独占インタビュー | The ACT Hub 共同創立者 Carmit Oron & Merav Oren
|
|
女性起業家であるCarmit Oron(カーミット・オーロン)さんとMerav Oren(メラヴ・オーレン)さんは、長いキャリアを経て、自ら逆境を乗り越えてきました。事業開発における数十年の経験を活かし、セレブシェフのAssaf Granit(アサフ・グラニット)さんと共に、新たなイノベーションハブとなるACTハブを設立。ACTハブは、食品業界において有意義な業界変革を推進する新しいアイデアとイノベーションを啓発することを目的とした、フードテック促進プラットフォームです。
さらにCamitさんとMeravさんは、WMNを立ち上げた女性メンバーの一員でもあります。WMNは、女性がリードする技術系スタートアップのためのコミュニティで、広範なリソースのネットワークを利用し、女性起業家たちが困難を効果的に克服するための支援をしています。またイスラエル国内において、地方自治体、民間団体や公的機関との戦略的パートナーシップを構築し、起業家を投資家と結び付け、資金を獲得するための起業家向けのトレーニングを促進しています。
ISRAERUウェブマガジンは、ACTイノベーションハブと提携し「Food Tech Startup of the Week」という新しいプロジェクトを発足しました。このシリーズは、食品業界で革命を起こしている革新的なイスラエルのスタートアップを取材する週刊特集です。第一回では、農業界で今話題を集めている破壊的技術を開発しているスタートアップ、SOOSTechnologiesをご紹介します。
今回のインタビューでは、CarmitさんとMeravさんにスポットライトを当て、ビジネスにおける女性のエンパワーメントそして社会進出を促進するためにACTイノベーションハブをどのように活用しているのか、お話を伺いました。
―――まずお二人のパートナーシップと、ACTハブ設立までの経緯を教えていただけますか?
Carmit: 15年間ほどテック系の起業家へのサポートに従事していましたが、ここ数年では、農場から食卓、ビン、そしてその間のすべて(生産、輸送、保管、加工、マーケティング、流通、消費)に至るまで、フードテックは私たちの生活に大きな影響を与えるだろうと考えるようになりました。
私たちがフードテックに焦点を当てるようになった理由の一つは、過去数十年間にこの世界が経験した膨大な変化があったからです。2050年を見据えると、限られた資源に関わらず人口が急増している中で、私たちが生活を維持できるように、食料の生産と消費の方法を変える必要があります。もちろん多くの人がこの状況を理解し、自分の子供たちに正しい選択をするように教育していますが、私たちの知識や情熱、そしてノウハウを活かし、少しでも人々の力になりたいと考えました。
Merav: 私たちの経歴を考えると、フードテックの分野に関わり始めたのは必然だったと思います。Carmitはすでにスタートアップ企業やフードテックに携わっていましたし、私自身もずっと起業家として活動してきて、料理とイノベーションに焦点を当てたビジネスを自分で立ち上げ、営業をしてきました。実はCarmitと出会ったのは、私が主催した料理業界とフードテックを繋げるためのスタートアップの会でした。イベントは大成功で、その後も私たちのパートナーシップをもっと発展させたいとお互いに考え、初期段階のスタートアップをサポートするためのフードテックイノベーションセンターを立ち上げることなったのです。
――― ACTハブとしての活動と具体的にどのようにスタートアップ企業をサポートしているのか教えてください。
Carmit: 1からのスタートを全力でサポートしていますので、それぞれのスタートアップ企業とはとても深い関係を築いています。
私たちは、技術やプロダクトの素晴らしさだけでなく、特に初期段階のスタートアップ起業はビジネスに関するきちんとした知識を持っていないということを十分に理解しています。多国籍の食品会社がほとんどですが、スタートアップ企業の検証をし、商品を流通することができるパートナーを探すお手伝いをしています。資金を調達する際には検証が重要であるため、それぞれのスタートアップ企業に合ったパートナーを見つけることがプロセスには必要不可欠です。私たちの専門知識と経験を活用し、スタートアップ企業が適切なパートナーにアクセスできるようにサポートしています。
初期段階のスタートアップ起業に欠けているもう一つの要素は、プロダクトの味です。どんなに革新的なプロダクトだとしても、消費者は美味しいものだけを選びます。そこで、Assaf Granitシェフの出番です。エルサレムにあるMachneyuda、ロンドンのPalomar、Barbary、Coal Office、そしてパリのShabourやBalaganなど、数々の受賞歴のあるレストランの共同経営者として、おいしいブランドの作り方を教えています。
私たち3人のノウハウを合わせ、ブランドの味、検証のためのパートナー、そして個人投資家やベンチャーキャピタリストから資金を調達する方法を見つけることなど、スタートアップに必要なすべてのサポートを提供しています。
―――どのようにして新しいスタートアップ企業を見つけていますか?またスタートアップ企業のポテンシャルを見極めるために考慮しているポイントはありますか?
