マルサンアイは11月16日、愛知県岡崎市の本社で2020年9月期決算説明会を開いた。売上高は豆乳、飲料、「豆乳グルト」が好調に推移したことで12期連続の増収、過去最高を達成した。利益は、売上増加とコスト削減により営業・経常段階で2ケタの増益となった。期末配当金は、業績好調による30円の増配に、来年3月に70周年を迎える記念増配10円を加え、過去最高の70円を予定している。
今期の業績予想は、売上高は豆乳とアーモンドミルクの伸長などで前年比1.8%増の300億300万円を計画。渡辺邦康社長は「夢であった300億円の大台を目指す」と強調した。営業利益は研究開発費と広告宣伝費が3億円増加することで29.0%減の6億4,900万円、経常利益33.8%減の6億900万円を見込む。
渡辺社長は「豆乳は、かつては高齢者の飲み物だった。今ではスポーツ後のプロテイン補給への効果が期待されるなど、広がりが出ている。豆乳関連はフレイル対策、トクホ(特定保健用食品)、機能性表示食品といった可能性が十分にある」とした上で、「みそ、豆乳のメーカーとして、大地の恵み(である大豆)の効能をさらに引き出すため、研究開発に投資する」との考えを示した。豆乳の今後の商品開発の切り口では、たん白質摂取に注目しているとした。
広告宣伝については、「付加価値のある製品を選んでもらうため、テレビCM、ネットの広告宣伝、コロナでできなかった試食マネキン、消費者キャンペーンなど、消費者に直接訴える販促を拡大する」とした。
今期は、中期経営計画(2021~2023年度)の初年度となる。事業別の売上計画は、みそ事業は3.5%増の49.2億円、このうち主力の生みそは2.1%増の37.9億円、注力している液状みそ(鮮度みそ)は27.3%増の2.7億円を目指す。
豆乳飲料事業は2.8%増の231億円を計画。豆乳は3.8%増の207.3億円と引き続き伸長を見込む。飲料はアーモンド飲料が拡大を見込むも、OEM(受託製造)の受注減などで5.4%減の23.6億円を予想。なお、アーモンド飲料は前期117%増の6.4億円と大きく拡大した。その他製品に分類される「豆乳グルト」の売り上げは、前期は22%伸長、今期も拡大を目指す。
〈鮮度みそ・チルド製品・アーモンド飲料の「3ド」を強化〉 今後の事業展開では、中計の基本戦略の一つとして掲げる、「基幹事業の拡大と3ド(鮮度・チルド・アーモンド)+バルク、海外への挑戦」を推し進める。特に「鮮度みそ」(液状みそ)、「豆乳グルト」などのチルド食品、アーモンド飲料の「3ド」については、「みそ、豆乳の次の柱になり得る」と強調した。
チルド製品は今秋、「豆乳シュレッド」を発売した。「乳でできるものは大豆にも可能性がある」とした上で、「大地の恵みのリーディングカンパニーとして、新しいことに挑戦する」とし、大豆関連のチルド製品の開発に注力する。
豆乳は業務用に注力する。21年度にバルク工場を稼働し、加工食品向けの豆乳原料の生産と出荷を拡大する。「豆乳をプリンや飲料に使うのは一般的だが、たとえば、豆乳を卵焼きに入れるとふわっと仕上がり、ハンバーグに入れるともっちり仕上がる。豆乳は素材に寄り添い、素材を生かす。豆乳を加えることで、これまでにないものができる」と用途の拡大を目指す。
参入が相次いでいる代替肉については、「一部手がけてはいるが、注力するつもりはない。大豆関連製品はチルドでがんばる」とした。
みそについては、「設備の老朽化対策を進めている。生みそ市場は国内は減少、海外は伸びているが、今年はコロナで厳しい。国内で今後、生みその数量を伸ばすのは難しい」とし、数量ではなく付加価値により単価を上げる方向性を示した。
「鮮度みそ」は、「調味料として使ってもらいたい。みそも豆乳と同様に、料理の隠し味になる。鮮度しょうゆも10年ほどかかって、シェアが20%~30%に拡大した。しょうゆよりみそは保守的だと見ており、地道に『鮮度みそ』の拡大を図る」とした。
〈大豆油糧日報2020年11月18日付〉