ブルーオーシャン戦略で業績を伸ばす、医療分野のライブ配信におけるパイオニア
(画像=木村情報技術株式会社提供/THE OWNER編集部)

Jリーグクラブ・サガン鳥栖の胸スポンサーにもなっている木村情報技術株式会社。「聞いたことがない」という人が多いかもしれないが、知る人ぞ知る「医療分野のライブ配信におけるパイオニア」だ。創業者の木村隆夫代表取締役に話を聞いた。(インタビューは2021年7月上旬に実施)

メイン事業はWeb講演会運営と人工知能

――約18年間製薬会社に勤務されていたとのことですが、創業のきっかけは何だったのでしょうか。

1987年から2005年の約18年間、山之内製薬(現・アステラス製薬)に勤務していたのですが、2005年に藤沢薬品工業と合併することになりまして、早期退職の募集がありました。不遜ながら、当時の私はいわゆる出世頭でお給料もそれなりに良かったため、辞める必要はなかったのですが、「人生は1回しかない。新しいことをやってみたい」という想いが強くなり、早期退職することにしました。

私は東京出身ですが、前職の2つめの赴任地が佐賀でして、そこで佐賀の女性と結婚し、佐賀に家を建てて、佐賀に両親も呼んでいます。そのような縁のある佐賀の地に移り、木村情報技術株式会社を創業しました。

当初は非医療分野、具体的にはITやICTの分野で色々やっていたのですが、2年間くらいうまくいかず、ある人からの「君は医療に詳しいのだから、医療×ITでやってみたら」という助言もあって、そちらにシフトチェンジしました。以降、Web講演会の運営と配信に関わり、Web講演会のスペシャリストとしてサービスを提供しています。

――改めて、具体的な貴社の事業内容を教えて下さい。

メインの事業は、Web講演会運営と人工知能の2つです。

前者は、Web講演会の運営・ライブ配信サービス「3eLive」および収録・オンデマンド配信サービスを提供しています。製薬会社を中心として100社以上とお付き合いさせて頂いており、延べ10,000回ほどWeb講演会を実施しています。ユーザー数は200万人ほどでしょうか。なお、ライブ配信は2008年からスタートしています。

後者に関しては、約6年前から展開しておりまして、主にチャットボットです。具体的には「AI-Q」というパッケージソリューションを提供しています。「AI-Q」はIBM Watson日本語版を活用した自然な対話による国内初の社内お問い合わせシステムです。今ではオリジナルの人工知能も独自で作れるようになっていますので、それを用いて新しいビジネスも展開しています。

なお、「3eLive」はもともと製薬会社向けに開発したサービスですが、コロナ禍に突入して、ライブ配信のニーズが急激に高まったため、製薬会社以外の事業法人からもたくさんのお問い合わせを頂きました。

そのため、「BiZLive」という製薬会社以外の法人向けライブ映像配信サービスも開始しています。また、それに関わる集客システムの「ChatMeet」を含めて、製薬会社以外のオンラインセールス事業が急速に大きくなっています。

11年連続で売上が前年比約120%以上成長できた理由

――業績に関してですが、11年連続で売上が前年比約120%以上の成長を続けていると伺いました。どのような点が継続的な成長に繋がっているとお感じでしょうか。

まず、世の中の流れが追い風であったことが挙げられると思います。今でこそオンライン配信が当たり前になりましたが、オンライン配信事業を始めた当時は、あまり一般的ではなかったと思います。また人工知能事業に関しても、ここまで「人工知能」という言葉が広く浸透していなかった頃から事業展開しています。

当社は、「まだ世のなかにないような市場を自分たちで作っていこうじゃないか」という「ブルーオーシャン戦略」を掲げています。まだ世になくて人の役に立つ事業を作ることができると、事業がどんどんと大きくなっていきます。

ITの世界は移り変わりのスピードが速いので、それに対応すべく、3年に1度は大きな新事業を作ってきました。このようなことが、高い成長率に繋がっていると思います。

コーポレートページにもIR情報を載せていますが、第15期(2020年6月期)は約42億1,000万円の売上高でした。大体の内訳は、Web講演会運営事業が37億円、人工知能事業が5億円です。第16期(2021年6月期)の売上高は68億6,000万円まで伸ばすことができました。コロナ禍の影響もあって160%以上の伸びです。

――いま仰って頂いたように、コーポレートページにIR情報(業績推移)が載っています。非上場会社で、第1期からの詳しい数字が載っていることは比較的珍しいかと思いますが、情報開示には何かこだわりがあるのでしょうか。

今でこそ非医療系の事業法人とのお付き合いも始まっておりますが、当社は元々、製薬会社に向けたサービスを展開している会社です。製薬会社はどこも会社規模が大きく、「我々のような中小企業と取引して本当に大丈夫なのか」という不安があるか思います。

当社は毎年のように、帝国データバンクさんや東京商工リサーチさんが信用調査に来て下さるので、あるとき「なぜ私たちをこんな頻繁に調査して頂けるのですか?」と聞いてみました。どうやら製薬会社から、帝国データバンクさんや東京商工リサーチさんへ「木村情報技術はどんな会社なのか」というお問い合わせが定期的に来るそうで、そのため頻繁に調査して頂いているようです。

