〈うま味やコクのあるみそへの商品開発が加速、トレンドに異変の可能性も〉
麹割合の高いみそがさらに投入されそうな気配が高まっている。マルコメの「丸の内タニタ食堂の減塩みそ」(20割麹)、「プラス糀無添加糀美人」(24割麹)の売れ行きは安定しており、市場では甘くてコクのあるみそがトレンドとなっている。
さらに、ハナマルキが新商品「追いこうじみそ」を発表した。二度の熟成による深いうま味や、コメ由来のまろやかな甘みを有する複雑な味わい、そして華やかでフルーティーな芳醇な香りが特徴となっている。「こうじ」は同社標準比の2倍配合しており、20%減塩でもしっかりとしたみその味わいと香りを感じられる商品だ。
こうしたうま味やコクを実現しているのは米麹。その原料となる米だが、新型コロナの影響で、価格が下がり始めていることから、米麹割合を増やした付加価値型のみそが今後も新商品として多く投入されるのではないかと見られている。
新型コロナの影響による外出自粛が要因で、外食産業の業績が悪化している。そのため、業務用米の需要も大幅に減少しており、在庫が増加していることから、主食用米から、加工用米、輸出用米、飼料米への転換が余儀なくされている。これにより、米の価格が大幅に下がるとの報道もある。
一方大豆は、2019年末、シカゴ相場が高騰しており、米国中西部の高温乾燥懸念や、中国による米国産買付期待から値を上げた。2020年は9月末に米国の在庫報告で市場予想が下回ったこと、さらに中国向け輸出成約の増加、南米の乾燥天候による作付けの遅れなどから10月下旬に$10/bus後半の値をつけた。同年12月以降も上昇を続け、2021年5月上旬時点で$16/busを越えた。また、昨年末よりコンテナ不足、西海岸輸出港での滞船が顕在化し、供給面での遅延が生じている。
こうした背景は、みその商品開発へ影響を与える可能性がある。米の価格が大幅に下がることで、その原料を上手く活用した商品はできないか。トレンドになっている麹割合の高いみそ。市場は、甘く、コクやうま味のあるみそを求めている。
また、フンドーキン醬油「生詰無添加あわせみそ」も甘さを特徴とするみそで、POSランキングでは常にトップ10に入っている。購入者層は、地元だけではなく、関東方面にも広がっており、若年層からの支持も高く、新規ユーザーを獲得している実情もある。
〈液状みそ、顆粒みそでの用途提案で市場拡大、みそメーカーのこだわりで勝負〉
一方、みそ業界では、液状みそや顆粒みそなど、生みそとは違ったアプローチで、みそユーザーの拡大に挑んでいる。液状みそではマルコメとマルサンアイ、顆粒みそはマルコメと神州一味噌が意欲的に取り組んでいる。みそ汁以外での使い方提案に力を入れることで、調味料としての用途拡大を目指し、みその市場規模の拡大を目指している。
今年の秋の新製品でも、マルコメ、ハナマルキ、ひかり味噌、神州一味噌からこうしたトレンドを踏まえた新商品が投入されることとなっている。
中でも、即席みそ汁では、みそメーカー以外の永谷園や味の素などの大手メーカーとの差別化を図りながら、みそメーカーならではのこだわりを打ち出した商品の登場が待たれる。
神州一味噌では、信州味噌の名工が責任監修した高いコクと香りの「一流好み」を使用。原料の大豆・米・食塩は全て国産で、だしの産地にもこだわり、鰹節は焼津産、昆布は利尻産、煮干は瀬戸内産を使用した商品とし、みそ屋のプライドをかけて勝負に挑む。
〈大豆油糧日報2021年8月20日付〉