商品先物取引法に明記されている大きく2つの認可要件は、ともにクリアしていると思しいことが分かった。だが要件がいずれも明確なものでないことから、「どうとでも解釈が可能」になってしまうこともまた事実。そこで最後に、「もう一つの要件」が浮上して来ることになる。「認可・不認可の判断を下す側の“立場”の問題」だ。
実例をあげよう。本連載で何度も指摘している通り、試験上場の申請に対して農林水産省は、2006年(平成18年)に史上初めて「不認可」の判断を下し、2011年(平成23年)には「認可」の判断を下した。この差はどこにあったのか。判断の主体は、制度上はもちろん監督官庁の長、つまり時の農相だが、後に取材したところによると実質的な判断主体は担当部局の局長なのだそうだ。
ところが偶然ながら2006年も2011年も、先物担当部局と現物担当部局は同じ「総合食料局」で、人(局長)以外に違いがない(ちなみに現在は食料産業局が先物、政策統括官が現物と担当が分離している)。2006年と2011年の判断の違いは、公式には「政策との整合性」の箇所だとされている。
▽2006年
「米の先物市場の開設は、価格維持を目的とした生産調整への参加を要件とした施策の実施により、生産調整への参加を半強制的に誘導している当時の政策との整合性が保てない」→不認可
▽2011年
「米政策については、価格政策から所得政策に移行し、戸別所得補償に抜本的に転換。米の需給調整については、メリット措置により生産者の経営判断による選択を期す等、大きく転換」→認可
一見、筋が通っているように見えるが、2006年「不認可」と2011年「認可」の差は、もう一つある。政権政党の違いである。あえて指摘すれば、2006年の自公連立政権は「不認可」判断を下し、2011年の民主党政権は「認可」判断を下した。2013年(平成25年)以降に延長申請を認可し続けているのも自公連立政権ではあるが、一度下野して復活した政権を下野前と同一視はできまい。また公式な「政策との整合性」の箇所からしても、戸別所得補償こそ縮小されたものの、政権交代以降も所得支持政策そのものは継続していたから、客観的判断として廃止(延長申請を不認可)させるわけにはいかなかった事情もある。
何を言いたいかというと、政権与党の意向が最大の要件であって、上記の公式要件に対する判断、解釈は、“後づけ”に過ぎないのではないか、との疑問だ。簡単に言えば、実質的な判断主体である担当部局長が、何らかの圧力によって判断を左右されたのではないか――2006年に総合食料局長だった岡島正明氏も、直前回2019年(令和元年)に食料産業局長だった塩川白良氏も、本紙の取材に対し、「圧力」の存在を明確に否定している。しかし現実に2017年(平成29年)、当時の自民党の横槍によって本上場申請を“表向き自主的に”取り下げ、試験上場の延長申請を出し直させられたという“実績”がある。第3の要件を「政権政党の意向」と仮定して、次回その背景を探る。