取得条項付株式
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中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

内部監査とは、会社の内部統制を機能させる手段の1つである。法令の定めがないため、各機関が示す基準や考え方、関連法令などを知ることが重要だ。この記事では、内部監査とは何かをわかりやすく説明し、関連法令や法定機関との違い、上場審査基準との関係などについて解説する。

目次

  1. 内部監査とは
    1. 内部監査の基準
    2. 内部監査の定義
    3. 内部監査と法定機関の違い
  2. 内部監査の必要性
    1. 内部監査が必要な根拠1.会社法
    2. 内部監査が必要な根拠2.金融商品取引法
  3. 内部監査が必要になる場面
    1. 内部監査に関する上場審査のポイント
  4. 内部監査とコーポレートガバナンス・コードの関係
    1. 内部監査により適切な情報開示等を達成
    2. 内部監査に求められる独立性
  5. 内部監査の整備は専門家に

内部監査とは

内部監査とは、会社が任意に設置する内部監査人や内部監査部門による社内の業務監査である。会社の内部統制を機能させることで、社内における経営目標の達成や不祥事の防止を図る。

内部監査の内容を直接定めた法令はないが、関係機関からは内部監査に関する基準や定義などが示されている。

内部監査の基準

たとえば企業会計審議会の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部監査人の役割を「内部統制の目的をより効果的に達成するために、内部統制の基本的要素の一つであるモニタリングの一環として、内部統制の整備及び運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す職務を担っている」としている。

ちなみにモニタリングについては、「内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス」としている。このことから内部監査とは、内部統制を機能させる手段といってよいだろう。

(参考)金融庁:企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)

内部監査の定義

内部監査について直接定義した法令はないが、定義としてよく用いられているのは、一般社団法人日本内部監査協会による内部監査基準の内容である。

“内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である。“

内部監査の意味を理解するには、内部統制に関係する法令や専門機関の基準、提言などを整理することが重要となる。

(引用)一般社団法人日本内部監査協会:「内部監査基準

内部監査と法定機関の違い

監査役や監査役会、監査委員会、監査等委員会とは、いずれも取締役等の職務執行の監査などを担う機関である。すべて会社法に定められた法定機関であり、法令の定めがない内部監査とは異なる。

これらは会社法第326条~第328条によると、原則として定款による任意設置であるが、取締役会設置会社・会計監査人設置会社には監査役、大会社(監査等委員会・指名委員会等設置会社を除く)には監査役会を設置する義務がある。

監査委員会や監査等委員会は、それぞれ指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社に置かれる機関であり、法定監査機関と内部監査の業務には重複する部分もある。

しかし、内部監査が法令に定められていない以上、法定監査機関と連携する義務はない。

この点について一般社団法人日本内部監査協会や公益社団法人日本監査役協会では、内部監査と法定監査機関の連携が重要だと認識している。

(参考)一般社団法人日本内部監査協会:「内部監査基準
(参考)公益社団法人日本監査役協会:「監査役等と内部監査部門との連携について

内部監査の必要性

内部監査について直接定めている法令はないが、内部監査の目的である内部統制については、会社法や金融商品取引法に根拠がある。それぞれの法律を通して内部監査の必要性に触れていく。

内部監査が必要な根拠1.会社法

会社法第362条第4項第6号では、取締役会の権限として「業務の適正を確保するための体制の整備」が掲げられ、内部統制の根拠として扱われている。同法第5項によると、この体制に関する整備は大会社に義務化されている。

内部監査が必要な根拠2.金融商品取引法

金融商品取引法第24条では、有価証券報告書を提出しなければならない会社に対し、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制」について評価した内部統制報告書の提出を義務付けている。

内部統制報告書とは、有価証券報告書などの適正さを確保するための書類であり、監査法人の監査を受けてから金融庁に提出しなければならない。日本版SOX法と呼ばれる内部統制報告制度に関する定めである。

内部監査が必要になる場面

内部監査が必要になる場面としては上場審査も挙げられる。有価証券上場規程第207条では、上場審査の項目に「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」があるからだ。

内部監査に関する上場審査のポイント

「上場審査に関するガイドライン」によると、コーポレート・ガバナンスと内部管理体制に関する審査では、主に新規上場申請者の企業グループにおける内部監査体制や、その経営活動その他の事項に関する法令等を遵守できる体制などについて検討するとされている。

「新規上場ガイドブック」によると主な審査ポイントは以下のとおりだ。

・内部監査に関して公正かつ独立の立場から実施可能な体制が構築できているか
・内部監査の専門組織を有する場合は、その組織が特定の事業部門に属していないか
・専門組織でないときは、内部監査が自己監査にならないよう手当てしているか
・法令等を遵守する体制として、内部監査、監査役監査等の監査項目に経営活動に関する法規制等の項目が反映されているか

上記は審査項目のごく一部であるが、内部監査の体制や実施状況について細かくチェックを受けることがわかる。

(参考)日本取引所グループ:「上場審査等に関するガイドライン
(参考)日本取引所グループ:「新規上場ガイドブック

内部監査とコーポレートガバナンス・コードの関係

コーポレートガバナンス・コードが求める内部監査についても確認しておこう。

コーポレートガバナンス・コードとは、会社の持続的な成長と企業価値の向上のために、ガバナンスの在り方を上場会社向けに示したものである。内容は5つの基本原則と、それを具体化した原則・補充原則で構成される。

内部監査により適切な情報開示等を達成

コーポレートガバナンス・コード基本原則3「適切な情報開示と透明性の確保」の原則3-2では、「外部会計監査人及び上場会社は、外部会計監査人が株主・投資家に対して責務を負っていることを認識し、適正な監査の確保に向けて適切な対応を行うべきである。」としている。

その補充原則で、取締役会と監査役会の行うべき対応として、「外部会計監査人と監査役(監査役会への出席を含む)、内部監査部門や社外取締役との十分な連携の確保」を掲げている。

また、基本原則4「取締役会等の責務」の原則4-13では、取締役と監査役は、その責務を果たすため能動的に会社の情報を入手すべきこと、会社側は、それを支援する人員体制を整えるべきことが示されている。

ここでも「上場会社は、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべき」とされている。

このことから内部監査部門には、適切な情報開示や透明性の確保などについて、社内外の法定監査機関と連携することが求められているとわかるだろう。

ちなみに、コーポレートガバナンス・コードは上場会社であっても強制されるものではない。実施しない場合はその理由を報告すればよく、上場する市場によって報告しなければならない原則の範囲が異なる。

本則市場及びJASDAQの場合は基本原則・原則・補充原則、マザーズの場合は基本原則の区分に従って理由を説明しなければならない。

内部監査に求められる独立性

2015年に設置された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は、2019年に「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」と題した意見書を公開した。

これによると、内部監査がCEOの指揮命令下にあるケースが大半である現状を踏まえ、「内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要」と示されている。

上場審査にも、公正かつ独立の立場から内部監査を実施できる体制が構築できているかという審査ポイントがあったように、内部監査と独立性は切り離せない関係のようだ。

(参考)金融庁:「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性

内部監査の整備は専門家に

内部監査を適正に行うには、内部監査部門の能力アップも不可欠である。専門家による研修をはじめ、公認内部監査人(CIA)や一般社団法人日本内部監査協会による内部監査士といった資格取得で、内部監査のレベルアップを図るのもよいだろう。

不安があるようであれば、必要に応じて内部監査の体制を専門家に相談してみてほしい。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)

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