〈輸入品は先高により相場好転、もう一段高をうかがう〉
4月の鶏肉需給は、3月後半に2回目の緊急事態宣言が解除されたが、まん延防止等重点措置(まん防)により引き続き外食自粛傾向となり、内食需要に支えられた。ただし2020年の1回目の緊急事態宣言下のような食肉をはじめとした食品の買いだめは控えられたこともあり、国産生鮮相場ではモモはジリ下げ展開となった。
ムネは量販店需要に加え、安定した加工筋からの引き合いに支えられ強もちあいとなった。結果、国産生鮮全体では高水準が維持された。例年モモは年末年始を頂点に需要が緩み相場も下降するが、ことしはジリ下げではあるもののほぼ横ばいで推移している。ムネも例年は春先に一度緩み、夏場に向けて締まる展開になるが、2020年秋以降は300円を超える高水準を維持している。
一方で輸入品は宣言の解除も、まん防により外食自粛が続き、末端需要の回復に至っていない状況。それでも現地ブラジルでは先々のオファーが強気で、先高となったことから、3月後半から安値玉を探す動きとなり、仲間相場は底値を脱し上昇した。実需自体は回復しているとは言えないが、今後も一定の引き合いが見込まれ、かつ主要輸入先のブラジルでのコスト高もあり相場は横ばいもしくは、一段高が見込まれる。
4月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが677円(前年582円)、ムネは305円(241円)と正肉合計982円となり、前月に続き1,000円の大台を下回ったが、依然として昨対を159円上回っている。前月比ではモモは14円安、ムネは2円高となった。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、5月の生体処理羽数は前年同月比2.5%増、処理重量は2.2%増と引き続き増加基調と見通しており、6月も増加基調を保つと予測している。
地区別の5月の処理羽数・重量は、北海道・東北地区(北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)では3.4%増・2.9%増、南九州(宮崎、鹿児島、沖縄)は2.8%増・2.8%増と主要産地を中心に3%前後の増加を見込んでいる。農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、5月の国産生産量は13.9万tと前年同月比1.7%増を見込み、前月比では500t程度の減少を見込む。それでも3〜5月の3カ月平均予測では3月の増加もあり、1.3%増の14万tと予測している。
輸入品は、4月はタイと米国からの輸入量は増えるが、ブラジルは減少見込みのため、4.7%減の4.5万tの見通し。5月は前年同月の輸入量が流通の遅延などにより少なかった反動で、前年同月を大幅に上回る26.8%増の4.6万tを見込む。3カ月予測では、5月の大幅増加を受け6.2%増の4.6万tを予測している。
〈需要見通し〉
国産生鮮は、東京などでの3回目の緊急事態宣言が月末まで延長されたことで、引き続き内食需要に支えられる。ただし昨年ほど巣ごもり・買いだめ需要は強くなく、生産体制も盤石なこともあり、生鮮モモの引き合いは弱まりつつある。ムネも量販店・加工筋からの一定の引き合いは続くが、引き合いは落ち着いていくだろう。
コロナ禍での高水準相場ではあるが、モモは一段下げ、ムネはもちあいで推移するとみられる。輸入品の実需は回復していないが、現地のコスト高から相場は一段高を伺う状況。輸入量は国別では増減があるものの、今後も安定した数量が維持されるとみられる。
〈価格見通し〉
5月の国産生鮮モモは需要が緩みジリ下げ、ムネは引き合いこそ落ち着くが一定需要が見込まれもちあいと予測する。日経加重平均ではモモが660円前後、ムネは305円前後と予測する。農水省市況ではモモが680円前後、ムネが320円前後と見込まれる。
〈畜産日報2021年5月11日付〉