創業融資,審査に落ちる,成功ポイント
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

お得な公的融資を受けることができれば、まとまった資金が調達できます。

返済計画も立てやすく、安心して事業をスタートすることができます。

創業融資の審査で落ちることがないよう、万全の準備を整えたいものです。

反面教師としての審査に落ちる6つの特徴や、そんな特徴を克服できる成功のポイントについて、解説します。

お得な創業融資

会社設立時の課題として挙げられる資金調達では、公的な創業融資を利用することが得策です。

創業融資にはどのようなものがあるか、確認しましょう。

創業時の資金調達法

設立時の資金が自己資金だけで賄える場合は少ないでしょう。

良いアイデアや経験、人脈などがあっても、資金を調達しないことには、事業をスタートさせることができません。

銀行は、設立後2回目の決算が終わるまでは、通常の融資をしないことがほとんどです。

これは、実績のない設立したての会社への融資は、回収リスクが高いことが理由です。

会社設立の際に資金を調達する方法としては、出資者を募る、公的な融資を受ける、身内や知り合いなど金融機関ではない融資を受けるという3種類の方法があり、一般的に良く利用されるのが公的な融資制度です。

公的な創業融資

公的な融資には、大きく分けて、政府関連機関のひとつである日本政策金融公庫による創業融資と、地方自治体と信用保証協会を通じて金融機関から融資される制度融資の2種類があります。

