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(画像=税理士が教える相続税の知識)

「姻族関係終了届」をご存知でしょうか。

夫が亡くなった後で届け出ると、夫の両親(姑や舅)との親族関係を終わらせることができるものです。テレビや新聞などでは「死後離婚」と呼ばれることもあります。

価値観の違いや家庭内の暴行・虐待などから、離婚する夫婦は3組に1組の割合にのぼります。さらに、生前は何とか夫婦関係を保っても、夫が亡くなってから「姻族関係終了届」で夫の両親との親族関係を終わらせる人が増えています。

この記事では「姻族関係終了届」の具体的な手続き方法や、提出することのメリットとデメリットをご紹介します。あわせて、相続権や遺族年金はどうなるのか、戸籍の記載や再婚するときの扱いなどについても詳しくお伝えします。

1.「姻族関係終了届」とは?

「姻族関係終了届」とは、亡くなった配偶者の血族との親族関係を終わらせることができる書類です。

夫婦のどちらか一方が亡くなったとき、亡くなった人と残された配偶者の婚姻関係は終了します。しかし、亡くなった人の血族と残された配偶者の親族関係は続いたままになります。

妻には夫の両親の財産を相続する権利はなく、同居していなければ夫の両親を扶養する義務もありません。しかし、高齢者を中心に「嫁は両親の世話をするべきである」という考えが根強く、夫が亡くなった後でも妻が夫の両親の世話をさせられるのが実情です。

このほか、夫の両親や兄弟姉妹がお金を無心したり、生活に過剰に干渉したりといったことから、夫の実家との関係が悪化しているケースもあります。自分が死んだときには夫の家のお墓に入りたくないという声も多く聞かれます。

そこで「姻族関係終了届」が注目されています。

姻族関係終了届を提出すれば、夫の両親や兄弟姉妹との親族関係は終了します。

届け出は市区町村役場に用紙を提出するだけでよく、夫の親族の同意は必要ありません。

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2.「姻族関係終了届」のメリット

姻族関係終了届を提出する一番のメリットは、自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる点です。一方で、子供と夫の両親との血縁関係はそのまま保たれます。相続権や遺族年金への影響はなく、経済的な心配もありません。

「姻族関係終了届」のメリット

 ・自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる
 ・子供と夫の両親との血縁関係は保たれる
 ・亡くなった夫の遺産は相続できる
 ・遺族年金ももらえる

2-1.自分の意思だけで夫の親族との関係を断ち切ることができる

姻族関係終了届の提出には夫の親族の同意や家庭裁判所の許可などは必要なく、自分の意思だけで手続きすることができます。

提出したことが親族に通知されることもありません。戸籍には「姻族関係終了」と記載されますが、親族が戸籍を見ない限りばれることはありません。

2-2.子供と夫の両親との血縁関係は保たれる

妻が夫の親族との関係を断ち切っても、子供と夫の両親との血縁関係はそのまま保たれます。子供にとって姑は「おばあちゃん」であり舅は「おじいちゃん」であることに変わりはありません。

夫の両親が亡くなったときは、子供は代襲相続で遺産を相続することができます。

子供と夫の両親の縁が切れないことについては、デメリットとしてとらえる人がいるかもしれません。しかし、遺産相続ができることは知っておくとよいでしょう。

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2-3.亡くなった夫の遺産は相続できる

姻族関係終了届を提出しても相続権には影響がなく、夫の遺産は相続することができます。

夫の生前に離婚した場合は相続権がないことから、姻族関係終了届を提出する妻だけでなく夫の親族も誤解していることが多いです。夫の親族から遺産を相続しないように言われたり、相続した財産を返すよう迫られたりするかもしれませんが、従わなくても大丈夫です。

2-4.遺族年金ももらえる

姻族関係終了届を提出しても、その他の要件を満たしていれば遺族年金をもらうことができます。すでにもらっている場合も、引き続きそれまでどおりもらうことができます。

ただし、再婚するなど支給の要件を満たさなくなった場合は遺族年金の支給が停止されます。

3.「姻族関係終了届」のデメリット

姻族関係終了届を提出しても、法的な権利に関するデメリットはほぼありません。

ただし、撤回ができないほか、一方的に家族関係に区切りをつけることによる影響はあります。

姻族関係終了届を提出するかどうかは、メリットとデメリットを比較してじっくり考えることが大切です。

「姻族関係終了届」のデメリット

 ・撤回ができない
 ・夫の親族から援助を受けられなくなる
 ・住まいやお墓を自分で用意しなければならない

3-1.撤回ができない

姻族関係終了届は一度提出すると撤回することができません。

親族関係を復活させたい場合は養子縁組をすることになります。

3-2.夫の親族から援助を受けられなくなる

夫の親族との関係を一方的に断ち切った以上、子供の面倒を見てもらったり、経済的な援助を受けたりすることはできなくなると考えておくほうがよいでしょう。夫が亡くなってから時間が経っていない場合は、法事をめぐってトラブルになる可能性もあります。

