分離課税とは?確定申告の仕方や所得税の計算方法を解説
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志磨 宏彦
志磨 宏彦(しま・ひろひこ)
志磨税務経営事務所所長・税理士、中小企業診断士、経営革新支援機関、1級販売士。1959年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。志磨税務経営事務所所長・税理士、中小企業診断士、経営革新支援機関、1級販売士。税理士として100社以上の顧問先を持つかたわら、企業のコンサルティング、セミナー講演等にも飛び回る。融資案件にも強く、政府系金融機関とのパイプが太い。また、多くの外部スタッフ(弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士等)と連携し、さまざまな企業ニーズに応えることを得意としている。

申告納税制度を採用している日本では、総合課税方式と分離課税方式の2つが採用されている。所得の種類によっては、総合課税方式ではなく分離課税方式が適用できる。今回は、分類課税方式の仕組みや総合課税方式との違い、分類課税方式での所得税の計算方法や確定申告の進め方について解説する。

目次

  1. 分離課税とは
    1. 分離課税の意義
    2. 申告納税制度と2つの課税方式
  2. 分離課税の対象となる所得の種類と計算方法
    1. 分離課税の計算方法1:配当所得
    2. 分離課税の計算方法2:退職所得
    3. 分離課税の計算方法3:山林所得
    4. 分離課税の計算方法4:譲渡所得(不動産、株式の売却)
    5. 分離課税の計算方法5:先物取引
  3. 分離課税の確定申告のしかた
    1. 分離課税の確定申告方法1:配当所得
    2. 分離課税の確定申告方法2:退職所得
    3. 分離課税の確定申告方法3:山林所得
    4. 分離課税の確定申告方法4:譲渡所得
    5. 分離課税の確定申告方法5:先物取引
  4. 分離課税の計算は注意が必要

分離課税とは

日本では、国税の中でも基幹を占める所得税、法人税、相続税、消費税は、いわゆる申告納税制度を採用しており、税金の計算は納税者に委ねられている。

元来、所得税や法人税などは賦課課税制度を採用していたが、戦後シャウプ勧告によって、直接税化が図られ、申告納税精度へと移っていった。その際、所得税の総合課税化を推進したが一部の課税に分離課税が残り、他国に類を見ない2つの課税方式が存在するという複雑化をもたらした。

分離課税の意義

所得税は、所得の種類が多様なので確定申告が煩雑になる。そのため、事業や不動産、給与などの所得を合計して、その合計所得に税率を乗じて税額を計算する「総合課税」を採用している。分離課税は、一部の所得には累進的な総合課税と合計せずに単一税率を採用しており、不公平感をなくすという意義がある。

例えば、長期間所有していた不動産を売却した場合、給与所得に比べて不動産所得が多ければ、所得税率が高くなってしまう。しかし、分離課税を適用することで、税率の不公平感をなくせるのである。

申告納税制度と2つの課税方式

日本では申告納税制度を採用しており、所得税は以下の2つの課税方式が適用されている。

①総合課税方式
②分離課税方式

ここでは、それぞれについて解説する。

1.総合課税方式

総合課税方式は、所得の種類ごとに所得を計算し、合計所得に応じた税率を乗じて税額を算出する課税方式だ。

総合課税方式における所得は、以下の8種類と決められている。

①事業所得
②不動産家賃収入
③利子所得
④配当所得
⑤給与所得
⑥雑所得
⑦株式・建物・土地を除く譲渡所得(例:貴金属、車両など)
⑧一時所得

総合課税方式は、所得の合計額に税率を掛けるだけで税額を算出できるので、申告納税制度においては簡便な方法である。

図表1:確定申告書B 総合課税方式のイメージ

分離課税とは?確定申告の仕方や所得税の計算方法を解説

2.分離課税方式

分離課税方式とは、所得の種類ごとに税率を掛けて税額を算出する課税方式である。総合課税方式に累進性があるのに対して、分離課税方式は一定率で、所得の多寡によって税率が変わるものではない。

そのため、所得金額が多くなると納税者に有利に働くが、少ないと負担が多くなる傾向がある。

分離課税方式の対象となる所得は以下の5つである。

①配当所得
②退職所得
③山林所得
④譲渡所得(不動産、株式の売却等)
⑤先物取引

なお、分離課税方式には「源泉分離課税」と「申告分離課税」の2種類がある。

「源泉分離課税」制度は、他の所得と完全に分離して、所得を支払う側が一定の税率(15.315%)で所得税を源泉徴収することで、所得税の納税が完結する制度である。本稿では、「申告分離課税」について解説する。

分離課税の対象となる所得の種類と計算方法

ここでは、分離課税の対象となる5つの所得ごとに、所得税の計算方法を解説する。

図表2 確定申告書第三表 分離課税方式のイメージ

分離課税とは?確定申告の仕方や所得税の計算方法を解説

分離課税の計算方法1:配当所得

配当所得は原則として総合課税であるが、申告の煩雑さを避けるために、上場株式等の配当所得については申告分離課税を選択できる。総合課税にも分離課税にも配当所得が存在し、納税者を悩ませるようである。

そのため、一般的な上場株式等の配当所得については確定申告不要制度が採用されており、納税者の便宜が図られている。

下記の図表3に示すように、総合課税か分離課税の選択においては、3つの方法の中で税額が少なくなる方法を勘案する。申告分離課税を選択すると、前年までに株式の譲渡で損失が出ていれば、他の配当所得と損益通算ができ。しかし、総合課税を選択すると配当控除が使えるので、シミュレーションが必要となる。