・日本政策金融公庫の融資制度
公庫には、新規に開業する人のために、担保も保証もなしで長期間にわたる融資を行う制度があります。

この無担保で無保証の融資は「新創業融資制度」と呼ばれ、事業目的の運転資金や設備資金として低利で融資が行われます。

この融資は、銀行では貸し付けの対象とならない、税務申告を2期終えていない会社を対象としています。

担保も保証もなしで、約2%の固定金利で融資を受けることが可能です。

ただし、自己資金要件が設定されていて、資金総額の10%以上の自己資金を用意する必要があります。

・制度融資
都道府県や市町村など自治体が、信用保証協会、金融機関と連携して設けている融資は制度融資と呼ばれ、創業者に対しては、「創業融資」が用意されています。

公庫融資と同様、無担保・無保証で融資を受けることができます。

融資の上限は、例えば東京都では3,500万円ですが、融資枠は自治体ごとに異なります。金利は、およそ1.0~2.0%前後と低利に設定されています。

創業融資の場合では、信用保証協会が全額を保証してくれます。

制度融資を受けた場合は、銀行への利子の支払いのほか、信用保証協会への保証料の支払いが必要となります。

なお、保証料は、創業融資では優遇され、低めに設定されています。

また、地方自治体が、利用者に対する保証料や金利の一部負担を行う場合もあることから、中小企業の負担が少なくて済むことも特徴です。

この融資は、都道府県と市区町村では違いがあります。

市区町村の制度融資は、一般的に利子補給や保証料補助が手厚いものの、資金の総量に限りがあるため都道府県に比べて少なめです。

また、審査期間が余計にかかること点でも違いがあります。

借りやすい理由

日本政策金融公庫は全額政府出資の銀行であり、小口融資や創業支援を経営目標とする融資を行っています。

民間の銀行とは異なり、公的な立場で創業したばかりの会社を積極的に支援していることが、借りやすい理由です。

制度融資は、中小企業の資金調達などを支援するために設けられている公的制度です。

会社から申し込みを受けた地方自治体が、金融機関に対して制度融資のあっせんを行うもので、信用保証協会が融資の保証人となります。

自治体と保証協会の信用によって、金融機関からの融資が借りやすくなります。

信用保証協会も、法律に基づいて設置される公的機関で、中小企業や小規模事業者の金融の円滑化を目的としています。

地方自治体は、金融機関に対する預託金の提供、利用者に対する保証料や金利の一部負担を行い、中小企業を支援する仕組みとなっています。

審査に落ちる事業主の特徴6つ

創業融資,審査に落ちる,成功ポイント
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

書類を提出して融資を申し込むと、次は審査を受けることになります。

書類審査と面談が待ち構えています。

審査には基準があり、この基準をクリアできなければ、当然、融資を受けられないことになります。

審査に落ちる6つの特徴について、紹介します。

1.自己資金が計画的に準備されていない

公的な創業融資では、必要とする資金総額のうち、自己資金をどれくらい用意できるかが審査基準として設けられています。

自己資金の割合については、融資制度では10%~50%程度を求められることが多くなっています。

自己資金を調達した経緯の証明が求められ、通帳の提出や調達した経緯が詳しくチェックされます。

創業に向けて、計画的に自己資金を準備してきた努力や、資金を管理してきた金銭管理能力が評価されます。

つまり、創業は突然の思い付きではなく、計画性を持って準備してきたかどうかが問われることになります。

自己資金が足りない場合や、計画性を持って自己資金を準備してきたことの証明ができない事業主は、審査に落ちることになります。

2.経験と能力に乏しい

新たに創業する会社に対して、過去の実績を求めることはありません。

その代わり、創業する事業に関して、代表者が積んできた経験や能力が、どのように貢献するのかが審査されます。

同じ業界や業種の経験、また、これまでの職種が事業とどう関連するかなどが問われるとともに、実務家としてだけではなく、経営者としての資質や能力もチェックされます。

実務的な経験や能力に乏しく、経営者としての資質にも欠ける事業主であれば、審査で落ちます。

3.金銭的な信用がない

代表者の金銭管理能力は重要で、過去の税金やクレジットカードでの滞納など個人の信用情報がチェックされます。

過去に税金やクレジットカード、住宅ローンの滞納などがあって、金融機関のブラックリストに載っている事業主は、審査に落ちることになります。

4.事業計画が不十分

融資を受けた資金を基に、返済が可能な収益を上げて事業を継続していくためには、十分に練り上げた事業計画が不可欠です。

事業計画の妥当性については厳しく審査され、疑問点が残るような事業計画を作成する事業主であれば、審査に受かることは難しいと言えます。

5.返済が見込めない

融資を行った金融機関にとっては、融資した資金を回収することが最も重要です。

きちんと収益を上げることができるかどうか、厳しくチェックされることになります。

創業したばかりですから、過去の実績で審査することはできません。

事業計画のなかでも、売上げと利益の予想に説得力を持たせることができるか、特に、集客についての実現性や戦略、そのための市場や競合相手の分析結果について問われます。

利益を上げて返済できることが、説得力を持って説明できない事業主であれば、審査に落ちるでしょう。

6.資金の使い道が不明確

融資には、上限枠が決められています。

しかしながら、使い道も決まっていない申込みは、減額されます。

融資を申し込む際は、資金の使い道を証明するために、それぞれの業者からもらった見積書の提出も求められます。

十分な資金計画を持たないまま融資の申請をする事業主ならば、断られることは必定です。

成功のポイント

融資に落ちるポイントを裏返せば、成功のポイントになります。

弱点となりやすい部分を、どう成功に導くかについて解説します。

融資を受けられる事業計画を練り上げる

公的融資では、融資を申し込む際に、書式の決められた事業計画書を提出します。

しかしながら、この書式では、簡略な内容しか書くことができないため、十分な説明を書き記すことができません。

このため、より充実した内容の事業計画書を作成して添付することが、融資を成功させるための常套手段として用いられています。

事業計画書では、創業の動機、事業の経験、取り扱う商品やサービス、取引先と取引の条件、資金計画と調達先、事業の見通しについて、ポイントを押さえた内容に仕上げることがとても重要です。

逆の言い方をすれば、この事業計画書が理路整然と整理することができれば、審査に落ちるポイントを相当カバーできることになります。

売り上げが上がる根拠

創業融資は、税金を基にした融資です。

また、創業したばかりで実績のない会社に融資するわけですから、金融機関にしてみれば、回収リスクが高い融資をするためには、審査の基準をクリアするものでなければなりません。

特に、事業の見通しの中でも、売り上げを上げることができる根拠を、説得力を持って明確に説明できることが重要となります。

面談の心得

審査は、書類審査に加え、面談が行われます。

面談を行う目的は2つあり、信頼できる人物かどうか、また、経営者としての資質に問題がないかが問われます。

事業に関する質問への回答振りだけでなく、人としての信頼感や経験、説得力などが注目されます。

なかでも、事業をやり遂げる熱意や覚悟が試されることになります。

専門家への相談

事業計画や審査についての不安があれば、専門家に相談することも大切です。

事業の方向性や審査に向けての整理の仕方など、専門家の視点でチェックしてもらう方法もあります。

必要に応じて軌道修正を行っておけば、融資の確率も上がります。

専門家による公的な支援機関として認定支援機関があります。

主な認定支援機関としては、商工会、商工会議所などのほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが主な認定支援機関として認定されています。

事業計画の策定支援や見直しなどの経営指導や助言を受けることは、より完成度の高い事業計画書を作り上げることができるための近道となります。

ちなみに、日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金では、認定支援機関による指導と助言を受けていることが要件となっています。

まとめ

創業融資を申し込む際には、いくつかの成功のポイントがあることを紹介しました。

自己資金や経験、能力は、長い期間の中で自ら作り上げるものですから、申し込む時になって急に変えることはできません。

しかしながら、説得力がある実現性の高い事業計画を練り上げることができれば、融資を獲得することも夢ではありません。

専門家のアドバイスも受けながら、いかにポイントを押さえた、客観的に納得できる事業計画書を作成できるかが、融資だけではなく事業をも成功させるための大きなカギになると言えます。(提供:ベンチャーサポート税理士法人