Carmit: 大概はスタートアップ企業の方からサポートの依頼がきます。私たちにとって決め手となるのは、彼らが破壊的技術を持っているか否かですね。そしてその技術に特許があること、また確立された知的製品であることを条件としています。 また、必ずプロダクトを製造するチームと直接面談し、そのスタートアップ企業のCEOに確信を持てるどうか考察します。もう一つの要素はもちろんプロダクトの味ですね。消費者が食べたいと思えるほどのプロダクトでなければなりません。
このメソッドを「3つのT」と呼んでいて、Technology(技術) 、Team(組織) そしてTaste(味) から成り立っています。そのスタートアップ企業がこれらすべての基準を満たしている場合、その企業を採用する可能性は非常に高いです。
―――近年では、女性の社会進出がさまざまな産業の発展の鍵であると考えられています。お二人自身はそれぞれの分野において女性リーダーとして活躍していますが、ビジネスの世界全体としては、依然として男性がリードをしています。女性として、そしてパイオニアとして今まで直面された困難や、それらをどのように克服をしたのかお話いただけますか?
Merav: 26歳の頃、初めて自分のマーケティング会社を立ち上げました。当時のビジネス業界は完全に男性中心でしたので、私のクライアントはもちろん、他の会社のCEOたちは全員男性でした。その時の私のビジネスパートナーは男性で私よりも10歳ほど年上だったので、共同経営者と知られていたにも関わらず、ミーティングなどで同席したCEOたちは皆、私が彼の秘書だと思い込んでいましたよ。
今日ではありえないことかもしれませんが、当時はそれが当たり前でしたね。本当に周りには男性しかいない環境で長い間働いてきました。2019年10月に出た「Money Where Our Mouths Are(意: 私たちの口から入るお金)」という題名のレポートを読むと、女性がリードするスタートアップ企業はより懐疑的に見られる傾向にあるということがわかります。この構造的な偏見は、特に女性起業家やCEOが資本を獲得し、農業食品ベンチャーを立ち上げ成長させることを妨げるものです。
その偏見に対抗するために、私はWMN(女性主導のスタートアップのためのエコシステム)を立ち上げることにしました。始めた時は、女性主導のスタートアップは50も上回らないほどでしたが、女性はお互いを助け合い高め合うことができます。私たちは女性たちが大きな夢を持つことを推奨しています。男性社会のなかで生きていると、女性にとって自信と独立心を持つことは簡単ではありませんが、私ができるのであれば他の女性も必ずできるはず、と他の女性の方たちを勇気づけています。
今では女性のエンパワーメントのために多くの施策や活動が行われていて、とても良い動きが起きています。女性だけでなく、男性の力も借りて皆で力を合わせれば、よりジェンダーの平等な未来を築けると信じています。
Carmit: 私も同様に、女性であると理由だけで、より価値が少ないと見られていると感じていました。過去に、事業部長を勤めていたにも関わらず、同じ役職についている男性社員よりも少ない給与を受け受け取っていたのです。残念ながらメディアや文化の中で、社会的女性は主婦になるために教育され、大きな夢を持たないように奨励されています。 それだけではなく、女性が直面するべきではない多くの障害が他にもたくさん存在します。
過去から現在に至るまで、少しずつ職場における女性の地位は確立されてきましたが、まだまだ進歩が必要です。2017年に発表されたPitchbokのレポートには、決定権の82%は男性であること、またベンチャーキャピタルにおけるたった7%の決定権が女性の手にあることが記されています。もっと多くの女性が主導権を握るビジネスの数、そしてベンチャーキャピタルにおける女性率を向上させる必要があります。このことをふまえ、私たちは2021年には、女性がリードするビジネスにフォーカスをおいて、初期段階のスタートアップ企業を支援する独自の投資部門を設立することを決定しました。
ゴールドマン・サックスは、女性が経営する企業へ約500億円を投資すること発表するなど、すでに改革を始めている企業もあります。私には、2年後には社会へ出て仕事をし始める20代の娘がいます。その娘にとって自身のベンチャー企業を設立し、資金を調達しやすい社会にしたいと思っています。
私たちが行っている改革の一つには、農業食品業界における女性主導のベンチャーのためのピッチです。私たちは数々の素晴らしい投資家パートナーのグループを集め、女性起業家たちを招いて売り込みのピッチをさせています。ピッチを勝ち取った企業には、20万USドルの資金が投資されます。参加した女性起業家たちは皆、ピッチがいかに力強い経験になったのかと良い感想を伝えてくれました。女性たちが新たな決意を持ってピッチを後にするのを見ると、とても幸せな気持ちになりやりがいを感じます。もちろんこのピッチイベントは引き続き、毎年開催する予定です。