
新型コロナウィルス感染拡大により、多くのビジネスパーソンがリモートワーク(テレワーク)を余儀なくされている。そうした中、タイムマネジメントの必要性を改めて感じている人も多いのではないだろうか。タイムマネジメントの基本や実際のやり方を理解しビジネスに役立てよう。
目次
タイムマネジメントとは何か?
タイムマネジメント(Time Management)とは、文字通り時間を管理すること。24時間をスケジューリングしながら仕事の生産性を高め、最大の結果を出すために重要となってくる。タイムマネジメントを上手に行うことは、特に結果責任を負っているビジネスパーソンやチームで仕事をしている人にとっては必須事項だ。
コロナ禍のリモートワークで落ち込む日本人の生産性
2020年11月にデータベースソフト開発大手の日本オラクル株式会社がリモートワークに関する興味深い調査を実施している。
日本の1,000人を含む11ヵ国計1万2,000人のビジネスパーソンに対する調査だ。「(コロナ禍の)リモートワークで生産性が上がったか」という問いに対し、「生産性が上がった」と答えた日本人は全体の15%。日本は11ヵ国中最下位だった。
11ヵ国平均において「生産性が上がった」と答えた人は全体の41%。ちなみに最も高いのはインドで全体の58%だった。一方で「生産性が下がった」と答えた人は日本は46%で、韓国の53%に次ぐ2位となった。在宅勤務などのリモートワークを余儀なくされた多くの日本人が「リモートワークによって生産性が下がった」と感じていることがわかる。
生産性が下がる理由
なぜ多くの日本人がリモートワークによって生産性が下がったと感じているのだろうか。その大きな理由の一つがタイムマネジメントの欠如だ。リモートワークの場合、「何となくダラダラと仕事をしてしまう」「一つの仕事に集中できずにタスクが分散してしまう」といった悩みを抱えている人は少なくない。
また上司の監視がない環境下においては、「仕事をついサボってしまう」という人もいるだろう。それゆえ特にリモートワークにおいては、タイムマネジメントをしっかりと行い、適切に運用することが必要となってくる。誰も監視をしてくれない環境だからこそ厳しい自己管理が重要となるのだ。
タイムマネジメントを行う5つのステップ
実際にタイムマネジメントを行う場合、どのようなプロセスを経るべきだろうか。筆者は、以下の5つのステップを踏むことをおすすめしている。
1.目標設定
タイムマネジメントの最初のステップは目標設定だ。目標設定をせずに「効果的な」タイムマネジメントを行うことは困難である。目標を設定しその実現のためのタスクを考えスケジューリングするのが基本だ。目標が設定されていないと、そもそもタスクを何のために行うのか分からなくなり、いたずらに時間を浪費してしまうことになりかねない。
目標は、自分の仕事やキャリアに直結する傾向のため、戦略的な目標と戦術的な目標を設定するのが賢明だろう。戦略的な目標の例を挙げれば、「1年後に顧客の数を倍にする」「売上を倍にする」といったものがある。戦術的な目標ならば、「ウェブサイトへのアクセスを25%以上増加させる」など週ごとや月ごとに設定してもいいだろう。
2.タスクのリスト化
次のステップは、タスクのリスト化である。戦略的な目標と戦術的な目標を実現させるためにやるべきことをリストアップするイメージだ。上の例でいえば「集客用のブログを立ち上げて運営する」「ホワイトペーパーを作る」「セミナーを開催する」など、考えられるタスクをできるだけ具体的に書きだしてみよう。
3.タスクの優先順位付け
3つ目のステップは、タスクの優先順位付けだ。緊急性などを見てランキングにするのもいいが筆者はアイゼンハワー・マトリックスを使うことをおすすめしている。アイゼンハワー・マトリックスとは、アイゼンハワー米国大統領が在職中に使っていたとされるマトリックスで以下の4つのカテゴリーで構成されている。
- ①Do First:最も緊急性が高く、今すぐやらなければならないタスク
- ②スケジュール:今すぐやる必要はないが、スケジュールに記載していつか行うタスク
- ③アサイン:緊急性は高いが、あなた自身がやる必要がなく誰かにアサインできるタスク
- ④拒否:緊急性もなく、重要でもない、拒否または軽減しても構わないタスク。あるいは仕事が終わったらやる趣味など
ここでのポイントは、④拒否のカテゴリーにできるかぎり多くのタスクを入れ、できるだけ無駄な仕事をしないこと。なぜならタイムマネジメントの要諦は、「いかに有用なことに時間を使うか」にかかっており、無駄なことに時間を浪費しないことだからだ。各カテゴリーに分類したタスクは、それぞれに優先順位をつけておき毎日アップデートできるようにしておくといいだろう。
