「女性だけの30分健康体操教室 カーブス」を全国に約2000店舗展開するのがカーブスホールディングス(東京都港区)だ。2005 年の創業以来、50歳以上の女性をメインターゲットとしFCを中心に拡大してきた。同社は2020年3月、カラオケ事業などを展開するコシダカホールディングス(東京都港区)のスピンオフとして東証1部に分離上場したことでも話題を呼んだ。コロナ禍で会員数が減少し業績は前期と比べて苦戦を強いられているが、事業回復に向けオンライン体操教室など新しいビジネスモデルづくりに取り組んでいる。
(※2021年8月号「巻頭特集」より)

増本 岳 社長(57)
(画像=増本 岳 社長(57))
加藤友康
増本 岳 社長(57)
ますもと・たけし
1964年6月16日生まれ、神奈川県出身。88年明治大学政経学部経済学科卒。89年ベンチャー・リンク入社。2004年にアメリカにて「カーブス」に出会い、その理念とビジネスに惚れ込む。05年カーブスジャパンを設立し代表取締役就任(現任)。11年カーブスホールディングス代表取締役社長就任(現任)。20年カーブスのグループ会社、ハイ・スタンダード代表取締役会長就任(現任)。

2020年3月に東証一部上場果たす
2021年8月期売上高240億円見込む

2020年8月期の売上高は250億8200万円。売上構成比はロイヤリティ収入が2割、会員向け物販は6割。同社はFC方式を採用しているため、ロイヤリティを主力とするビジネスモデルだが、一方、エンドユーザーに直接販売する会員向け物販の売上比率が高い。ここが同業他社とは収益モデルが異なる点だ。

会員向け物販事業が成長
ロイヤリティ収入との2本柱に

同社の収益モデルは、ロイヤリティ収入と会員向け物販を2本柱とする。一般的なフィットネスクラブでは会員が支払う月々の会費などを主な収入源としているが、同社はFC方式を取っているため、全国約2000のFC店舗から売上高の一定割合がロイヤリティとして計上される。一方、物販売上は同社が直接、会員に栄養補助食品のプロテインなどを売るサブスクリプション(定額課金)型の通販形式を採用している。同社が商品の末端販売価格のうち、一定額を販売フィーとして加盟店に支払う仕組みだ。これにより加盟店は在庫を持たずに済み、本業に専念できる。

元々同社は、ロイヤリティ収入にプラスして物販を売上の柱に成長させる構想を持っていた。2011年から本格的に物販を開始し、17年度には物販売上だけで100億円を達成。この時期、プロテインの新商品を投入したことにより購入者比率を大幅に伸ばし、18年度の物販売上は143億円に急拡大した。「現在はコロナ対策に注力しているため新商品開発が遅れていますが、会員のニーズをとらえた商品を投入し、更に購入者比率を高めていきたいと考えています」(増本社長)。

今後は売上の2本柱をさらに成長させるため、FC加盟企業とエンドユーザーの会員をバランスよく重視していく考えだ。「会員向け物販は確かに収益の主力ではありますが、とはいえ、私共にとってやはり一番大事なのは会員数だと思っています。ビジネス的にもそうですし、『健康な人を増やす』ことが当社の使命ですので会員の数には非常にこだわりがあります。ビジネスのパートナーであるFC加盟企業様と共に会員増に向けた施策に取り組んでいきます」(増本社長)。になってもらっています。

同社は10年程前から国内の新規フランチャイズ加盟店の募集は行なっていないという。代わりに既存のフランチャイズ加盟店による多店舗展開を推進している。現在、約390社の加盟店によって全国約2000店舗が運営されており、10店舗以上経営している加盟店は数十社にも及ぶ。

既存加盟店による多店舗化推進
人材育成に注力し安定経営促す

既存フランチャイズ加盟店による店舗拡大という戦略は、「健康な人を増やす」という理念を共有し使命感を持って取り組んでいる加盟店とともに事業を拡大したい、と考えているためだ。「創業から数年後の2010年ごろには、カーブスが事業として非常に注目を浴び、放っておいても新規加盟の問い合わせが来ていました。その様子を見て、儲かりそうだからやりたいという方々に加盟してもらって拡大していくよりも、創業期から苦労を共にして事業を作ってきた人達と一緒に拡大していくのが当社の事業の本筋だと考えるようになりました」(増本社長)。