図表3 上場株式等の課税関係

なお、配当所得の計算方法は以下の通りだ。

配当収入-株式などを取得するための借入金利子=配当所得

分離課税の計算方法2:退職所得

退職所得とは、退職時に勤務先から受ける退職手当などの所得である。退職所得の計算方法は、以下の通りだ。

(収入金額-退職所得控除額×1/2=退職所得の金額
※収入金額は「源泉徴収される前の金額」

ここでの退職所得控除額は、以下のように算出する。

分離課税とは?確定申告の仕方や所得税の計算方法を解説

退職所得は、原則として分離課税である。しかし、退職金の受領者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金等の支払者が退職所得に関する所得税分を源泉徴収するため、確定申告は必要ない。

分離課税の計算方法3:山林所得

山林所得も分離課税の対象だが、山林を取得してから5年以内に伐採や譲渡をすると、山林所得ではなく事業所得か雑所得となり、総合課税によって申告しなければならない。

山林所得の計算方法は、以下の通りだ、

総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額

山林所得の税額計算は、5分5乗方式といわれるものが採用されるため、以下のように算出される。

(山林所得金額×1/5×課税所得対する税率)×5

分離課税の計算方法4:譲渡所得(不動産、株式の売却)

譲渡所得とは、土地や建物、株式、ゴルフ会員権など、資産譲渡による所得のことだ。ただし、棚卸資産や山林などの譲渡(土地部分は除く)による所得は、譲渡所得に該当しない。

譲渡所得は、不動産とそれ以外とで所得の計算がかなり違う。また、不動産の譲渡は短期と長期とがあり、特例も多く非常に複雑なのでポイントだけ解説する。

1.不動産の譲渡所得

不動産の譲渡所得は、売却した年の1月1日から起算して、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡、5年以内ならば短期譲渡となる。5年を境に税率が大きく異なるので、注意が必要である。

長期譲渡の税率:所得税(国税)=15%、住民税(地方税)=5%
短期譲渡の税率:所得税(国税)=30%、住民税(地方税)=9%

短期譲渡の場合は税額が倍近くなるので、売却する際には所有期間のチェックが必要である。

なお、不動産の譲渡所得は以下のように計算する。

譲渡価額(売却価格)-取得費(売った不動産の購入代金、建物は減価償却相当額を控除後)-譲渡費用(仲介料、立退料、取り壊し費用等)-特別控除額(※1)

(※1)特別控除額にはさまざまなケースがある。

2.株式等の譲渡所得

株式等の譲渡による譲渡所得の金額は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分して税金を計算する。これは、それぞれの区分ごとにしか損益通算ができないからである。

株式等の譲渡所得は以下の計算式で求める。

総収入金額(売却金額)-必要経費(取得費+委託手数料)

なお、株式等の譲渡所得にもさまざまな特例があるので、申告の際には国税庁HP等を参照されたい。

分離課税の計算方法5:先物取引

一定の先物取引の差金等決済をした場合には、その先物取引に係る譲渡所得の合計額については他の所得と区分して税金を計算する。

先物取引も株式と同様に損益通算が可能だが、先物取引に関わる所得との損益通算に限られるので注意されたい。  

分離課税の確定申告のしかた

ここでは、分離課税の対象となる5つの所得ごとに、 確定進行の進め方を解説する。

分離課税の確定申告方法1:配当所得

申告分離課税を選択する場合には、所得税率は15%である。したがって、配当金額に税率を掛けることによって税額が計算され、その金額を確定申告書に記載する。

なお、課税所得が900万円以内ならば、分離課税よりも総合課税のほうが有利である。

分離課税の確定申告方法2:退職所得

退職所得の税率は一律20.42%で、雇用主が源泉徴収する。「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないならば、この税額で確定申告する。

分離課税の確定申告方法3:山林所得

山林所得の計算は前述のとおり、5分5乗方式を用いる。すなわち、課税所得が計算されたら、その金額を5で割った後に対応する税率を乗じて、さらにその金額に5を乗じて税額を算出する。

例えば、山林所得が600万円とすると、600万÷5=120万円。120万円に対応する税率は5%なので、求める税額は120万円×5%×5=30万円となる。

総合課税だと、課税所得600万円に対する税額は600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円であることから、分離課税によって山林所得が優遇されていることがわかる。

分離課税の確定申告方法4:譲渡所得

1.不動産の譲渡所得

既述の通り、長期譲渡の場合が所得税15%、短期譲渡の場合が30%である。「確定申告書第三表」では、まずは短期と長期に区分した後に、一般、特定、軽減に分類して所得を計算し、区分ごとに合計して税率を掛けて税額を決定する。

2.株式等の譲渡所得

株式等の譲渡所得についても、不動産の譲渡と同様に一般株式か上場株式かに区分し、それぞれを損益通算した後に所得の合計額を算出し、税率15%を掛けて税額を決定する。

分離課税の確定申告方法5:先物取引

先物取引の税率は15%なので、先物取引所得に15%を掛けて税額を決定する。

総合課税で算出した税額と上記1〜5で算出した税額を合計して、第一表に転記し、最後に復興特別所得税を加算して税額計算は終了する。

分離課税の計算は注意が必要

分離課税制度の税率は約15%の一定率でさほど複雑ではないが、所得の計算が非常に複雑である。

特に不動産の譲渡に関しては約50種の特例があり、計算を誤ると過大な税金を納めたり、過少申告で税務署に指摘される可能性もある。したがって、分離課税によって所得税を算出する際には、税理士などの専門家に相談して、万全に臨みたいところである。

文・志磨宏彦(税理士/中小企業診断士)

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