4.スケジューリング
タスクの優先順位付けが終わった後は、スケジューリングを行う。無地のカレンダーやスプレッドシート、後述する専用ツールを使ってもいいだろう。
- ①Do Firstのカテゴリーから記入
- ②スケジュール、③アサインと続けて記入する
- ④拒否のタスクは記入してもしなくてもどちらでもいい
ここでのポイントは、①Do Firstのタスクで優先順位の高いタスクは、できるかぎり自分の「ピークタイム」にスケジュールすることだ。なお「ピークタイム」については次章で説明する。
5.評価と見直し
タイムマネジメントの最後のステップは評価と見直し。いずれも日、週、月の終わりの段階で行い戦略目標や戦術目標の変更なども行う。タスクが実行できなかったときなども記録しその原因などをメモしておくといいだろう。このプロセスを重ねることでタイムマネジメントの質が向上しアウトプットやスループットも改善してくる。
タイムマネジメントを成功させる5つのポイント
タイムマネジメントを成功させるポイントを5つ紹介する。
1.目標設定を正しく行う
タイムマネジメントを成功させる最大のポイントは目標設定だ。目標設定が正しく行われて初めて「各種のタスク」「タスクの優先順位」といったことが明確になり、正しいスケジューリングが可能になる。目標設定が間違っているとタイムマネジメントを行う意味がなくなるばかりか、壮大な時間の無駄遣いになりかねない。
チームで仕事を行う場合は、特にチーム全体とメンバー全員の目標設定の重要性が増してくるだろう。
2.タスクにタイムリミットを設ける
各タスクにタイムリミットを設けることも成功させるための重要なポイントだ。特に緊急性と優先順位が高い①Do Firstのタスクについては、一定のタイムリミットを設け冗長なアイドル期間が生じないようにする必要がある。
3.休憩を入れる
タスクとタスクの間に休憩を入れることもポイントだ。特に①Do Firstのタスクを行う際には、タスク間で10分程度の休憩を入れるといいだろう。休憩もスケジュールに入れておき、スケジュール通りに休憩をとろう。
4.整理整頓する
自分のデスクやオフィスを整理整頓することも重要なポイントだ。デスクやオフィスが散らかっていると書類などを探す時間が増え時間の浪費につながる。デスク以外にもパソコンのデスクトップなども整理整頓しファイルなどがすぐに見つかるようにしておくといいだろう。
5.自分の「ピークタイム」を把握する
「ピークタイム」とは、自分の脳や体の働きが1日のうちで最も活性化される時間帯のこと。「ピークタイム」は、当然ながら人によって異なるため、ある人の「ピークタイム」は平日午前中昼までの数時間であったり別の人は夜中午前3時からだったりする。自分の「ピークタイム」を把握し難しいタスクをその時間に充てることで、タスクをクリアする可能性を上げ成果を出すことが期待できるのだ。
タイムマネジメントに便利なツール3選
最後にタイムマネジメントツールを3つ紹介する。
Backlog
契約者数が1万を超える国産のタイムマネジメントツール。「誰が」「何を」「いつまでに」するのか設定でき、タスク管理が非常に簡単にできる。カンバンやガントチャートなどでプロジェクト管理も可能だ。Windows、MaCOSに加え各種のスマートフォンにも対応している。
Clock it!
タスク管理とタイムマネジメントを同時に行えるタイムマネジメントツール。リストアップしたタスクに関して「作業にかかった時間」と「実際にかかった工数」をストップウォッチで計測できる。またタスクに見積時間を登録でき、タスクの進捗状況から推定残り作業時間を割り出す機能も付いている点は魅力だ。
Trello
コラボレーション、プロジェクト管理に強いタイムマネジメントツール。チームメンバーのタイムマネジメントをする際に効果を発揮する。非常に分かりやすいユーザーインターフェースで初めての人でもすぐに利用できる点はメリットだ。
適切なタイムマネジメントで生産性の向上を
適切なタイムマネジメントの実施は従業員の生産性を向上させ、モラルとモチベーションを高めることにつながるだろう。特に上述したようなリモートワークや在宅ワークの環境下においてはより効果が期待できる。
新型コロナウィルスのパンデミック収束後もこうしたワークスタイルがある程度一般化していく可能性は高い。タイムマネジメントも同様にある程度一般的になってくることが予測できる。
・1日24時間をどう使い、何のバリューを生み出すのか
・どのような戦略的および戦術的目標を設定し、実現させるのか
今一度、考えてみよう。
文・前田健二(ダリコーポレーション ライター)