大相撲は過去最悪の50億赤字 コロナ禍でスポーツビジネスに暗雲か
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスは、宿泊業や旅行業などに多大なダメージを与えているが、スポーツビジネスにも暗い影を落としている。2021年5月には、プロ野球の広島カープのチーム内でクラスターが発生し、試合が5試合連続で延期になった。球団運営の厳しさは増すばかりだ。

コロナ禍がスポーツビジネスに与える影響

新型コロナウイルスの感染拡大は、スポーツビジネスにとっても大きな問題である。試合そのものを中止・延期せざるを得ないケースも出てきているほか、ファンとの交流イベントも取りやめが相次ぐ事態となっている。

試合そのものの実施・延期については、2つのことが引き金になる。1つ目は、チーム内で新型コロナウイルスの陽性者が出てしまった場合である。2つ目は、試合を行う地域で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な場合だ。カープのケースは前者だった。

また、試合を行うことができても、観客数を制限する場合はチケット収入が大きく減少する。入場制限を平時の半分にすれば、満席になってもチケット収入は半分しか得られない。このような状況では、スポーツビジネスの採算が成り立たなくなってしまう。

広島カープで多数の陽性者、5試合が延期に

ちなみに、広島カープに関しては、試合の延期を2度にわたって発表される流れだった。一度目は2021年5月21日だ。チームから多数の新型コロナウイルスの陽性者が出たことを理由に、5月21日と22日、23日の3日間の試合を延期することを発表した。

2度目は2021年5月25日である。チーム内でさらに陽性者が増えたことなどから、5月25日と26日の2試合の延期を発表した。球団側は「関係者の皆様、カープファンの皆様には多大なるご心配とご迷惑をお掛けしておりますこと、深くお詫び申し上げます」としている。

プロ野球において、新型コロナウイルスの陽性者が出たことで試合が延期されたのは、広島カープだけではない。日本ハムでも陽性者が出たため、一部試合を中止せざるを得なかった。そしてこれらの状況は、ほかの球団でも起こり得ることだ。

大相撲では過去最悪の50億円という赤字額に

プロ野球以外でも、さまざまなプロスポーツでコロナによる影響が出ている。例えば大相撲だ。2020年から春・夏・秋・冬の各巡業を中止しており、2021年も全ての巡業の中止が決まっている。ちなみに、本場所については、2020年3月の春場所を無観客で実施している。

このような状況の中、日本相撲協会が2021年3月に開いた理事会で、2020年度の収支が50億円の赤字になったことが報告された。無観客のほか観客数の制限も行い、地方巡業が中止されたことも一因だった。

日本相撲協会の2020年度の50億円という赤字額は、八百長問題で1場所が中止された2011年度の45億円という赤字額を上回るものだ。いかに、新型コロナウイルスが大相撲にも深刻な影響を与えているかがよく分かる。

各団体が「感染拡大予防ガイドライン」を作成・公表

このように、コロナ禍がスポーツに深刻な影響を与えており、プロ・アマ問わず、大会や試合が中止・延期される例が相次いでいる。一方で、最近はワクチン接種が進んでいることもあり、今後は大会や試合が予定通り行われるケースも増えそうだ。

では、予定通り大会や試合を行う際に、気を付けなければならないことは何だろうか。もしそのことを知りたければ、スポーツ庁がスポーツ関係の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインをまとめたページを公開しているので、参考にしてほしい。

▼スポーツ関係の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインについて
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/detail/jsa_00021.html

このページでは、公益財団法人「日本スポーツ協会」と公益財団法人「日本障がい者スポーツ協会」がまとめた「スポーツイベント再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」が公開されているほか、各競技団体が作成したガイドラインも公表されている。

例えば、Jリーグを運営している公益社団法人日本プロサッカーリーグが発表しているガイドラインでは、緊急事態宣言対象区域とまん延防止等重点措置区域において、Jリーグスタジアム基準に定める入場可能数の上限 5,000 人もしくは 50%の少ないほうを適用すると定めている。

▼Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン
https://www.jleague.jp/img/pdf/2021_0621_02.pdf

ワクチン接種でコロナ収束の期待感が高まるが…

新型コロナウイルスが収束すれば、自然とスポーツビジネスの収益も回復していくとみられる。ワクチン接種も進みつつあるため、各団体もようやくほっと一息つきつつあるのではないだろうか。

しかし、このような感染症の拡大は今後、また起きる可能性が十分にある。そのときのために、今回のコロナ禍で得た感染症対策などの教訓を忘れないことが重要だ。現在行われているファンイベントのオンライン化だけでなく、他の対応方法も考えておくべきだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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