12年以上に渡る「ぶれない」経営改革 DXを軸としたイノベーション戦略で飛躍を目指す

「地質工学の創造」を旗印に、地質調査業を出発点として創業した応用地質株式会社(東京証券取引所上場・銘柄コード9755)。以降、地質分野を起点として、インフラ・メンテナンス、防災・減災、環境、資質・エネルギーなど多様な分野へ事業を拡大している。代表取締役社長の成田賢氏に今後の展望や経営哲学を聞いた。

――まず、貴社の事業内容を教えて頂けますでしょうか。

当社は、自然災害に関わる調査・コンサルティングサービスのスペシャリストです。細かく分けていくと、「インフラ・メンテナンス」「防災・減災」「環境」「資源・エネルギー」の4つの事業があります。また当社は、地震や土砂災害などに関する原因調査や被害予測、防災・減災対策のコンサルティング分野におけて、世界トップクラスの技術を有している企業でもあります。

――民間企業では唯一の「スーパーコンピュータを使った地震動シミュレーション」を行うことができる企業とも伺っています。

1964年の新潟地震以降、地震防災に関する事業を展開しています。具体的には、大規模地震による地震動の計算や津波高の解析、それらによってもたらされる人的被害・経済被害などの想定、危険エリアの設定、そして自治体が策定する地域防災計画の策定支援サービスなどを提供しています。

そのような仕事は、国や国の機関、自治体から依頼を受けることも多いですね。南海トラフ地震の震度分布に関する調査を内閣府から受託し実施したのも当社です。

ただし一般的には、当社がそのような事業を展開していることは、ほとんど知られていないのではないでしょうか。我々は国や自治体から依頼を受けますが、国や自治他の発表資料に当社の名前が載ることはありません。だからこそ、このようなメディアで発信することも含めて、今後はもっと認知度を高めていかないといけないと考えています。

――同じような事業を展開している競合他社はあるのでしょうか?

以前は何社かありましたが、現在は非常に少なくなっています。大規模な地震はそう頻繁に起こるわけではないので、ビジネスになりづらいためです。そのため、他社は関連部門を縮小させていますが、当社は半世紀以上に渡って事業展開していますし、社会性が高い事業でもありますので、しっかりと人員を配置して事業を展開している状況です。

「DX注目企業2020」にも選定

――成田社長は2009年3月に代表に就任されていますので、2011年3月に発生した東日本大震災も応用地質株式会社のトップとして対応されました。

あのときは、地震の状況や被害を迅速に確認して、各所からの災害復旧に向けた調査や対策支援の要望に対応していきました。事故が発生した福島原発のすぐ近くに、たまたま当社のボーリングマシンがありましたので、原発の現場においても、被ばく対策を徹底しながら、そのマシンを活用して様々な緊急的な対策に向けた地質調査を行ったこともよく覚えています。

福島原発にはまだ膨大な処理水が貯留されていまして、それを海に放出する議論が行われていますが、その貯留タンクを設置するための地盤調査も当社が行っています。私も現場に3回ほど行きましたが、夏場に防護服を着用した状態での非常に暑い作業環境なども体感しました。そのような過酷な現場で、多くの社員が頑張ってくれました。

――代表(社長)に就任されるまでは、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。

私は1979年4月に新入社員として当社に入社しました。いわゆるプロパー社員です。学生時代は、地質学のなかの構造地質学と岩石学を学んでいました。構造地質学というのは、どのように地質が分布しているかを明らかにする学問であり、我々の事業のベースでもあります。

――2020年8月25日に、経済産業省が選ぶ「DX注目企業2020」(編集部注:上場会社約3,700社を対象に実施された「デジタルトランスフォーメーション調査2020」の中から全業種横断で、総合的にDX推進に優れていると評価された企業などを選定)に選定されました。どのような部分が評価されたとお考えでしょうか。

情報企画本部という本部機能を設け、そこにCIOを置いて、全社をあげてDX化を推し進めていることが高く評価されたと考えています。具体的には、ビッグデータを活用した次世代防災・減災システムとしての自治体向け災害対策情報システムや3次元レーダー探査技術とAIを用いた地下埋設情報提供サービスなど、社外向けの新たなサービスの開発に取り組んだことや、次世代ビジネス基盤としての地盤情報ICTプラットフォームの整備やデジタル技術の運用など、社内の業務の効率化など事業全般でDXを進めていることが評価されたと考えています。

一方で、DX銘柄35社に入ることはできませんでした。選出漏れの原因は明快で、「成果が足りない」ということです。いま申し上げた施策の取り組みは一定の評価をして頂きましたが、成果自体はまだ十分ではありません。今はしっかりと成果を出せるように取り組んでいるところです。

社員のモチベーション向上に繋がりますし、DX感覚を持たないとこれからのビジネスはなかなか難しいと思います。今後このようなセレクションがあった際は、ぜひDX銘柄に入れるように努力を続けていきたいと思います。

