ニチレイフーズも2020年度はコロナ禍の影響を受けて業務用事業は苦戦を強いられた。2020年度の振り返りと2021年度の計画について、滝英明業務用事業部長が食品産業新聞の取材に応じた。
――2020年度の業務用事業部の業績について
業務用事業部の売上高は前年から大幅に減収となった。ただし、様々な取り組みにより、市場の水準よりは2〜3%落ち込みを抑えられたと見ている。
売上げの内訳を業態別に見ると、構成比の高い惣菜向けは前年並みを確保、外食向けは前年の70%弱と苦戦した。給食向けは90%弱だが、病院・福祉給食は10%弱の増収となった。
惣菜は前年、バラ売りができなくなり、袋入りへの切り替えの過程で苦戦があった。一方でたいめいけんシリーズや監修唐揚げなどは30%増と伸びた。外食自粛の代替需要とみている。
惣菜では美味しく簡単に野菜がとれる「ベジデリカ」シリーズも40%増と伸びている。品目別に見るとチキン、凍菜、春巻が苦戦した。これらの品目は幅広い業態に販売しているためコロナの影響をまともに受けた。一方、ハンバーグとコロッケは好調に推移。新商品も惣菜向けを中心に販売を伸ばした。
病院・福祉では冷凍野菜を中心に伸長した。
――2021年度の計画について
2021年度は売上高6%増を計画する。スタートの4月単月は前年比2桁増で推移している。しかし2019年比ではまだ届いていない。
重点施策として、チキン、凍菜、春巻、ハンバーグの4カテゴリーの強化を図る。
チキンでは2021年春、未加熱の生IQF(バラ凍結)鶏唐揚げを発売した。同商品は、通常の冷凍唐揚げより加熱が少ないため、食感に弾力があり、簡便調理で衛生的でありながら、手作りと同等の品質が提供できる。このような商品価値にはニーズがあると考えている。これ以外にもチキン新商品を投入していきたいと考えている。
ハンバーグも春の新商品として「ロワ・グリエハンバーグ」を追加した。新技術「ジューシー包み成型」などによって肉汁のあふれる仕上がりが特長だ。更に新規商材としてヒレかつにもチャレンジしている。
――業態別の視点では
生活者の内食傾向は続いており惣菜強化は必須となる。外食についても今必要とされる商品を見極め発売したい。外食についてはワクチン普及状況で一挙に回復する可能性もあるが、現時点では2020年比で徐々に回復しているものの、暫くは足踏み状態とみている。オリンピック需要も限定的とみており、外食向けは前年比40%増を見込んでいる。
また営業面では2021年度も、展示会などお客様との接点は制限が続くとみている。お客様へのご案内不足を補完する為の新しい取り組みも行っている。
外食向けに動画を制作してホームページに公開したり、業務用新商品のプレゼントキャンペーンを実施したりした。キャンペーンでは予定の500セットを配り切ったが、その時いただいたご意見を今後に活かしていきたい。
直近ではホテルビュッフェや宴会需要の減少をカバーするため、新たな内食の売り場獲得を進めている。例えば量販店の惣菜売り場以外でも「合鴨スライスパストラミ」などのチキン類の販売や春巻など惣菜を展開できればと思っている。
生活者に定着したテークアウトやデリバリーの市場についても、新たな取り組みを検討している。
病院・福祉給食には「ボイルでサクッと」シリーズのように高単価でも評価されている商品はあるが、より幅広いニーズに対応できるよう品揃えを拡充する。塩分調整、タンパク質強化といった機能性に有名シェフ監修などの楽しみを付加した商品を開発していきたい。
――そのほかに課題は
直近で供給面に課題が出てきている。タイのチキン工場では、新型コロナの影響でタイ国外ワーカーの不足がある。現在、ワーカー確保に努めているところだ。
また米国西海岸でも新型コロナの影響で港湾作業者が不足し、北米のからの貨物が予定より遅れるという問題が生じている。今後チキン、凍菜などの供給に不安を抱えている状況だ。
〈冷食日報2021年6月7日付〉