の購入が急増していた。

2019年の購入総額は6,740万元(約12億 17万円)と、2018年の約1.8倍、2015年の約6.7倍に及ぶ。特に、人民解放軍空挺軍病院(増加時期:2019年5月)と武漢ウイルス研究所(2019年11月)、武漢科技大学(2019年10月)、湖北省地区疾病管理予防センター(2019年5~12月)において、「異様なほど増加した」ことが指摘されている。

同社は増加した時期を照らし合わせ、「ウイルスは早くて2019年の夏、2019年の初秋までには確実に、武漢で広がっていた可能性が高いことを示唆している」と結論付けた。

この報告書が事実であれば、「中国の公表よりはるかに早い時期から、国内感染は拡大していたのではないか」という以前からの疑惑を裏付けることになる。余談ではあるが、筆者がbidcenter.com.cnにアクセスを試みたところ、「セキュリティー上の懸念」からブロックされた。

中国側は反論「調査は科学者に任せるべき」

武漢発生源説の再燃を受け、中国外務省は「コロナウイルスの発生源に関する他の疑わしい主張と同じカテゴリーに分類される」と反論している。「ウイルスの追跡は科学者が取り組むべき深刻な科学的問題である」とし、サイバーセキュリティー企業の専門分野ではない点を主張した。

確かに購入増加は新たな発見ではあるが、発生源を特定する決定的な証拠としては弱い。ジョンズホプキンス健康安全保障センターの上級学者アメシュ・アダルハ博士が指摘しているように、PCR機器はコロナウイルスの特定に限らず、基礎研究から疾病診断学、農業試験、科学捜査まで病原体検出に最適な方法として広範囲に普及している。

2019年に湖北省で急激なPCR機器の購入増加があったのは事実だが、購入数が急激に増えた=コロナの感染が広がっていたと結論付けるのは早急だろう。中国では2018~19年にわたり、アフリカ豚コレラ(ASF)の感染が拡大していたことも忘れてはならない。そもそも湖北省におけるPCR機器の購入総額は、少なくとも2015年以降増加傾向にあった。

ブルームバーグの取材に応じた匿名の豪生化学者は、「購入数の増加を解明するためにはさらに多くのデータが必要である」と述べた。この点に関してはインターネット2.0の共同最高経営責任者兼主任研究員であるデビッド・ロビンソン氏も同様の見解を示しており、「(報告書の)データの一部が発生源の発見に役立つ可能性がある」としながらも、今後さらなる調査が必要である点を強調している。

追加調査拒む中国 進展は難航?

疑惑の焦点は「大量購入されたPCR機器がどのような目的でどのような検査に使用されたのか」について、中国がデータを公表するか否かにある。ロビンソン氏は「中国が決定的な証拠を隠蔽するために多大な努力を払ってきたという事実を考慮すると、残念ながらサードパーティのデータポイントに依存しなければならない可能性があるのではないか」と懐疑的だ。

ロビンソン氏の主張は一理ある。2021年2月に実施されたWHOの現地調査が分かりやすい例である。

武漢でウイルスが確認されてから1年以上経過していたことから、「遅すぎた現地調査」と疑問視されていた。中国側は初期感染者に関する「生データ」の提供に応じたものの、期待されていたほどの収穫が得られないまま調査は終了した。WHOは調査終了直後から調査団の再派遣を希望していたが、中国側は拒否し続けていた。

痺れを切らしたWHOは10月中旬、「新たな新規病原体の発生源に関する科学諮問グループ(SAGO)」を編成し、改めて中国側の協力を要請した。同グループは700人以上の志願者から選ばれた多様な分野の専門家26人で構成されている。

WHOの最高の緊急専門家であるマイク・ライアン氏は、「SAGOは新型コロナの発生源を特定する最後のチャンスであるかもしれない」とし、中国に初期の症例からのデータを提供するよう促している。

発生源は闇に葬られてしまうのか?

どれほど世界が発生源追究に骨を折ろうとも、中国の協力なしに今後の進展はあまり期待できそうにない。しかし、「(中国は)すでに現地調査に協力した。新たな調査は他の場所で実施されるべきだ」とジュネーブ国連大使の陳徐氏がコメントするなど、中国側は頑として首を縦に振らない。コロナの発生源はこのまま闇に葬られてしまうのだろうか。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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