食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

2021年3月9日から12日まで千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた食肉産業展では、「EU産食肉&日本食材パーフェクト・マッチセミナー」と銘打ち、トレードプロフェッショナル向けに、EU産の牛肉、豚肉、加工肉に関するセミナーが開かれた。EU産食肉の品質の高さの背景や地理的表示(GI)保護制度、安全性の取組み、日EU・EPAによる貿易メリットなどを紹介。また、業界関係者による取扱いのメリットや顧客への提案方法を紹介、さらにシェフ考案によるEU産食肉と日本食材を使用したレシピが披露された。

このうち、EU産豚肉についてはスターゼン海外本部輸入ポーク部の小池公一部長が登壇し、日本のEU産豚肉の輸入動向、日EU・EPAとEUの養豚産業を取り巻く環境、EUの養豚・豚肉の特徴、今後の展望などを解説した=写真。

EU産豚肉について小池氏は、EPAによる関税の引下げのメリットにとどまらず、コンシューマパックなど一次加工品や、生ハム、ソーセージ、サラミ、ベーコンなど食肉加工品の拡充など「可能性を秘めている」と指摘した。

小池氏はEU産豚肉の特徴として、アニマルウェルフェア(母豚ストールフリー)や成長促進ホルモンの使用不可(ラクトパミンなどの肥育添加物の不使用)、赤身率の高いバラの生産、一次加工品、イベリコ豚、各国の特徴を生かしたブランディングなどを挙げた。このうち、アニマルウェルフェアに関しては、欧州の消費者の関心が高く、それに配慮した畜産物に対価を払う意向も高いとし、「今後、アニマルウェルフェアやSDGsに目を向けた消費者行動が非常に着目され、これら畜産物を取り扱う企業もこれらの方向に向かうことで世界の顧客や消費者、さまざまな関係者から注目されるようになる」との考えを示した。

一方で、「おいしくて食べやすい商品の原料を供給できる点がEU産豚肉の特長」とし、日本でのベーコンなどの加工品を生産する際に適した赤身率の高いバラ肉の生産が可能な点も特長だとした。一次加工品に関しては、「フードサービス業界やメーカー向けに、スライスカットやブロックカットを施すなど、レディトゥプロセス商材の生産を行っている。こうした商材に積極的に取り組み、高い生産技術を持っていることも特徴だ」と説明している。スペインのイベリコ豚もリテール業界などでブランド豚として認知が上がっており、EU産豚肉へのイメージ向上に貢献しているという。「そうした良い印象を与えられることで、各国の特長を生かしたブランディングが行えるようになっている。各国の特産品を飼料に与え、肉質の向上や、通常豚よりも栄養価の高い生体を飼育するなど、当社でも、あるEUの地域でブランディングを行っている。顧客から良いイメージを持ってもらえるような地域から豚肉を輸入する、あるいはアマニなどの飼料を与えることで、健康への付加価値も訴求するなど、EUの土地柄・文化を抽出してブランドポークをつくる取組みも進めている」とした。

そのうえで、今後のEU産豚肉の展望について、
〈1〉新規マーケットの開拓
〈2〉加工品マーケットの拡充
〈3〉チルド品の可能性の模索
――がポイントだと指摘。

「EU産はフローズン中心のため、従来はフードサービス業界向けが主流だったが、(コンシューマパックの開発など)今後はリテール業界への拡販も必要となってくる。また、EPAでマーケットが解放されるにつれて、現地で製造した加工品の可能性も秘めている。EUには生ハムやソーセージ、サラミ、ベーコンといった多種多様な加工品があり、EUから各家庭の食卓へダイレクトに届くことができる未来につながるものと考える。チルド豚肉の輸入の可能性についても、今後は小売り向けに販売する可能性もあるのではと考える。このように、EU産豚肉は、今後も伸びしろ・可能性を秘めている。我々輸入者としても長年の取引関係をさらに構築し、日本の顧客によりよい商品をお届けしたい」と述べた。

〈畜産日報2021年3月15日付〉