スクイーズアウトとは?企業における4つのメリットとその具体的な進め方
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

スクイーズアウトという言葉を聞いたことがあるだろうか。直訳すれば、「締め出し」だ。通常M&A等の局面においてでてくる言葉であるが、日本においては2005年に制度化され、使用できるようになった。今回は、そんなスクイーズアウトについて、どのようなものなのか、どのような手法があるのかということをみていきたい。

目次

  1. スクイーズアウトとは
    1. なぜスクイーズアウトが必要か
  2. 企業におけるスクイーズアウトの4つのメリット
    1. 1.株主総会にまつわる事務処理や手続きの削減
    2. 2.株主代表訴訟のリスク削減
    3. 3.相続による株主分散のリスクを減らす
    4. 4.連結納税制度が利用できる
  3. スクイーズアウトの手法
    1. 特別支配株主の株式等売渡請求
    2. 株式併合
    3. 株式交換
    4. 株式公開買付
  4. スクイーズアウトの事例
  5. スクイーズアウトには注意点もあるため、専門家へ相談を

スクイーズアウトとは

スクイーズアウトとは、ある会社の株主を大株主のみとするため、少数株主に対して金銭等を交付して排除することである。つまり、少数株主を締め出す、ということだ。

なぜスクイーズアウトが必要か

スクイーズアウトによって、少数株主を排除することが必要とされるのは、次のような事情がある。

企業の運営上の理由で、多数派株主のみが株を保有する状態にしたい場合だ。具体的には、上場会社が上場を廃止し、上場維持のためのコストを削減したい場合や、M&A後に、経営に関与する者が株式を買い取って経営権を取得し、企業価値向上を目指して円滑に会社を運営したい場合などが相当する。

株式の譲渡について、それぞれの株主に同意を得なければならないが、あまりに少数株主が多いと、個別に同意を取り付けることは困難だ。そのため、スクイーズアウトにより少数株主の意向に寄らず、強制的に株式を取得する。

そのほか、親会社と子会社の間の利益相反によって少数株主に不利益となるのを予め防ぐ目的で、少数株主を排除する場合もある。

企業におけるスクイーズアウトの4つのメリット

企業において、スクイーズアウトを行うメリットは以下の通りだ。特に、中小企業にとってメリットが大きい。

1.株主総会にまつわる事務処理や手続きの削減

少数株主が多くいる会社の場合、毎年の株主総会の開催や招集通知の発送、配当金の決定、役員報酬の決定など多くのことに気をもんでいることだろう。スクイーズアウトを実施し、株主が1人になれば、それらの株主の合意により決めなければならないことや、会社法で求められる株主保護に関する手続については、大幅に省略できる。

2.株主代表訴訟のリスク削減

少数株主がいる場合、常に株主代表訴訟のリスクを考慮しなければならない。

株主代表訴訟とは、会社に代わって株主が会社の役員の経営責任を追及し、会社が持つ役員への債権(損害賠償請求等)を行使する訴訟のことだ。

株主代表訴訟は、株主が行使することのできる権利であるため、そもそも株主でない者には行使することができない。少数株主を排除してしまえば、自分以外に株主代表訴訟を提起できる者がいないくなるため、実質的に株主代表訴訟のリスクがなくなる。

3.相続による株主分散のリスクを減らす

少数株主をそのままにしておくと、相続により株主が分散するリスクがあるといわれている。

なかには連絡が取れない株主や面識のない株主が出てきて、対応に苦慮することになるリスクもある。さらに、将来的に会社を売却する場合も、少数株主の同意を得なければならず、少数株主の存在は足かせになることがある。少数株主への対応は、買収後の経営の足を引っ張られる可能性があるだけに、買収時には大きな減額要因になりかねない。

4.連結納税制度が利用できる

最後に、仮に会社の親会社が個人ではなく、法人である場合には、少数株主を排除し、100%の親子関係になっておくことに大きなメリットがある。というのも、連結納税制度を利用できるからだ。

連結納税制度は、連結グループを一つの単位として、連結グループに属するそれぞれの法人の所得金額と欠損金額を損益通算して連結所得金額を計算し、連結所得に対する法人税額を親法人がまとめて納税する制度である。

連結納税制度は、その連結グループが連結決算書を作成していた場合であっても、連結決算書の当期純利益は使用せず、あくまでもそれぞれの会社の個別決算書の当期純利益をベースとして連結所得の金額を計算するものだ。連結納税の最大のメリットは、連結グループ内で損益通算して課税所得を計算する点にあるが、その他に繰越欠損金の繰越控除といったメリットもある。

スクイーズアウトの手法

スクイーズアウトを行う手法としては、多くの方法が考えられる。ここでは、具体的に特別支配株主の株式等売渡請求、株式併合、株式交換、株式公開買付をとりあげる。

特別支配株主の株式等売渡請求

これは、特別支配株主といわれる株主が少数株主の株を強制的に買い上げる制度で、非常に強力な制度だ。「特別支配株主」とは、90%以上の議決権をもつ株主のことである。

この方法では、株主総会での決議を必要とせずに、少数株主の株式を強制的に買い上げることができる。迅速に進められる方法だが、多数株主が9割以上の議決権を持つ場合にのみ利用することができる制度のため、それ以外の場合には別の方法を検討しなければならない。