おそらく、新規取引先が当社のことを信用調査しているのだと思います。それを知ってからは、良いことも悪いことも包み隠さず、すべてオープンにしたほうが信用力は増し、新しい商いに繋がるのではないかと思い、信用調査には全面的に協力しています。また、コーポレートページでも公開できる範囲で業績を公開しています。

なお、第13期(2018年6月期)の利益がそれまでのトレンドに比べて大きく減っていますが、これは人工知能への投資を進めたためです。さらに補足しますと、そのあたりは約3年で社員が200名ほど増えています。人件費やシステムに投資をしていた時期ですね。

サガン鳥栖胸スポンサー就任とIPOへの考え方

――2020年11月にJリーグクラブのサガン鳥栖の胸スポンサーに就任されました(編集部注:2021年シーズンも継続)。どのようなお気持ちでスポンサーになられたのでしょうか。

あるとき、「コロナ禍の入場制限もあり、サガン鳥栖さんの経営が厳しい。木村さん、少し助けてもらえないか」というお話をいただきました。J1クラブの胸スポンサーに我々のような中小企業が入ることはないだろうと思っていたのですが、ちょうど胸スポンサーが空いていまして、支援の話を進めていくうちにご縁を頂きました。

先程、創業して2年間くらいはうまくいかなかったと言いましたが、もう本当に倒産間際まで追い込まれていました。しかし、佐賀県の皆さまにご支援頂いたり、佐賀県の助成金を活用させて頂いたりして、何とか生き延びることができました。そのご恩は常に心にありましたし、いつか恩返ししたいと思っていました。

サガン鳥栖さんは佐賀県の誇りですので、私たちがお助けするというのはおこがましいのですが、少しでも力になれればと思い、「シーズン終了までの数ヵ月という短い期間でも役に立てるのであれば」とご支援させて頂くことにしました。2021年シーズンは、もっと大きな企業が胸に入れば良いなと思っていたのですが、なかなか見つからないという話もお聞きしていまして、それであればと2021年シーズンも継続させて頂いております。

――新規株式公開(IPO)について、何かお考えはありますでしょうか。

今までIPOに関しては「進める」「進めない」の間を行ったり来たりしていたのですが、今はあまり考えていません。IPOにはメリットとデメリットの両方があると思いますが、当社の現状を鑑みますと、そこまで積極的に進める必要はないだろうという判断をしています。

役に立つサービスを世の中に発信していき、医療業界の発展に貢献する

――「サステナブル」「SDGs」「ESG」に対して、貴社はどのような取り組みをされていますでしょうか。もしくは今後、どのような取り組みをする予定でしょうか。

当社は製薬会社がメインの顧客ですが、製薬会社のさらに奥にいる患者さんたちに貢献することが一番の存在意義、存在価値だと思っています。したがって、当社の原点である「医療業界の発展に貢献すること」をさらに突き詰めていくことが、仰って頂いたような分野への取り組みと言えると考えています。

例えば、岡山大学さんと一緒に「AI-PHARMA(アイ・ファルマ)」というサービスの提供を開始しました。これは医療従事者の皆さんが医薬品情報に関する質問をすると、AIが答えてくれるチャットボットです。これが広く普及していくと、医療従事者の皆さんが365日24時間いつでも医薬品に関する全般的な情報を入手できる、ひいてはその奥にいる患者さんに貢献できるというわけです。

この件に限らず、役に立つサービスを世の中に発信していき、医療業界の発展に貢献していきたいと考えています。

――木村社長の経営の信念や信条、尊敬している人などについて教えて頂けますでしょうか。

企業理念として「人に喜ばれることを判断基準として仕事を選び従事すること」「感謝と和合」を掲げています。創業時と比べてある程度規模は大きくなりましたが、いつまでもこの理念を忘れずに、謙虚にステークホルダーの皆さんと向き合いたいと思っています。

また、当社は「社員第一主義」を唱えておりまして、会社が社員を大切にすることによって、今後は社員がユーザーを大切にしてくれて、関係者全員がハッピーになると考えています。できる限り、社員の環境を整えてあげたいと思っています。

尊敬している人は1人に決められないのですが、長く会社を存続させている経営者は、会社の規模にかかわらず尊敬に値すると思っています。

――THE OWNERは中小企業オーナー経営者のための情報発信メディアです。サステナブルな社会を作ろうとする中小企業経営者に向けて、メッセージを頂けますでしょうか。

コロナ禍において、ニューノーマル時代になりました。オンライン化や非対面化が一般的になりましたが、中小企業を中心に、その波に乗り切れていない企業が散見されます。人工知能の導入も、ICTの導入も、いわゆるDX化も、日本の企業は世界の企業に比べて保守的なように感じます。

国内だけで戦うのであればそれで良いかもしれませんが、今はグローバル化の時代です。世界で勝ち抜くためには、もう少し積極的な導入姿勢があっても良いかと思っています。当社としましては、そのような企業に寄り添いながら、ご支援ができる会社になっていきたいと考えています。

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