ヤマザキ 山崎社長
(画像=ヤマザキ 山崎社長)

――2021年2月期の業績は

ヤマザキグループ合計(※連結ではなく合算)で売上高は前年比8.5%増308億円と伸長し、利益面でも増益となった。

――前年度はコロナ禍の影響でコンビニエンスストアが苦戦する中、好調の要因は

市場とは逆に、当社のコンビニエンスストア向けのデリカ商材は堅調だった。コンビニエンスストアが苦戦した要因の1つに、オフィス街などでのお弁当需要の減少があった。コロナ禍以降コンビニエンスストアの使い方が変わり、お弁当屋からビュッフェのように、アラカルトでメニューを選んで買われるようになっている。

当社は従来から、家庭料理の豊富なメニューを商品化することを理念として掲げており、惣菜・弁当を効率よく提供するというよりも、食卓の豊かさへの貢献を志向してきていた。そうした中で、惣菜ベンダーと呼ばれる業態の中でも、「お弁当」ではなくサラダ類や野菜惣菜を中心に提供してきた。コロナ禍の状況でも、当社の手掛けるような手軽に買える小型のサラダ類、カップ入り惣菜類は堅調だった。以前からある程度こうした市場変化を想定していたが、コロナ禍以降時計の針が早まった感がある。

また、近年は健康志向の高まりで糖質の摂取を控える人が増えているが、巣ごもりで活動量が減る中でそれが加速している。正直言って、ここまで進むとは思っていなかった。そうした状況下では、お弁当よりもアラカルトでおかずを選ぶ方が好まれる。こうしたライフスタイルの変化はコロナ禍以降も続くのではないか。

――チルド包装惣菜(袋物惣菜)事業の業績について

売上高は前年比9.8%増117億円と好調だった。大手コンビニエンスストア向けなどプライベートブランド商品も前年と比較して好調だったが、中でも「もう一品」シリーズのナショナルブランド商品が26%増46億円と大きく伸長し、全体をけん引するとともに、売上構成比を増した。

「もう一品」シリーズでは、2020年春に主力のポテトサラダの味をリニューアルした。だしを使い、よりじゃがいもの味が引き立つようにするなど味をブラッシュアップした。同時に、増量キャンペーン実施などで売場での展開を強化したところで、コロナ禍による巣ごもり需要拡大があった。

ただ、当初は巣ごもりの追い風で伸びたかとも思ったが、改めて見直すと、売場を創り伸ばそうという当初からの計画がはまって伸びたと思い直している。というのも、巣ごもり需要が一巡した2020年夏〜秋以降も好調で、さらに定番以外のバラエティ商品も伸長したからだ。

定番品の大容量タイプ「もう一品」ファミリーシリーズが、増量で買い求めやすさを演出したことなどもあり前年比45%増と通期にわたって好調を維持した一方、調理方法にこだわった「もう一品」粋な献立シリーズが前年比30%増、高付加価値型の「もう一品」リッチシリーズが20%増と、これまでにない大幅伸長となった。春先は不可抗力の中で定番品に集中し、売場での存在感も増した。お客様に繰り返し手に取っていただく機会が増えた中で、下期以降はバラエティ商品も手にとっていただけるようになったのではないか。こうした傾向は今期に入ってからも続いている。

――袋物惣菜事業の今期以降の方針

今後はナショナルブランド「もう一品」シリーズの一層のブランド力強化を図るべく、テレビCMで従来の静岡・関西・中京から放映エリアを拡大。さらに売場面積を拡げるため、空白エリアでは地域卸との取り組みを強化し、協業による販路拡大を狙う。

また、以前からヤマザキでは「家庭料理の商品化」をうたい、基本的には家庭で一般的な調味料だけを使った商品作りをしてきていたが、化学調味料・食品添加物不使用を徹底訴求していく。

商品面では2021年秋、想定価格398円の高価格帯商品でロールキャベツなど3品を投入する。直ちに受け入れられるとは思わないが、以前と比べ消費者の皆さんの商品に対するコスト観が変わってきている。かつて袋物惣菜は100円前後かそれ以下で売られることも多かったが、178円、198円といった商品も育ってきている。価値が評価されれば、袋物惣菜の最終形態を目指し、ブランド力強化の意味でもチャレンジしたい。

〈ナショナルブランド強化・冷食への取り組み・CVS事業に注力〉
――フローズン、フローズンチルド事業の進捗は

2020年度は主にフローズンチルドのグラタン類で、プライベートブランド含め売上高7億円強だったが、2021年度は自社ナショナルブランドを中心に伸ばし、11億円を目処に考えている。私自身として最も注力している分野の1つだが、当初の想定よりも進捗は遅れている。ただ、これまでの取り組みの中で量販店へ届ける物流の足掛かりができており、それに伴い、次の商品の仕込みも進めている所だ。

ひとまず2021年秋、物流がある程度整ったフローズンチルドのグラタン類は伸長が見込まれる。これを足掛かりに、来春を目指してフローズンでの打ち手を打っていく。物流の課題を乗り越えれば、商品開発力・売場の企画力次第で事業拡大も加速していけるのではないかと考えている。

――業務用の取り組みは

まだ十分に見えてはいない分野だ。複数の大手外食チェーン向けで提案を進めていたところでコロナ禍があり、難しくなってしまった。直近では惣菜チェーン向けで採用が決まり始め、間口を広げつつ展開を模索している。また、9月以降は外食産業も急回復するのではないかと見ており、その機を捉えてチルド・冷凍両面で提案強化を考えている。

――原料面での取り組みは

原料はあらゆるものが値上がりしており、厳しい状況だ。ただ、ここ数年は拡大を優先してきたため、あまり取り組んでいなかったコストダウンにも力を入れようとしている。我々の業態は垂直統合的な構図の中で原料ロスが多くなりがちだ。従来ロスになってしまうものを、冷凍で活用することなどで、ある程度コストコストダウンにも繋げられると考えている。

自社原料では、最大のテーマは主力商品であるポテトサラダで使うじゃがいもの品質向上だ。これまでも人員を充て、栽培から生産まで、ノウハウの研究も徹底してやってきた。足元ではとにかくポテトサラダを美味しくするため、収穫後の管理をより厳密に行うようにした。同様にゴボウ、サトイモでも管理の徹底を進める。

――今期の重点施策と課題は

1つはナショナルブランド商品のブランドを強化し、しっかり伸ばすこと。次に新カテゴリー、特に冷食への取り組みを強化すること。そしてグループ全体でコンビニエンスストアとの取り組みを1つの軸として強化すること。いわば3本の軸でそれぞれ取り組みを強化していくことだ。

課題としては、永遠の課題でもある美味しさの追求を挙げたい。その一方で、人財も含めた人手不足がある。省人化のための機械導入を進めるが、単純な機械導入ではなく、人がやるべきこと、人が美味しいものを作る行為に集中できるためにはどうすべきかを主眼に、自動化・機械化を模索している。その先に、従業員皆がおいしいものを作るというプライドを持って仕事をできる環境が整うと考えている。

〈冷食日報2021年7月27日付〉