2021年の偏光板世界生産量は前年比8.3%増の6.2億㎡とプラス成長を予測
~2021年もディスプレイパネル需要は高止まりしており、偏光板の供給状況はタイトでほとんど全ての偏光板メーカーはフル生産の体制が続き、TV以外の用途向け偏光板市場も大きく拡大の見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2021年の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、将来展望を明らかにした。
偏光板の世界生産量推移・予測
1.市場概況
2020年の偏光板の世界生産量は前年比104.7%の5億7,390万㎡、LCDモード別では、LCD-TFT向け(AMOLED向け、PM-VA向け偏光板を含む)が全体生産量のうち98.8%を占めたと推計する。
2020年初頭には、新型コロナウイルスの影響でTV(本体)の販売減少からTVパネル市場全体の縮小が懸念され、偏光板世界市場は不況が予測されたが、状況は一転し在庫不足が懸念されるほど出荷量は絶好調となった。世界的な新型コロナウイルス感染拡大を背景に、家庭内でのTVや電子デバイス機器への巣ごもり需要拡大がディスプレイパネル市場に特需をもたらし、連動する形で偏光板・部材フィルム世界市場も大きく拡大した。
2.注目トピック
位相差フィルムの動向
2020年初頭に新型コロナウイルスの影響で中国をはじめとするアジア地域において、電子関連製品の生産が中断し、電子関連製品への消費が減少すると予想されたたため、偏光板・部材フィルム世界市場の縮小が懸念された。ところが、2020年下期からは業界の予想とは大きく異なる形で偏光板の生産量は好調が続いている。これは、セット(製品)やディスプレイパネルのメーカーサイドでの安全在庫の確保や、高騰するパネル単価を見据えての前倒し購入が重なったためであり、偏光板市場はディスプレイパネル向けに必要な実需要量以上に出荷量が拡大し、大型ディスプレイ向けを中心に主要部材フィルムの供給もタイトな状況が続いている。
2021年に入ってもこうした状況に変化はなく、ほとんど全ての偏光板メーカーはフル生産体制が続き、なかでも中国VAモードTVパネル陣営向けの受注対応に偏光板メーカーは追われている。中国VAモードTVパネル陣営の先頭にいるのはCSOTであるが、2020年よりHKC、CEC-Panda、CHOT、SHARP等他メーカーのTVパネルの生産台数が大きく増加している。その他、2020年下期から台湾のAUO、Innoluxの生産台数も拡大したほか、パネル生産中止を予定していたSDCも市場の好調ぶりに2021年に入ってからもLCDパネル生産を続けているため、VAモードのTVパネルメーカーからの受注は増加し、VA向け位相差フィルムのニーズは急増する一方である。
一方、大型IPSモードの位相差フィルム市場は、主にBOE、LGD、HKCが展開するLCD-TVやコンピュータモニター等の生産台数により、マーケットが大きく左右されている。近年では、コロナ禍での在宅勤務やリモートワークなど家庭内での電子デバイス機器の使用機会が拡大したことで、ディスプレイ全般への需要が好調であったため、IPSモードTVやモニター用パネルの生産も拡大傾向にある。
3.将来展望
2021年における偏光板の世界生産量は、前年比108.3%の6億2,170万㎡となると予測する。2021年もディスプレイパネル需要は高止まりしており、偏光板の供給状況はタイトでほとんど全ての偏光板メーカーはフル生産の体制が続いている。
但し、2021年下期からの需要の見通しについては、①ドライバーICやガラス不足によるディスプレイパネルの在庫不足を回避するための生産制限及び生産品目の調整、②セット(製品)・ディスプレイパネル側での在庫状況、③ディスプレイパネル市場の特需期間(2021年は続く見通し)、等の不確定要素が残る。
偏光板市場における新しい動向としては、TV以外の用途向け偏光板市場も大きく拡大していることが挙げられる。コロナ禍を背景に、これまで縮小傾向にあったモニターやノートブックPCなどのIT系パネルやタブレットPC向けのディスプレイパネル市場が2020年より急拡大している。こうした動きは大型化かつ高品質化しており、リモートワーク用及びゲーミングPC向けモニター等のIT系パネルの需要拡大が2021年以降も続くとみられ、これらのTV以外の用途向け偏光板市場は今後高付加価値ビジネスとして新たなポジションを確立していく可能性がある。
※注.2020年以降、偏光板世界市場はディスプレイパネル向けに必要な実需要量以上に規模が拡大している。その背景には、セット(製品)メーカーやディスプレイパネルメーカー側での在庫確保や、高騰するパネル単価を見据えての前倒し購入の他、在庫不足回避のためのダブルオーダー等がある。本調査では偏光板・部材フィルム関連メーカーの実際の出荷量をベースに偏光板世界出荷量を算出しているため、セット(製品)に実際に搭載されるパネル面積とは差が発生している。
調査要綱
1.調査期間: 2021年2月~4月 2.調査対象: 偏光板メーカー、位相差フィルムメーカー、PVA保護フィルムメーカー、表面処理フィルムメーカー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用 |
<偏光板市場とは> 偏光板とは、特定方向に偏光又は偏波した光だけに限って通過させる板であり、ディスプレイ向けに使用される偏光フィルムをさす。偏光板は全てのディスプレイに使用される主要部材であるため、ディスプレイ市場が拡大していくに伴い偏光板市場も成長していく。本調査における偏光板市場とは、TFT-LCDパネル向け偏光板、AMOLEDパネル向け、PM-VA向けのほか、TN-LCD向け、STN-LCD向け(その他に分類)を加えて、メーカー生産量(万㎡)ベースで算出した。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 偏光板、主要部材フィルム(位相差フィルム、PVA保護フィルム[保護側:Outer側]、表面処理フィルム等) |
出典資料について
資料名 | 2021年版 偏光板及び部材フィルム市場 Annual Report |
発刊日 | 2021年04月30日 |
体裁 | A4 368ページ |
定価 | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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