矢野経済研究所
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2月2日、パナソニックは2021年3月期第3四半期決算を発表、「実質ベースで増収増益となった」としたうえで、通期業績見通しを上方修正した。
同社のセグメント業績は新型コロナウイルスに翻弄された “2020年” をストレートに反映している。第1四半期はオートモーティブ部門を筆頭に全部門が前年割れとなったが、第2四半期に入ると自動車販売の復調を受けてオートモーティブがV字回復、アプライアンスやホームソリューションは空調空質、除菌衛生、巣ごもり需要に押し上げられ、インダストリアルソリューションも通信インフラ、蓄電システム関連が伸長した。一方、コネクテッドソリューションは航空機用電子機器の落ち込みをカバー出来ず減収減益を余儀なくされた。

パナソニックは長く構造改革に取り組んできた。2019年には液晶パネル事業と半導体事業からの撤退を表明、今回も上記決算発表のタイミングで太陽電池事業からの撤退を発表した。決算説明会ではこうした一連のリストラを踏まえて「経営体質強化の取り組みが着実に進捗、加えて、社会変化を捉えた事業の増販が寄与した」と胸を張った。
また、テスラ事業も黒字化に見通しが立った。パナソニックは2,100億円を投じてテスラ向け車載電池工場「ギガファクトリー1」(米ネバダ州)を建設、2017年から供給を開始したがこれまで赤字が続いていた。昨年7-9月期、主力車種「モデル3」の好調を受け、ようやく黒字に転換、通期黒字の達成が確実となった。昨年6月には百数十億円規模の追加投資を決定している。

とは言え、そのテスラも電池の内製化に動いており、中国のCATL、韓国のLG化学も車載電池事業への投資を強化する。パナソニックとしては中韓勢との価格競争は避けたいところであるが彼らの技術力も侮れないし、やがて普及期に入るEV市場にあって価格は重要な競争要件である。消費者に届かない “高品質” に意味はない。グローバル市場を戦い抜くための長期戦略が問われる。
パナソニックは2022年度にはカンパニー制を再編し、持株会社制に移行する。大胆な権限移譲、自主責任経営の徹底をはかることで「専鋭化」を加速するとのことである。とは言え、各事業会社には、効率一辺倒の “選択と集中” で小さくまとまって欲しくない。グローバル市場の中で真に力強い成長を実現するためにも持株会社の戦略的な “覚悟” に期待したい。

今週の“ひらめき”視点 1.31 – 2.4
代表取締役社長 水越 孝