10年の断絶期を挟んで291年続いたコメ先物の歴史に、幕が下りることになった。(株)大阪堂島商品取引所(中塚一宏社長)による「コメ先物」本上場申請に対し、農林水産省が8月6日、「不認可」を通知したもの。堂島商取がすでに「不認可となった場合、試験上場は申請しない」方針を表明していることから、コメ先物は廃止の方向性が確定したことになる。また、こうしたケースの場合、行政不服審査法(3か月以内)や行政事件訴訟法(6か月以内)に基づいて審査請求や提訴することもできるが、堂島商取は今のところ何の方針も示していない。
コメ先物の廃止が確定したといっても、すぐに市場が閉じられるわけではない。8月23日に新甫限月が建たず、現在建っている最期先限月が納会するまで(新潟コシEXWを除き2022年6月20日まで)は取引が続く。
世界初の先物市場は、1730年(享保15年)に大岡越前守忠相が「公許」した堂島米会所。だが約200年後の1939年(昭和14年)、戦時統制下を理由に廃止させられてしまう。戦後も食糧管理法の存在によって再開できず、ようやく復活できたのは2011年(平成23年)になってから。実に72年が経っていた。とはいえ制度上は「試験上場」にすぎず、安定感を欠く市場の状態が続いていた。2年に一度の「試験上場の延長」を繰り返し、気づけば10年。株式会社化を果たした上で「本上場」申請に臨んだのが2021年7月16日のこと。監督官庁である農水省が「不認可」を前提に「意見聴取」の実施を公表したのが7月29日。これを受けて7月29日の緊急会見で中塚社長は「もしも不認可になれば廃止しかない」と、まさに背水の陣を敷いていた。8月4日になって自民党が否定的な申入れ。8月5日の「意見聴取」では中塚社長自身が堂々とした論陣を張った。
本紙の調べによると、農水省は不認可の理由を以下の通りあげた模様だ。
〈1〉参加している当業者の数が3期間(6年)を通じて横這いであるなど、当業者の取引への参加が拡大していない。
〈2〉第5期(2019年〜2020年)中に取引した当業者に意見聴取したところ今後の利用意向について「活用したい」との回答が減少しているほか、参加当業者以外の生産者・流通業者の参加意向が多いとの情報もない。
〈3〉第5期の取引の9割を新潟コシが占めているが、新潟コシが国産米全体の価格指標であるとは評価できない状況のため、価格指標としての今後の利用の広がりが限定的。
――いずれも前日の「意見聴取」で堂島商取側が反論しているが、全く響かなかったことになる。
自民党が申入れのなかで別途現物市場の設置を求めているものの、それまでは価格指標が存在せず、現物価格が乱高下することは確定的だ。またジャポニカ米の価格決定権は、大連商品取引所(中国)に奪われることも明白。今回の農水省の判断は、明らかに「自分で自分の頸を締める行為」と言える。
〈米麦日報2021年8月10日付〉