国内のドラッグストア市場は地方毎に二極化へ
~2019年各社売上高から地方別に上位3位までの企業の売上高占有率をみると、北海道や九州・沖縄では上位企業への集中が進み、関東や近畿では僅差でのシェア争いが激化~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のドラッグストア市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
ドラッグストアチェーン経営企業の2019年地方別売上高、上位3社の占有率(シェア)
1.市場概況
本調査では、各種の公開資料等をもとにドラッグストアチェーン経営企業の売上高から国内の市場規模を推計するとともに、各社の2019年の地方別売上高から上位3位までの企業の売上高の占有率(シェア)を算出した。
8つの地方別にみると、北海道地方は86.1%、九州・沖縄地方79.1%、四国地方76.1%、中国地方69.9%。東北地方が68.4%と続いた。北海道は上位3社によるシェアが80%を、九州・沖縄、四国では70%を越えており、上位企業への集中が起きている。このように地域に根差した経営を行うことで、一定のシェアを獲得しているドラッグストア経営企業が見受けられた。
一方で、近畿地方は36.8%、関東地方39.1%、中部地方43.5%と、都市部では比較的上位企業への集中が起きていない。東京や大阪など大都市を抱える地方では、ドラッグストアチェーン経営企業各社による僅差のシェア争いが生じていることが明らかになった。
2.注目トピック
ドラッグストアの総合化が進む
ヘルスケア商品やビューティケア商品に加え、生活用品も同時に購入できるドラッグストアが増加している。徒歩圏内にあり、ワンストップで生活必需品が購入できる場所が増加することは、買い物弱者対策などの面で社会的にも有意義である。
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による、巣ごもり需要の増加などの要因で、ドラッグチェーン経営企業各社の食品売上高も増加傾向にある。ドラッグストアで扱われる商品の幅が広がり、利便性が向上している。
本調査では、ドラッグストアの総合化の進展を裏づけるために、ドラッグストアチェーン経営企業主要14社の「専門性指標」および「利便性指標」を算出した。「専門性指標」とは、「医薬品」および「化粧品」に相当するカテゴリーの売上高の全体売上高に占める比率とし、それ以外の「食品」「雑貨」「その他」などに相当するカテゴリーの売上高の全体売上高に占める比率を「利便性指標」とした。
主要14社の平均値は「専門性指標」が44.0、「利便性指標」が55.2となった。この値からも、ドラッグストアチェーン経営企業各社は、医薬品や化粧品だけでなく幅広く商品を取り扱うことで成長を遂げてきたことが伺える。
3.将来展望
人口減少社会において、ドラッグストアチェーン経営企業各社が、今後どのような戦略をとるのか注目である。ドラッグストアとしての専門性を追求していくことや、幅広い商品を取り揃えることで新しいドラッグストアのあり方を追求し続けることなどが考えられる。また、食品の売上比率が小さい企業が食品を強化したり、調剤(処方せん医薬品)の売上比率が低い企業が医薬品を強化したりするなど、弱点補強型の成長戦略を進める可能性もある。ただ、国内においては人口減少に伴い生活必需品需要が減少していく中、さらなる成長のためには海外進出や高付加価値商品の販売、市場のさらなる細分化などが必要である。
新型コロナウイルス感染症の流行により、一時マスクなどの衛生用品の品薄状態が続いた。社会的役割が高まるドラッグストアチェーン経営企業各社は、緊急時の安定供給のため、適正在庫やサプライチェーンのあり方などについても検討が必要であると考えられる。
調査要綱
1.調査期間: 2020年7月~10月 2.調査対象: ドラッグストアチェーン経営企業 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用 |
<ドラッグストアとは> 本調査におけるドラッグストアとは、主として医薬品、化粧品を中心とした健康および美容に関する各種の商品を中心として、家庭用品、加工食品などの最寄り品をセルフサービス方式によって小売りする事業所を指す。市場規模にはドラッグストア経営企業の調剤売上高を含むが、調剤薬局(主として医師の処方箋に基づき医療用医薬品を調剤し、販売または授与する事業所)の売上高は含まない。 |
<市場に含まれる商品・サービス> ドラッグストア、ドラッグストアチェーン経営企業 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 ドラッグチェーンの成長戦略とエリア別競争力分析 |
発刊日 | 2020年10月30日 |
体裁 | A4 168ページ |
定価 | 120,000円(税別) |
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