構造改革およびDXを軸としたイノベーション戦略の準備は整った

――「応用地質グループ中期経営計画 OYO Advance 2023(2021 年~2023 年)」を策定しました。こちらはどのような想いで策定されたのでしょうか。

我々のビジネスのやり方を大きく変えないと今後生き残れないということで、「長期経営ビジョン OYO 2020」を掲げ、2010年から10年がかりで3次に渡る中期経営計画を推進してきました。コロナ禍の影響もあり、残念ながら「Jump18」で掲げた数字目標は達成できませんでしたが、構造改革およびDXを軸としたイノベーション戦略の準備は整ったと考えています。

それを踏まえて、2023年度の目標数字を定めたのが、今回の中期経営計画です。「DXを核としたイノベーション戦略」を成長ドライバーに、「社会価値の創造」「環境価値の創造」「顧客価値の創造」を実現するESG経営(サステナブル経営)に取り組んでいきます。

具体的には、4つの事業すべてにおいて、2020年度比で20%以上の成長を見込んでいます。「インフラ・メンテナンス」と「資源・エネルギー」に関しては30%近い成長ですが、前者は老朽化したインフラのメンテナンスが伸びると予想しています。後者は洋上風力発電事業が急激な勢いで伸びています。どれも達成できると考えています。

――情報開示も強化されていると伺っています。

我々のビジネスは長い間、守秘義務のなかで取り組んでいたものですから、「開示する」ということは大変苦手な企業です。しかし、南海トラフ地震の震度分布に関する調査や福島原発の調査もそうですが、当社の本業自体がESG、SDGsと極めて親和性が高いこともありますので、これからはどんどん情報を発信していって、ビジネスを進めていきたいと思っています。

例えば、以前は地盤の3次元モデルを正確に作成することが出来ませんでしたが、当社の「地盤3次元化技術」を使えば、精度の高い3次元モデルをつくることが可能になりました。このような技術の存在を、社外に向けて広く発信したところ、多くの会社から問い合わせを頂きました。このような情報発信によってビジネスが拡張することを実感しているところです。

――どのような業界や業種から問い合わせが多いのでしょうか。

大規模な資産や土地を保有していたり、全国の色々な場所に事業拠点を持っていたりする会社からの問い合わせが多いですね。地盤3次元化技術に関しては、防災・減災・環境問題への対応、建物の建設に伴う地質調査などのニーズを掘り起こせていると思います。

地盤の3次元モデルは、専門知識がなくても視覚的に地盤リスクなどの理解がしやすいこともあり、「分かりやすさ」がひとつの付加価値になっています。3次元化したものをデータベースとしてIoTプラットフォームのなかに格納し、それらを用いて様々なアイディアを持った他業種の企業が活用し、新たなビジネスに繋げていくという事業展開も想定されます。

12年以上に渡って、ぶれずに会社を変化させてきた

――経営の信念や信条について教えて頂けますでしょうか。

「ぶれない」ということが重要だと思っています。私は理学系の技術屋でしたので、2004年3月に取締役に就任した時点で、経営について深く理解しているかと言うと、そうではない状況だったと思います。

バブルが弾けたあとで、公共事業投資がどんどんと削減され、当社の売上もどんどん減っていく状況での取締役就任でした。そんなとき、参考になったのがドラッカー著の『マネジメント』です。経営とはどうあるべきか、今起こっている変化をどう捉えれば良いかなどが明確に書かれており、大変参考になりました。

5年後の2009年3月に社長に就任しましたが、社長になった次の年は、創業以来初の赤字になってしまいました。これではいけないと思い、12年以上に渡って「受け身型の会社」から「自ら積極的に行動する会社」へ変化する施策を一歩一歩進めてきました。『マネジメント』に「社員は変化を嫌う」と書かれていた通り、難しい局面もありましたが、ぶれずにやってきたことで今があると思っています。

――THE OWNERは中小企業オーナー経営者のためのメディアです。サステナブルな社会を作ろうとする中小企業経営者に向けて、メッセージを頂けますでしょうか。また、貴社の今後の展望や抱負もお聞かせ頂けますでしょうか。

そんなことを言える立場ではありませんが、企業は社会に対して「労働の場を提供する」という素晴らしいことをしている組織だと思います。雇用を生み出すということは、社会が持続的に発展するためには不可欠です。皆様もそう思っていらっしゃると思いますが、従業員に寄り添った経営をすることが重要ではないかと考えています。

今の株価状況には当然満足していません。今の株価状況は、我々に対する厳しいお声であると真摯に受け止めながら、株主の皆様の期待にお応えできるよう努力を続けていきたいと思います。

従業員の満足度を高めつつ、社会に貢献して、株主にも報いる、そのような企業に成長させたいと思っています。

<企業情報>
社名:応用地質株式会社 (OYO Corporation)
住所:〒101-8486 東京都千代田区神田美土代町7番地
設立:1957年(昭和32年)5月2日
資本金:161億7,460万円
株式市場:東京証券取引所市場第一部

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