IT業界は海外委託でコスト削減か オフショアのビジネスにおける使われ方を解説
(画像=NicoElNino/stock.adobe.com)

オフショアという言葉は、使われる分野によって、少しずつ意味が異なっている。そのため、どういう意味なのか混乱したり、誤用していないか気になったりする人も多いだろう。

この記事では、オフショアとは何を意味するのか、金融・ITなどのビジネスシーン別に紹介していく。

目次

  1. オフショアとは?
  2. ビジネスにおけるオフショアの意味
    1. 新興国や発展途上国を意味するオフショア
    2. 金融業界のオフショア
    3. IT業界のオフショア
  3. オフショアの関連用語3つ
    1. 関連用語1.オフショアリング
    2. 関連用語2.オフショアマーケット
    3. 関連用語3.オフショア開発
  4. オフショアとオンショア・ニアショアの違い
    1. オフショアとオンショアの違い
    2. オフショアとニアショアの違い
  5. オフショアの意味や使い方に迷ったら?

オフショアとは?

オフショアの意味は、「オフ」と「ショア」に分けると理解しやすい。オフ(off)は「~から離れて」という意味で、ショア(shore)は海や湖、沼などの岸という意味だ。

つまり、オフショアの意味は「岸から離れて」と考えられる。

そのため、海に出て釣りをすることをオフショアといったり、サーフィンで岸から海に向かって吹く風をオフショアと呼んだりする。

最近はビジネスシーンで用いられることも増えてきた。

ビジネスにおけるオフショアの意味

ビジネスシーンにおいてオフショアは、海外や海外市場という意味で使われることが多い。「ショア」の意味する海岸を国の境界線として解釈すれば納得がいくだろう。

新興国や発展途上国を意味するオフショア

オフショアは、特に新興国や発展途上国をさして使われることが多い。たとえば、自社の業務を海外に委託するシーンなどで、オフショアという言葉が使われる。

現在、コスト削減の観点から、一部の業務を海外に委託する動きが活発化している。委託される業務には、コールセンター業務やバックオフィス業務などがある。

今後、オフショアという言葉を耳にしたり使ったりする機会は、増えていくかもしれない。

金融業界のオフショア

金融業界でオフショアというときは、一般的なビジネスシーンと異なるため、注意が必要だ。金融業界では、自国以外の金融市場や、自国以外で行われる金融取引をオフショアという。

たとえば、日本国内から日本の投資先に投資する場合や、日本国内から海外の投資先に投資する場合などは、オフショアには該当しない。海外から海外の投資先に投資する場合は、オフショアに該当する。

オフショアは、タックスヘイブン(租税回避地)で行われるケースがある。タックスヘイブンとは、外国人や外国企業に対する税率が極端に低く設定された地域さす。

経済の国際化が急速に進む中、もともと基幹産業のない国や地域が外国企業や富裕層を誘致し、経済を活性化するために税制上の優遇措置を提供しているのだ。

IT業界のオフショア

IT業界では、システムの開発業務を海外企業や海外の現地法人(子会社)に委託する際に、オフショアという言葉が用いられる。一般的なビジネスシーンでの使われ方とほぼ同じといえるだろう。

IT業界でオフショアが行われるのは、開発コスト削減のためだ。ベトナムやインドネシアなどの発展途上国は、労働力が豊富で人件費が安い。現地のエンジニアに開発を委託することで、大幅に開発コストを下げられる可能性がある。

しかし、コミュニケーションがうまくいかず、開発に遅れが生じたり、品質に問題点が見つかったり、契約上のトラブルに発展するケースも少なくない。

このような課題をふまえ、発展途上国だけを委託先として選択するのではなく、世界中から最適な委託先を探す「グローバル・ソーシング」の考え方も広まりつつある。

また、発展途上国の経済成長にともない人件費の水準が上がり、IT業界におけるオフショアのメリットが薄くなっているという。さらに、下請け開発を担う発展途上国のエンジニアが、やりがいを失うといった問題点も指摘されている。

しかし、経済成長で人件費の水準が上がることは、市場としての魅力が増すことでもある。もともとはオフショアで、日本国内向けサービスの開発を発展途上国に委託していた企業が、現地向けサービスの開発に舵を切った事例も登場し始めた。