3-3.住まいやお墓を自分で用意しなければならない

夫の両親と別居している場合は心配ありませんが、同居している場合は新たな住まいを探す必要も出てくるでしょう。夫が実家のお墓に入っている場合は、お墓が夫婦別々になることも考えておかなければなりません。

ただし、夫の家のお墓に入りたくないという声も多く聞かれるだけに、お墓については一概にデメリットとは言えないかもしれません。

4.「姻族関係終了届」を提出する際に必要な手続き

姻族関係終了届は家族関係に大きな影響を及ぼす割には簡単な手続きで済みます。

戸籍は変わらないため、戸籍を分けたい場合は別途「復氏届」の提出が必要です。

4-1.市区町村役場に提出するだけ

姻族関係終了届は、本籍地または住所地の市区町村役場の窓口に提出して受理されれば手続きは終了します。夫の死亡届が提出された後であればいつでも提出でき、期限はありません。

提出するのに夫の親族の同意は必要なく、提出したことが親族に通知されることもありません。

姻族関係終了届の提出方法

届出人 亡くなった人の配偶者
提出先 届出人の本籍地または住所地の市区町村役場
手数料 なし
必要書類 姻族関係終了届、戸籍謄本(本籍地以外で届け出る場合に必要)
印鑑(認印でもよいがスタンプ印(シャチハタ)は避ける)
提出期限 配偶者の死亡届を提出した後であればいつでもよい

姻族関係終了届は、死亡届と同様に代わりの人(使者)が提出することもできます。

ただし、記入は届出人本人がしなければなりません。

4-2.戸籍には「姻族関係終了」と記載される

姻族関係終了届を提出すると戸籍には「姻族関係終了」と記載されますが、引き続き亡くなった夫の戸籍に入ったままとなります。

戸籍を分離して結婚前の姓に戻したい場合は、次の項目でご紹介する復氏届の提出が必要です。

4-3.旧姓に戻して戸籍を分けるには

姻族関係終了届を提出しただけでは姓は変わりません。

結婚前の姓に戻したい場合は、市区町村役場に「復氏(ふくうじ)届」を提出します。

復氏届では、結婚前の戸籍に戻るか新しく作る戸籍に移ることができます。

姻族関係終了届と同じく、夫の死亡届が提出された後であればいつでも提出でき、期限はありません。

ただし、妻が復氏届を提出しても、子供の姓と戸籍は変わりません。

子供を自分の戸籍に入れたい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出して許可を得て、市区町村役場に「入籍届」を提出する必要があります。

これらの手続きで子供の籍を抜いても、子供にとって夫の両親は祖父・祖母であることには変わりなく、相続権を失うことはありません。

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5.「姻族関係終了届」に関連して知っておきたいポイント

ここでは、姻族関係終了届に関連して知っておきたいポイントとして、姻族関係終了届と相続放棄の関係、再婚したときの姻族関係についてご紹介します。

5-1.姻族関係終了届の提出だけでは相続放棄したことにならない

相続放棄をすると、預貯金などの遺産を相続しないかわりに、故人の借金を返済する義務もなくなります。亡くなった夫に多額の借金があった場合は、相続放棄をすることも一つの方法です。

ただし、姻族関係終了届を提出しただけでは相続放棄をしたことになりません。 「2-3.亡くなった夫の遺産は相続できる」でお伝えしたように、姻族関係終了届を提出しても相続権には影響がないからです。

相続放棄をするには、夫の死亡から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。

5-2.再婚しても亡くなった夫の親族との関係は切れない

夫が死亡してのちに再婚した場合でも、亡くなった夫の血族との親族関係は続いたままになります。法的には、亡くなった夫と再婚相手の両方の血族と姻族関係がある状態になります。

実際は二つの姻族関係があって問題になることはあまりないようですが、必要に応じて姻族関係終了届を提出するとよいでしょう。

6.まとめ

「姻族関係終了届」は、夫が死亡した後で夫の両親や兄弟姉妹との親族関係を終了させることができるものです。制度上は妻が死亡した後で夫が提出することもできますが、実際は妻が提出することがほとんどです。

姻族関係終了届を提出しても相続財産を返す必要はなく、遺族年金もそれまでどおり受けられます。デメリットはほとんどありませんが、今後の人間関係に影響を及ぼす可能性はあります。撤回はできないので、提出するかどうかは慎重に判断しましょう。

具体的な手続きや個別のケースについてのメリット・デメリットについては、司法書士や行政書士に相談するとよいでしょう。また、家族関係に大きな影響を及ぼすことから、実家もしくは友人・知人、夫婦問題を扱う相談機関などに相談できるようにしておくことも大切です。(提供:税理士が教える相続税の知識