情報通信技術の急速な進化に伴い、スマホ・タブレット端末・SNS・クラウドなどが幅広く普及し、ライフスタイルやワークスタイルのさまざまな場面で大きな変化が見られている。

しかし、情報通信技術の進化が社会に多くのインパクトを与えている一方で、デジタル化の流れに取り残されている情報弱者も存在する。情報格差を意味するデジタル・デバイドの課題や発生原因、解決策について解説する。

目次

  1. デジタル・デバイドとは
    1. 情報格差の種類は主に3つ
  2. デジタル・デバイドの問題点5つ
    1. 1.教育・経済・社会における格差の拡大
    2. 2.緊急時の対応遅れや犯罪が起こるリスク
    3. 3.高齢者の孤立
    4. 4.企業における人材の不足・流出
    5. 5.グローバル化への遅れ
  3. デジタル・デバイドが発生する原因7つ
    1. 1.教育・学歴・収入の差
    2. 2.ITインフラ・IT人材不足
    3. 3.都市部と地方部の差
    4. 4.身体的・精神的な障がい
    5. 5.若年層のSNS依存とフィルターバブル
    6. 6.自分や周囲の高齢化
    7. 7.動機の希薄
  4. デジタル・デバイドの解消に関する公的機関の取組事例
    1. 総務省
    2. 東京都
    3. 愛媛県
  5. 民間企業に期待される情報格差を解消するための取り組み
    1. 1.IT業界全体の人材増加
    2. 2.ITスキル教育の推進 
    3. 3.デジタルデバイスを利用したサービスの提供
    4. 4.高齢者のICT利活用支援
    5. 5.インターネット利用目的の見直し
    6. 6.無料利用可能な端末の設置
    7. 7.国際間におけるIT交流の活発化
  6. デジタル・デバイドに関するQ&A
    1. Q1.デジタル・デバイドはいつから発生したか?
    2. Q2.デジタル・デバイドはなぜ起こるのか?
    3. Q3.デジタル・デバイドの説明は?
  7. 情報格差による課題を理解しよう
  8. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
情報弱者になるな デジタル・デバイドの原因6つと解決策5つ
(画像=sh240/stock.adobe.com)

デジタル・デバイドとは

インターネットやPCなどのICT(情報通信技術)を活用できる人とできない人の間に生まれる格差のことを、デジタル・デバイドという。「デジタル・ディバイド」と呼ばれることもある。

情報通信技術を十分に活用できない人は「情報弱者」と呼ばれ、インターネットが世界的に普及している昨今の世の中において、さまざまな場面で不利益を被ることが問題視されている。

情報格差の種類は主に3つ

デジタル・デバイドは、格差の種類を「国際間」「地域間」「個人・集団間」の3つに分けて論じられることが多い。

国際間デジタル・デバイドは、先進国と発展途上国の間に生じやすい情報格差である。インフラや国家予算だけでなく、国家間における教育の差が影響を与えているとの分析もされている。

同国内の都市部と地方部に生じる情報格差が地域間デジタル・デバイドである。ITインフラの整備が遅れている地域は、都市部との格差が発生しやすい。

個人・集団間デジタル・デバイドは、年齢・性別・学歴などの違いにより生じる情報格差である。高齢者やITC教育が不足している人は、情報弱者になりやすい。

デジタル・デバイドの問題点5つ

1.教育・経済・社会における格差の拡大

国際間や地域間のデジタル・デバイドは、教育の質に影響を与える可能性がある。ICTを活用した教育では質の高い教育を提供できるため、優秀な人材が育ちやすいだろう。

経済や社会における情報格差は、貧富の差となって表れやすい。情報化が進む現代社会では、ICTスキルに明るい人や企業ほど、収入が高くなりやすい傾向がある。同国内の貧困層や発展途上国の人々がICTに疎いままでは、貧富の差が益々広がっていくだろう。

2.緊急時の対応遅れや犯罪が起こるリスク

自然災害・疫病拡大・テロなどの緊急時には、ICTによる高い情報収集能力があれば状況を的確に判断できるため、適切な対応をとりやすい。しかし、情報弱者は自分の状況を把握しにくいことから、緊急時の対応遅れで被害を受けてしまうこともあるだろう。