特別支配株主の株式等売渡請求の制度は、2015年5月に新設された制度である。少数株主からの株式の買い取りでは、話し合いが円満にまとまればいいが、場合によっては譲渡することを拒否されたり、法外な値段での買い取りを要求されたりすることもある。

従来では、「全部取得条項付種類株式」という制度を利用して少数株主から株式を強制的に買い取ることができたが、この方法は、株主総会の特別決議が必要で、手続きが煩雑であることがデメリットだった。このデメリットを解消すべく創設されたのが、特別支配株主の株式等売渡請求という制度である。

特別支配株主による株式等売渡請求は、特別支配株主が株式の取得日、買取代金の額等を決めて、会社に株式売り渡し請求をすることを通知する。株式等売渡請求について、会社の承認を得たうえで、会社が少数株主に対して、株式の取得日の20日前までに、特別支配株主から売渡請求がされ、会社が承認したことを通知することによって成立する。

株式併合

特別支配株主の株式等売渡請求の制度は、90%以上の持株割合が必要なため、使い勝手が悪いケースが多い。多数株主の株式保有割合が66.7%以上90%未満の場合、多くは株式併合のスキームが利用される。

株式併合は、株主総会の特別決議が必要なため、3分の2以上の持株割合が必要である。特別支配株主の株式等売渡請求の制度よりも要求される持株比率が低いため、承認手続きの手間は多くなる。具体的には、次のような流れで、少数株主が排除される。

(1) 株主総会で株式併合に関する決議を行う。

(2) 複数の株式を併合し、少数株主が保有する株式を端株(はかぶ)にする。つまり、最大の少数株主が所有している株主を仮に100株とした場合、200株を1株に併合する株式併合を行えば、すべての少数株主の保有する株式は端株になる。

(3) 会社は、少数株主から端株となった株式を取得する。

(4) 会社から少数株主に対し、端株の対価を支払う。

株式交換

通常の株式交換は株式を対価として行う。一般的な株式交換では、完全子会社の株式すべてを完全親会社が取得し、完全親会社の株式を完全子会社に交付する。これにより、子会社の少数株主に完全親会社の株式を所定の交換率で交付することになる。

たとえば、グループ内の再編などで100%の親子関係を構築したい場合に行われることが多い手法だ。この方法で少数株主を子会社の株主から排除することはできるため、親会社は子会社の元少数株主に悩まされず子会社の経営に取り組める。

株式交換の交換対価は、株式に限らない。現金を対価にして株主交換を行うことも可能である。現金を対価にすれば、実質的に株式を買収したことと同様であり、当該子会社の少数株主を企業グループから完全に除外することができる。

ただし、この手続は、株主総会の特別決議が必要であり、対象会社の議決権の3分の2以上の株式を保有している場合に用いることができる手法だ。たとえば、親会社Xが子会社Yの対立する少数株主をスクイーズアウトさせたいとしたときに、Y社の発行済み全株式をX社に譲渡させ、株式譲渡の代わりに現金を対価として付与することでスクイーズアウトが可能になる。

株式公開買付

上記のいずれの手続をとる場合も、少なくとも総株式の3分の2以上の株式を保有している必要があるが、そこまでの株式数を保有していない場合も多いだろう。その場合に、3分の2以上の株式を確保するためによく行われるのが、株式公開買付である。株式公開買付は、下の流れで行われる。

(1) 株式公開買付公告

(2) 内閣総理大臣への公開買付届出書の提出
公開買付開始公告の「同日」に「公開買付届出書」を内閣総理大臣に提出し、公開買付けが開始される。内閣総理大臣に提出した後、公開買付届出書の写しを発行会社と証券取引所に送付する。

また、株式公開買付を行う者は「公開買付説明書」を作成し、株式公開買付への応募株主に対して交付することが求められる。

(3) 意見表明報告書の提出
株式公開買付の対象となった会社は、公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内に、「意見表明報告書」を内閣総理大臣に提出する。その写しを、公開買付者と証券取引所に送付する。

(4) 対質問回答報告書の提出
意見表明報告書にて質問が記載されている場合は、公開買付者は対質問回答報告書を5日以内に内閣総理大臣に提出しなければならない。その写しを、株式公開買付の対象となった会社と証券取引所に送付する。

(5) 公開買付報告書の提出
公開買付者は、買付期日最終日の翌日に、株式公開買付の結果について公表または公告する。公表または公告の内容等を記載した「公開買付報告書」を内閣総理大臣に提出し、その写しを株式公開買付の対象となった会社と証券取引所に送付する。

スクイーズアウトの事例

スクイーズアウトは多くの事例が存在するが、最近では、LINEとZホールディングスの経営統合における事例が記憶に新しい。ソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーによるLINE株のTOBに失敗した当事者が、経営統合の目的を達成するために行ったものである。

スクイーズアウトには注意点もあるため、専門家へ相談を

スクイーズアウトにあたっては、綿密な計画が必要である。株価の算定に多くの時間がかかるし、買収には多額の資金が必要になる場合が多い。また、スクイーズアウトに反対する株主からの訴訟リスクも考慮する必要がある。

スクイーズアウトには、手続きや進め方に専門的な知識が必要とされるため、専門家に相談しながら最適な方法を実行していくのがいいだろう。

文・内山瑛(公認会計士)

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