もう1つの狙いは、既存FC加盟店による人材育成のノウハウ活用だ。カーブス事業はインストラクターによる丁寧な運動指導など店舗のサービスが核であり、店舗拡大には人材育成が要である。そのため、新規FC加盟店を増やすよりも、人材育成ノウハウを身に付けた既存のFC加盟店に店舗を拡大してもらう方が中長期的に見て拡大のスピードが安定すると考えている。また、店舗ごとのビジネスモデルのスケールが比較的小さめであるため、加盟店には3〜4店舗の多店舗展開を推奨している。

一方、海外事業では、欧州8カ国にて約160店舗を運営。イタリア、スペインをモデル地域にして約10店舗ずつ選び、日本のノウハウを欧州向けにローカライズして導入し、退 会率減や入会者増などの成果を上げていた。しかし、コロナの感染再拡大で欧州ではロックダウン(都市封鎖)が強化されており、現在、約40店舗のみの営業が続いている。

「上場前に欧州の幹部を集めて決起会を開いて、よし、頑張るぞとなったその2週間後にイタリアでロックダウンが始まって大混乱しました。欧州では物販事業がまだ取り組んでいないので会費収入だけの事業体であり店舗が閉まると打撃が大きいのですが、幸いなことに事業規模自体が小さいので赤字が出ても大きな影響はありません」(増本社長)。

2021年8月期の業績予想は、売上高240億円、営業利益13億円の減収増益の見込み。コロナの影響で元々は83万人いた会員が一時は54万人まで減ったが、2021年2月末現在で64万人まで回復している。今後は、会員数の早期回復を最優先課題とし、期末会員数を70万人に回復させる計画だ。

オンラインの「おうちでカーブス」
既存の継続と新規獲得に期待

注力する施策の1つがオンライン体操教室「おうちでカーブス」だ。 これはスマホやタブレットを利用して自宅でカーブスの運動ができるオンラインのプログラム。今年4月から新規会員獲得に向けた展開を開始した。元々これは、コロナの感染拡大を受けて増えた休会・退会の会員に向けたサービスとしてスタート。現在、約1万人が登録しており、運動再開の選択肢として利用が広がっている。家事の合間や仕事の後に自宅で運動でき、コーチがサポートするのが特徴。巣ごもり需要の高まりを受け、リアルとオンライン融合の新しいモデル創出と成長を目指しており、その過程で店舗網の拡大とオンラインのバランスを見極めていく。

▲「メンズ・カーブス」の出店も開始
(画像=▲「メンズ・カーブス」の出店も開始)

2つめは、男性向け「メンズ・カーブス」の展開。女性会員からの「夫を運動させたい」という声を受けて開発した業態で、現在、全国に7店舗を展開している。元々は年間約50店舗の出店を計画していたが、コロナにより新規出店をほぼ凍結し、フランチャイジーか らの要望等により年数件ずつ出店している。ただ、「感触として女性向けカーブスの3〜5店舗に1店舗の割合で男性向けカーブスを展開できるだけの大きなマーケットがある」というのが増本社長の考え。将来的に女性向けカーブスが2500店舗になったときには、「メンズ・カーブス」だけで400〜500店舗から1000店舗近くまで出店できると見ている。

同社がターゲットとしている50歳以上の女性のフィットネス市場は、他社とは競合しないマーケットで、高齢化が進む日本における市場性はブルーオーシャンだ。単なるスポーツフィットネスのサービスではなく、「健康」を切り口に新しい市場を創造してきた強みを生かし、マーケティングを強化し会員数の早期回復を図っていく。

「50〜70代の人口は男女合わせて約4800万人、女性が2500万人、男性が2300万人、その女性2500万人の大半が当社の本来の顧客層になると思います。ですから女性向けカーブスで100万人、150万会員というのは全然不可能な話ではない。それだけの大きなマーケットがまだまだあると捉えています。地域密着の健康インフラを目指して、より多くの方にカーブス運動を提供していきたいと考えています」(増本社長)。