また、情報弱者はITリテラシーの低さにより、インターネットを介した犯罪に遭うリスクも負っている。

例えば個人情報が流出すれば、ストーカー被害やクレジットカードの不正使用といった犯罪に巻き込まれる恐れがある。ICTにより商品やサービスを比較できないことから、高額商品を売りつける詐欺被害に遭うなどのリスクも考えられる。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから

3.高齢者の孤立

シニア層のインターネット利用者は、年を追うごとに増えてきている。ただし、多くの高齢者はITリテラシーが低いため、膨大な情報量から信頼性の高い情報を選択することが困難である。

また、地方に住む高齢者の中にはいまだにIT端末を所有していない人も多い。インフラが整備されておらず、使いたくても使えない現状を反映している。

SNSの普及で常に誰かとつながっている環境を構築しやすい年齢層との距離を感じやすく、孤立感を強める高齢者も少なくないだろう。高齢化社会における高齢者へのIT支援が遅々として進まないことも、デジタル・デバイドが抱える大きな課題である。

4.企業における人材の不足・流出

発展途上国のITインフラを整備したり、高齢者向けのIT支援を促進したりするためには、企業支援が不可欠である。しかし、IT分野では、業界全体にわたり慢性的な人材不足が続いている。

希少なIT人材の国外への流出も、デジタル・デバイドが抱える問題点の一つである。優秀な人材はIT分野が発展した国へ流れやすいため、一部の国のみIT化が進み、より格差が広がる原因となっている。

5.グローバル化への遅れ

国際間デジタル・デバイドにより情報技術分野で後れをとっている国は、グローバル化の波に乗れず、国際競争力が低下する恐れがある。

テクノロジー・教育・労働・政治・観光など、さまざまな面において情報格差が発生することにより、国際経済や国際社会が抱える大きな問題へ発展することもあるだろう。

これらの国では、国際機関などと連携し、ブロードバンド計画や国際競争力の強化など、国家としての政策目標が掲げられているケースが多い。

デジタル・デバイドが発生する原因7つ

デジタル・デバイドの問題を解決するには、なぜデジタル・デバイドが発生するのか原因を知っておくことも大切だ。ここでは、主な原因を7つ紹介していく。

1.教育・学歴・収入の差

学歴が高いほど高収入を得やすく、収入が高ければICT端末を入手しやすいことを考えれば、学歴や収入の差がデジタル・デバイドを生む一つの原因になり得るといえる。

また、一般的に、教育水準が高いほどインターネット利用率は高くなる。所得水準が高くても教育水準が低ければ、情報弱者になる可能性は高い。

国によっては、これらの差に加え、人種間の格差がデジタル・デバイドの原因になることもある。

2.ITインフラ・IT人材不足

インフラ整備が遅れている国や地方部では、財政難などの理由から十分な通信環境が整っていないため、端末を持っていても有効活用できない状態が続いている。

発展途上国や地方部でIT人材が不足している場合は、予算があってもシステム開発できないケースが考えられる。

3.都市部と地方部の差

離島や山間部などの地方部には、地形的な理由から、インフラ整備に余計なコストがかかりやすいという課題がある。

たとえインフラを整備できたとしても、トラブル発生時の対応に時間的・金銭的なコストが発生しやすいため、都市部に比べどうしてもハンデを背負ってしまうことになる。

4.身体的・精神的な障がい

日本の身体・知的・精神障がい者は、人口のおよそ8%を占めることが、内閣府の調査で公表されている。これらの人たちは取得できる情報が少なくなってしまうため、デジタル・デバイドが発生しやすい。

5.若年層のSNS依存とフィルターバブル

現代は、情報チェックもスマホ一つでいつでもどこでもできるようになった。特にSNSの進化によって生の情報を発信したり、チェックしたりと常にスマホ片手にSNSをチェックしている若者も多い。ただSNSに依存するあまりTVのニュースや新聞などの情報ではなく自分の望む情報ばかりをより分ける「フィルターバブル」が起こっている。

本来、デジタル・デバイドは、情報を得られない(得るのが難しい)ことによって発生するが、あえて多くの情報を得ないこともデジタル・デバイドの原因といえるだろう。

6.自分や周囲の高齢化

ネット環境下があればどこでも情報を収集できるスマホやタブレット端末は、現在の情報化社会において欠かせないツールといえる。しかし、高齢になるほど携帯端末の普及率は低くなっているのが現状である。

