アパホテルが黒字維持 コロナ禍でも赤字転落しなかった秘策とは?
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大で大ダメージを受けている業種の一つが宿泊業だ。赤字転落だけではなく、経営破綻も目立つ。しかし、そのような中でも黒字を維持しているホテルチェーンがある。アパホテルだ。なぜこの苦境の中でも利益を確保できているのか、謎に迫る。

アパグループの最新の決算概要

ビジネスホテルのアパホテルを展開しているのは、アパグループだ。ホテル展開数は2021年2月時点で662ホテル(10万2,393室)に上り、ビジネスホテル業界で屈指の売上高を誇る企業として知られている。

そのアパグループが2021年2月に発表した2020年11月期連結決算(2019年12月〜2020年11月)の結果が、いい意味で波紋を呼んだ。ビジネスホテルを展開する企業がコロナ禍で厳しい状況におかれている中、収益は大きく落としたものの黒字を確保できたのだ。

具体的に決算の中身をみていこう。売上高は、前期比34.1%減の904億3,200万円と落ち込み、営業利益は同94.3%減の20億4,400万円、経常利益は同97.0%減の10億900万円、当期純利益は同95.5%減の9億4,900万円と大幅に下落した。

<アパグループの2020年11月期連結決算>

アパホテルが黒字維持 コロナ禍でも赤字転落しなかった秘策とは?
※出典:アパグループ・プレスリリース

このように、営業利益と経常利益、当期純利益は大幅に下落したが、黒字に踏みとどまったことがポイントだ。ここで本題に戻るが、なぜアパグループはコロナ禍でも赤字に転落せずに済んだのか。

なぜアパホテルは黒字を確保できたのか?

アパグループは上場企業ではない。そのため今回の決算発表資料においては、数字以外のことについてはあまり詳しくは示されていないが、売上高が落ちた理由と黒字を確保できた理由について、次のような短い文章で説明されている。

「中核事業であるホテル事業では稼働率、宿泊単価とも大幅に低下し、大幅な減収となった」「一方、業務の見直しや自社サイトへの誘導を進めてコスト削減に努めたことなどで、厳しい経営環境の中でも黒字を確保することができた」

この文章で特に注目したい点は、「自社サイトへの誘導」によるコスト減が、黒字確保に大きくつながったということだろう。

「自社サイトへの誘導」によるコスト減

アパグループは「アパ直」の通称で呼ばれる自社予約サイトを展開している。そして、どのホテル予約サイトからアパホテルを予約するよりも、アパ直で予約した方が宿泊料金は安くなるよう設定されている。その結果、自社サイトで直接予約をしてくれる宿泊客が増えた。

これは、アパホテルのコスト減に大きく結びつく。ホテル予約サイト経由での予約では、予約サイト側に10〜20%程度の手数料を支払わなくてはならないが、直接予約だとそれらの手数料負担が無くなり利益率が高くなる。

しかもアパ直の公式サイトは、予約を受け付けるただの「窓口」として機能しているわけではない。アパホテル100カ所以上に泊まり放題になるマンスリープランや、テレワークを応援する日帰りプランなども展開されており、お得な情報が多数掲載されている。

こうしたお得な情報が付加価値となり、自社サイトへの誘導に成功している。割安プランとして「コロナに負けるなキャンペーン」を実施したことも大きかった。

土地や建物を自社所有、ブランドも自社展開

自社サイトへの誘導によるコスト減だけが、黒字確保に寄与したわけではない。

アパホテルではホテル施設の土地や建物を所有しているため、家賃の支払いが不要だ。また、自社ブランドで展開しているため、ブランドのロイヤリティを他社に支払う必要もない。このように経費負担がないことも高い収益力につながっており、売上が大幅に落ちても黒字を確保できた。

2025年3月末までには15万室展開を目指す

アパホテルは今年の5月10日で創業50周年を迎えたが、創業以来一度も赤字を出したことがない。この記録はコロナ禍においても続くこととなった。日本で感染拡大がなかなか収束しない中、今期2021年11月期も黒字確保ができるか、関心が集まる。

ちなみにアパグループは攻めの姿勢を崩さずに新規ホテルの開業を続け、ここまで大きなホテルチェーンへと成長したわけだが、コロナ禍においてもその勢いは衰えていない。東京都台東区での新規ホテルの起工、大阪・心斎橋駅前での新規開業など…、攻めの発表ばかりだ。

アパグループは今期2021年11月期は、24棟5,007室の開業を予定し、2025年3月末までには15万室展開を目指すという。ビジネスホテルチェーンとしての存在感が、ますます高まっていきそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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