大谷翔平、経済効果は240億円?! なぜオオタニさんは世界で愛されるのか
(画像=Richard Rodriguez / Getty Images North America)

世界の野球界に「大谷翔平旋風」が巻き起こっている。エンジェルスのオールスターゲームに史上初の投打二刀流で出場し勝ち投手となるなど、現実離れした快挙を続々と成し遂げた。野球界のみならず、経済面でも大きな効果をもたらすと期待されている。

世界が熱狂する「世紀に一人の逸材」

活躍の舞台を日本からメジャーに移して4年が経過した。大谷選手の驚異的な活躍ぶりは、1920年代に本塁打50本を超えるシーズン記録を達成した「野球の神様」ベーブ・ルース選手と比較されるほどだ。

ルース選手が投手か打者かどちらか一方にしか専念出来なかったのに対し、大谷選手は投手、打者、走者のすべてを超人的なレベルでこなすマルチプレイヤーであることから、「ルース選手を超えた」との声も少なくない。

2021年7月上旬には、オールスターブレイク前に日本人選手としては初の32本塁打で松井のシーズン最多本塁打記録を更新した。新型コロナの影響で2年ぶりに開催された13日のオールスターゲームでは、1995年の野茂英雄選手(当時ドジャーズ所属)に続き、オールスターで先発登板した2人目の日本人選手となった。

さらに、アメリカンリーグが勝利を収めたことで、2019年の田中将太選手(当時ヤンキース所属)に次いで、2人目の日本人勝ち投手という栄光も勝ちとった。投手と野手に同時に選出された選手は、オールシーズン史上初だ。

3回のホームランでMVP(最優秀選手)に選ばれたブルージェイズのゲレーロJR.選手は、「MVPに選ばれてとても嬉しいが、自分だったら大谷を選ぶ」と、試合後の会見で語った。

「球界の顔」がもたらす経済効果

サッカーやラグビー人気に圧され気味の野球界に、大谷選手が新風を呼び込んでいることは疑う余地がない。かつて、マイケル・ジョーダンがバスケットボールの世界的人気とNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)の知名度を高めたように、大谷選手は野球界とMLBの救世主となる可能性をふんだんに秘めた、「1世紀に一人の逸材」なのだ。

MLBのマーケティング担当シニアバイスプレジデント、マック・ヒュー氏は、「大谷選手は野球の歴史の中で最もユニークで変革的な選手の一人」と絶賛した。数々の快挙を最大限に活用し、「可能な限りの利益を得るために、さまざまなプロモーションを企画している」と明かした。この中には、ニューヨークのMLB本部の外壁に大谷選手の特大写真を展示し、大谷選手を「球界の顔」として広範囲な層に売り込む戦略も含まれている。

また、昨年MLBが立ち上げたInstagramのアカウントは、大谷選手のフォロワー数が5万人急増し、現在91万人に達しているという。好パフォーマンスを続ければ、シーズンが終了する前には100万人を突破する見込みだ。

さらに、7月12日にESPNで放送されたT-Mobile主催のホームランダービーは、平均視聴者数約713万人と2017年以来の最高水準を記録した。史上3人目の連覇を達成したのは、メッツのピート・アロンソ選手だったが、ここでも「大谷効果でMLB人気が際立つ一夜となった」とCNBCは報じた。

2023年には年棒33億円超え?

米フォーブス誌の推定によると、大谷選手はすでにスポンサー料だけでメジャートップの600万ドル(約6億 6,184万円)以上を稼ぎ出している。これはフィラデルフィア・フィリーズ所属のブライス・ハーパー(500万ドル/約5億5,154万円)やシカゴ・カブス所属のクリス・ブライアント(350万ドル/約3億8,608万円)といった人気選手のスポンサー料をはるかに上回る。

同誌はその理由の一つとして、大谷選手が米国のみならず日本でも絶大な人気を誇り、JALやセイコー、ファナティクス、オークリーといった日米の企業と契約を結んでいることを挙げている。まさにMLBが熱望している、「グローバルアイコン」の役割を果たすにふさわしいというわけだ。

スポーツマーケティング企業トランスインサイトコーポレーションの創設者兼社長である鈴木知也氏は、「大谷が望めばイチローや松山と同じくらいの収入を得ることは可能だろう」と指摘している。しかし、当の本人は「スポンサー選びに非常に慎重で、これまで多数のオファーを断ったと聞いている」という。

その一方で、「今後の活躍次第では、年棒は現在の10倍に跳ね上がる」と、フォーブス誌は予想している。大谷選手の2021年の年棒は300万ドル(約3億3,091万円)と、ニューヨーク・メッツ所属のフランシスコ・リンドーア(4,530万ドル/約49億9,724万円)やロサンゼルス・ドジャース所属のトレバー・バウアー(3,900万ドル/約43億235万円)と比べると桁が1つ違う。

しかし、このまま好パフォーマンスを維持すれば、「2023年には年棒3,000万ドル(約33億950万円)を超える」可能性もある。

現在の野球界を揺るがす期待の星

一部では「過大評価」の声も上がっているが、大谷選手が現在の野球界を大きく揺るがしていることは間違いない。日本を、そして世界の野球界を背負う人物として、今後の活躍から目が離せない選手である。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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