また、地方部など周囲に高齢者が多い状況では、インフラ整備が後回しにされやすいため、自分自身の意識が高くても環境が追い付いてくれないケースも考えられるだろう。

7.動機の希薄

デジタル・デバイドは、物質的な問題だけではない。これは、特に高齢者に多いことである。しかし情報通信機器を利用していない高齢者の約半数は「自分の生活には必要ない」「そもそも興味がない」と動機のなさが内閣府の調査でわかっている。

動機がなければスマホやタブレット端末を入手できたりインフラが整っている環境があったりしてもデジタル・デバイドは生じてしまうのだ。

デジタル・デバイドの解消に関する公的機関の取組事例

ここからは、デジタル・デバイドの解消に向けた公的機関の取り組み事例を紹介しよう。

総務省

総務省では、情報格差解消への取り組みとして、「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発(情報通信利用促進支援事業費補助金)」を実施している。事業内容は、高齢者や障がい者を含め、誰もがICT(情報通信技術)機器による恩恵を享受できる通信・放送サービス充実に向けた研究・開発を行う民間企業に対し研究開発資金の一部を補助するというものである。

採択には公募制が採用されており、2017年度から毎年数件の企業が採択されている。2022年度の公募期間は、2022年4月1日(金)~同年5月20日(金)までだ。毎年同時期に1ヵ月間程度の公募期間があるため、応募したい企業は、対象となる研究開発や応募要項、期間などをチェックしておこう。

総務省|高齢者・障害者向けの新たなICT機器・サービスの研究開発に対する補助金「デジタル・ディバイド解消に向けた技術等研究開発」対象事業の公募

東京都

東京都では、デジタル・デバイドの是正に向けた取り組みとして「東京デジタルフォローアップ官民連携連絡会」や「高齢者向けスマートフォン利用普及啓発事業」などを実施している。

・東京デジタルフォローアップ官民連携連絡会

都と会員企業(団体)で都事業や国内外先進事例の共有、官民連携事業の推進、意見交換などを行うものだ。2022年5月27日現在、18企業(団体)が会員となっている。NTTやKDDI、シャープなどの大企業も会員リストに名を連ねている。デジタル・デバイドの是正に関する取り組みなどの活動をしている(活動を予定している)企業や団体であれば対象だ。

随時会員企業の募集もしているため、関心がある場合は応募してみるといいだろう。

・高齢者向けスマートフォン利用普及啓発事業

行政手続きやサービス利用のオンライン化が進む昨今においてスマートフォンを活用できるように、スマートフォン体験会や相談会を実施。「脳にいいアプリ」の紹介、利用体験なども推進している。

愛媛県

愛媛県では、2020年10月から楽天モバイルと協働し地域課題に沿った講座内容でスマホ教室を県内の各地で開催。コロナ禍初期のスタートとなるため、スマートフォンの基本的な機能の説明に加え、以下のようなインストールのサポートおよびアプリの使用方法の説明なども行っている。

  • 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)
  • 防災情報や避難ルートを視覚的に確認できる愛媛県公式アプリ(ひめシェルター)など

またスマートフォンをより身近に利用してもらえるようにフリマアプリによる出品教室なども実施。参加者からは「スマホの使い方に慣れて、これを生活の一部にしていきたいと思った」といった声もあるようだ。愛媛県では、毎年2~3月にかけて企画提案の募集をしている。関心がある人は、応募資格などをチェックしてはいかがだろうか。

民間企業に期待される情報格差を解消するための取り組み

公的機関との協働はもちろん民間企業独自でもデジタル・デバイド解消に向けた取り組みはできるはずだ。最後に民間企業に期待したい取り組みを紹介しよう。

1.IT業界全体の人材増加

デジタル・デバイドの解消には、IT業界全体の人材を増やすことが大きな課題の一つである。まずは先進国や都市部で人材を育成し、発展途上国や地方部に人材を派遣する方法が、現実的に実行可能な対策として考えられるだろう。
IT後進地域でスクールなどを設立すれば、現地で人材を育成することも可能となる。インフラの整備が進むことや、後進地域への企業進出が活発になることが期待できる。

2.ITスキル教育の推進 

外部のIT専門家に頼るだけでなく自社内でITスキルに長けた人材を育てることも大切だろう。例えばITツールの使い方やセキュリティリスクといったITに関する知識は、デジタル社会で企業存続していくためにも必要不可欠である。そのためには、自社社員のITスキルを養ったり高めたりするための教育も大切だ。