このような動きが活発化することで、現地エンジニアの技術力・接客力も向上していく可能性がある。これからの時代は、コスト削減にとらわれず、海外市場の可能性を見いだしていく姿勢が求められているのかもしれない。

オフショアの関連用語3つ

オフショアをベースとした関連用語がいくつかある。オフショアに対する理解を深めるために、関連用語の意味も確認してみよう。

関連用語1.オフショアリング

一般的なビジネスシーンで使われるオフショアの関連用語にオフショアリングがある。

オフショアリングの意味は、業務の一部もしくは全部を海外に委託することだ。アウトソーシングの中でも、特に海外を対象としたものに関して、オフショアリングという表現が用いられる。

オフショアリングが活発化する背景には、インターネットの普及によって、リアルタイムでコミュニケーションをとりやすくなったことがある。時差を利用することで、昼夜を問わず稼働できる体制も実現可能だ。うまくいけば生産性向上や業務効率化も期待できる。

オフショアリングの使用例は下記通りだ。

・当社もオフショアリングを検討している
・バックオフィス業務については、オフショアリングを進めていかなければならない

関連用語2.オフショアマーケット

オフショアマーケットは、税制面で優遇されている国際金融市場であり、自由で活発な取引を目的として設立されている。種類は、内外一体型・内外分離型・タックスヘイブン型の3つだ。

租税回避を目的としてペーパーカンパニーを設立するのは、タックスヘイブン型の方法だ。オフショアマーケットのすべてが、租税回避を目的としているわけではない。

オフショアマーケットは、アメリカやシンガポール、香港、マレーシアなどさまざまな国・地域で開設されている。

日本でも金融の自由化・国際化のため、東京オフショア市場が開設された。東京オフショア市場は、内外分離型であり、財務大臣の承認を得て取引を行う必要がある。

オフショアマーケットの使用例は下記の通りだ。

・オフショアマーケットの概要を学んでいる
・新しくオフショアマーケットが生まれた

関連用語3.オフショア開発

IT業界では、オフショア開発という言葉が使われる。オフショア開発とは、開発を海外に委託することだ。

現地でのコミュニケーションを円滑に行い、しっかりと意思疎通することが重要だ。国内と現地の橋渡しをする技術者は、ブリッジSEと呼ばれる。

オフショア開発の使用例は下記の通りだ。

・オフショア開発の方向性を見直さねばならない
・オフショア開発で大事なことは育成の視点だ

オフショアとオンショア・ニアショアの違い

オフショアと関連して使われる言葉に、オンショアとニアショアがある。オフショアと対比しながらそれぞれの意味を解説していく。

オフショアとオンショアの違い

オンショアとは、オフショアの対義語で「岸に接して」という意味だ。

IT業界でオンショア開発を使う場合、自国内で開発を完結させることをいう。オンショア開発のメリットには、コミュニケーションをとりやすいこと、品質を担保しやすいことなどがある。

金融業界で使われるオンショアマーケットは、取引における当事者の一方または両方が自国内の会社や投資家である市場だ。たとえば、日本国内から日本の投資先に投資する場合や、日本国内から海外の投資先に投資する場合などが該当する。

オフショアとニアショアの違い

ニアショアとは、日本国内の人件費が安い地域で業務を行うことをいう。たとえば、人件費の高い首都圏ではなく、比較的人件費の安い地方都市で人を雇い、システム開発やシステム運用を委託するといったケースをさす。

ニアショアはオンショアの中に含まれる概念に近い。金融業界で使われることはなく、主にIT業界で使われている言葉だ。

ニアショア開発は、地方活性化や国内雇用創出の観点からも注目を集めている。近年、リモートワークの普及も活発化した。ニアショア開発の動きは今後も広がっていくだろう。

オフショアの意味や使い方に迷ったら?

オフショアは、ビジネスの分野によって異なる意味を持つため、使い方に悩むかもしれない。

また、ビジネス用語に限らず、言葉の意味は使われ方とともに変化していく。今後、まったく違う分野でオフショアという言葉が使われたり、オフショアを含む新しい言葉ができたりすることもあるだろう。

もとの意味である「岸から離れて」というニュアンスを理解しておけば、分野が変わっても意味や使い方を推測できる。

悩んだときは、オフショアの原義に立ち返ってみるとよいだろう。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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