〈国分グループ本社フードサービス統括部フードサービス事業部・髙橋淳部長/同・田中英治副部長〉インタビュー
――コロナ禍以降の外食市場について
外食企業、業務用卸ともに直近では大きな赤字決算となり、会社を存続させるために、大量閉店、業態転換、人員削減、不採算事業はもちろんのこと、準主力事業の切り離し、機能のアウトソーシングなど、過去に経験のない生き残りをかけた構造改革が始まっている。
今なお酒類主体の業態は厳しさを増す一方で、店舗における感染防止策の徹底、モバイルオーダーなどのデジタル活用、テーブルサービス中心だったレストランのテークアウト・デリバリー強化、そして、固定費を抑制した小型店の展開など、新規需要を取り込み、成長に向けた施策が加速している。
そうした中でも、我々卸としてできる事をしっかりと行い、フードサービス業界の発展に貢献していきたいと考えている。
――貴社フードサービス部門の強みや特長
フードサービス事業部は、外食チェーン、レジャー・公共施設、企業給食、病院・高齢者施設給食、業務用食材・酒類卸、メーカー様への原料・資材販売など広範囲、かつ、バランスのとれた得意先構成となっている。居酒屋チェーン、レジャー・公共施設、企業給食、業務用卸ルートの数字は芳しくないが、テークアウト・デリバリー、高齢者施設給食ルートは堅調に推移している。
市場・需要の変化が激しくなっているので、事業ポートフォリオを鑑みながら、柔軟に見直し、やる領域、やらない領域を明確にして、身軽で筋肉質な営業活動を実践する事を心掛けている。
また、若手社員・中堅社員・ベテラン社員の人員バランスも良く、ここは大きな強みと感じている。とりわけ、若手の育成に力を入れている。全員で学びの場を提供し合い、営業力を磨き上げ、誇りとやりがいをもって、個人と組織がともに成長していく事で、お得意先の一番の相談相手になれると考えている。コロナ禍の影響が大きい今こそ、お得意先にしっかりと寄り添える活動をしていきたい。
――足元での重点方針・注力施策について
フードサービス事業部としては、コロナ禍による外食市場の回復は3年程度と見込んでいるが、そのような中、2020年、第11次長期経営計画(2021年〜2025年)を策定した。コロナ禍での策定は大きなアドバンテージになったと考えている。
2021年度はその初年度となる。それぞれ主要販売チャネル毎に目標を設定しているが、共通の目標として、国分グループの価値創造目標である『顧客満足度No.1』と『社員の仕事における幸福度の向上』の取り組みについて、お話ししたい。
『顧客満足度No.1』は、得意先と共に課題解決を行い、事業継続や成長戦略を実現する経営パートナーになる事を目標としている。
併せて、『社員の仕事における幸福度の向上』も大切な要素であると考え、特にエンゲージメント要素を重視し、この挑戦と成長を支援している。社員一人ひとりの幸福度が向上することで、会社全体、得意先、社会へと幸せな状態を広げていく循環を創っていきたい。
――商品面での注力商品・新商品等
チャネルを大きく4つに分類して取り組んでいる。まず外食企業に対して、加工食品・酒類・フレッシュ食材のフルカテゴリー提案に加え、セントラルキッチンへの原料供給に注力している。
続いて、事業所給食・介護施設に向けては、取り組みメーカー様と一緒になって「栄養考慮の簡単調理品(完調品・ミールキット・冷凍弁当)」の共同開発に着手している。
原料資材では、BCP対策となる国産原料、及び、SDGs提案となる環境配慮型原料に、業務用酒類では、チルド清酒やサステナブル商品の開発にそれぞれ注力している。
また、業務用の全業態を通して、国内外でのグループ企業の製造商品の提案も推進している。
――ご担当部門の中長期的な方向性
国分グループ本社の企業理念は「継続する心・革新する力」としている。「食のインフラ企業として、流通を継続的に責任を持って支え、従来の卸にこだわらず、融合を通じて食の価値を創造する事」を目指している。
〈業務用卸・物流業者などと共創関係構築で新エリア・ルートを開拓〉
フードサービス事業部の事業部ビジョンは『フードサービス事業の流通を担う「リーディングカンパニー」になるべく、グループ内外から頼られ、総合力No.1の業務用卸として、共に課題解決を行えるパートナー化を目指す』としている。ここでお話しする総合力とは、国分グループが保有する機能・事業の結集の事を意味している。たとえば、市販ビジネス のノウハウやEC・ギフト機能、製造機能、海外事業をフードサービスビジネス向けにアレンジしたり、掛け合わせたりする事で新たな価値を創り出していく事を指している。
その中で、重要戦略を2点ほどお話ししたい。1点目は、業務用食材卸、酒類卸、物流業者(足回り・共配網構築)との共創関係構築を重要戦略とし、未進出エリア・ルートを開拓し、地域密着の全国卸を実現したいと考えている。
2点目は、得意先に対しての『モノ売り』と『コト売り』の2輪ビジネスの取り組み強化だ。従来の商流を原料供給から加工、製造、販売までをサイクルとした『モノ売り』に進化させ、マーケットシェアを拡大していく。また物流事業、システム事業、マーケティングやデータビジネスの探求など得意先のニーズ(テーマ)に対し、協業キーワードに最適な課題解決を提供し、得意先と共に価値を分け合う『コト売り』ビジネスを仕掛けていく事で『モノ+コトの事業の2輪化』を確立していきたい。
また、第10次長期経営計画において、当社グループ全体でフードサービス事業に取り組む組織体制を整備しており、全国のエリアカンパニーが、連携しながら「総合力No.1の業務用卸」を実現して参りたい。
〈冷食日報2021年6月21日付〉