ITスキルの研修会やITスキルに関する資格取得を推奨するような福利厚生を取り入れるのもいいだろう。

3.デジタルデバイスを利用したサービスの提供

先にフリマアプリの出品教室などでスマホ利用に興味を持たせる愛媛県の事例を紹介したが、実際に体験してみることでICT利活用に興味を持つ人は多いはずだ。実際に複数の民間企業が協働して「スマートフォン体験ツアー」や「目的別講座」を展開している事例もある。コロナ禍で自宅からオンラインで料理教室や音楽教室などの展開を始めた人も少なくない。

しかし既存の民間サービスとデジタルを組み合わせた体験型のイベント・サービスの提供が増えることが期待される。通信技術に関する専門知識はなくても「ICT機器を使っていかに自社のサービスを多くの人に利用してもらえるか」といったアイデアは考えられるのではないだろうか。

4.高齢者のICT利活用支援

高齢化社会においては、高齢者のICT利活用支援も重要な対策である。高齢者向けのスクールを増やしたり、高齢者でも使いやすい端末の開発を進めたりすることで、年齢によるハードルを下げられることが期待されている。

5.インターネット利用目的の見直し

デジタル・デバイドは決して人ごとではなく、誰の身にも起こり得ることである。インターネットを趣味や連絡手段のためだけに使い続けていると、いつの間にか周囲や社会との格差が生まれているという状況にも陥りかねない。何のためにインターネットを利用しているのかということを見直し、デジタル・デバイドが引き起こす身近な問題から関心を持ってみることも重要である。

6.無料利用可能な端末の設置

収入が低い世帯や未成年者は端末を手に入れにくいため、情報弱者になりやすい傾向がある。このような人たちのために、無料で使える情報端末を各店舗に設置すれば、機会が少ないことによる情報格差は生まれにくくなるだろう。

7.国際間におけるIT交流の活発化

国際間デジタル・デバイドを解消するには、発展途上国と先進国の間でIT人材の交流を活発に行う必要があるだろう。IT分野が未開の地でインフラ整備を先行投資すれば、現地でビジネスが拡大し、大きな見返りを受けられる可能性も秘めている。

デジタル・デバイドに関するQ&A

Q1.デジタル・デバイドはいつから発生したか?

A.「デジタル・デバイド」という言葉が初めて公式に使われたのは、1996年、当時米国副大統領だったアル・ゴア氏の演説だといわれている。その後2000年7月に開催された九州・沖縄サミットで採択されたIT憲章のなかで「デジタル・ディバイドの解消に向けた取組について各国首脳が共通の認識を持って取り組んでいく」とされた。

日本では、2007年10月から「デジタル・ディバイド解消戦略会議」を開催し、以後さまざまな取り組みを続けている。

Q2.デジタル・デバイドはなぜ起こるのか?

A.デジタル・デバイドは、さまざまな要因によって起こり得る。例えば教育および学歴、ひいては収入の格差。また国や地域によっては、ITインフラが整備されていなかったり、IT人材が不足していたりで世界のなかで後れを取っているところもある。

逆に発達した通信環境にあったり機器を購入できる経済的な余裕があったりしても動機のなさによってデジタル・デバイドが生じることもあるだろう。

Q3.デジタル・デバイドの説明は?

A.デジタル・デバイドは、インターネットやPCなどICT(情報通信技術)を活用できる人とできない人の間に生まれる格差のことをいう。情報通信技術を十分に活用できない人は「情報弱者」と呼ばれ、世界的にデジタル社会が進行する状況のなか、さまざまな場面で不利益を被ることが問題視されている。

なおデジタル・デバイドは、格差の種類を「国際間」「地域間」「個人・集団間」の3つに分けて論じられることが多い。

情報格差による課題を理解しよう

デジタル・デバイドとは、「国際間」「地域間」「個人・集団間」における情報格差のことである。さまざまな理由で発生し、多くの課題をもたらしている。企業にとって、デジタル・デバイドはビジネスチャンスにもなり得るため、公的機関の取り組みや、情報技術の普及率が低い国や地方部へのアンテナを常に張っておくことが重要である。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから

文・金城 寛人(中小企業診断士)

無料会員登録はこちら