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(画像=税理士が教える相続税の知識)

法定相続情報一覧図とは、亡くなった被相続人の相続関係を1通の用紙に記載したものです。法務局で認証を受ければ公的な証明として相続手続きで使うことができます。

従来、不動産の名義変更や相続税の申告などの相続手続きでは、手続き先ごとに被相続人と相続人の戸籍謄本を提出する必要がありました。しかし、戸籍謄本は数が膨大になることもあって、取得の手間や費用が相続人の負担になっていました。

法定相続情報一覧図は一度認証を受けると、5年間は写しが無料で交付されます。
同じ戸籍謄本を何通も用意しなくてもよく、相続手続きが簡単になります。

この記事では、法定相続情報一覧図の書き方と法務局で認証を受ける手続きを詳しくご紹介します。

1.法定相続情報一覧図は自分で作成して法務局で認証を受ける

法定相続情報一覧図は、自分で作成したものを法務局に提出して認証を受けます。
法務局に頼めば作成してもらえるわけではないので誤解のないようにしましょう。

1-1.作成には戸籍謄本が必要

法定相続情報一覧図は相続手続きで戸籍謄本のかわりに提出できるものですが、法定相続情報一覧図を作成するには戸籍謄本が必要です。相続で戸籍謄本がまったく不要になるわけではありません。

亡くなった被相続人の相続関係を確認するため、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せます。また、相続人の現在の戸籍謄本も必要になるため、同時に取り寄せておきます。

戸籍謄本は被相続人・相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
過去に被相続人の本籍が変わっている場合は、変わる前の本籍地からも取得する必要があります。

戸籍を取り寄せる方法については下記の記事を参照してください。本籍地が遠い場合は郵送で取り寄せることもできます。

相続手続で必要な戸籍謄本と取り寄せ方法
戸籍謄本は郵送でも取り寄せられる!その具体的な方法を解説

将来は本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本の取得が可能に
2019年5月に戸籍法が改正され、2024年をめどに本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本を取り寄せられるようになります。戸籍謄本の取り寄せが1か所でできるようになり、相続人の負担がさらに軽くなります。

1-2.法定相続情報一覧図の書き方

法定相続情報一覧図には、被相続人の戸籍謄本から読み取った相続関係を記載します。

様式としては図形式と列挙形式がありますが、ここでは図形式の書き方をご紹介します。

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(画像=法務局ホームページに掲載の記載例をもとに作成)

図形式の法定相続情報一覧図は、以下の方法で作成します。

法定相続情報一覧図の作成方法

用紙 A4サイズの白い紙を縦長に使用します。
被相続人 氏名、最後の住所、出生年月日、死亡年月日を記載します。
最後の住所は住民票の除票をもとに記載します。
最後の本籍地を記載することもできます(住民票の除票がない場合は必ず記載します)。
相続人 氏名、出生年月日、被相続人から見た続柄を記載します。
住所を記載することもできますが、記載した場合は住民票の写しの提出が必要です。
続柄は戸籍のとおりに記載しますが、「(子)」と書くこともできます。
(ただし、続柄を「(子)」とすると相続税の申告などで使うことができません)
申出人 法務局に申し出る人の氏名の横に「(申出人)」と記載します。
その他記載上の注意点 被相続人と相続人の関係がわかるように線で結びます。
末尾に作成日と作成者の住所を記載して署名または記名押印します。
子供が多い場合は複数ページになっても構いません。
認証文を記載するスペースとして用紙の下から5cm程度は空白にします。

法務局のホームページでは、家族構成に応じた様式と記載例が公開されているので参考にしてください。明瞭に判別できれば手書きでも構いません。

法務局ホームページ 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

法定相続情報一覧図の記載例

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(画像=法務省発行資料より)

1-2-1.相続放棄・欠格・廃除がある場合の書き方

相続放棄した人、相続欠格になった人、相続廃除された人がいる場合は、法定相続情報一覧図の記載は次のようになります。

 ・相続放棄した人:氏名、続柄などを記載する(相続放棄したことは記載しない)
 ・相続欠格になった人:氏名、続柄などを記載する(相続欠格になったことは記載しない)
 ・相続廃除された人:記載しない

これらの人は遺産を相続することができませんが、このように対応が分かれるのは戸籍への記載の有無が関係しています。

相続放棄や相続欠格は戸籍には記載されず、戸籍上は他の相続人とは区別されません。 そのため、相続放棄した人と相続欠格になった人は、他の相続人と同様に法定相続情報一覧図に記載します。戸籍では区別がないため、相続放棄や相続欠格があったことは記載しません。

相続廃除は届け出により戸籍に記載され、相続できないことが明らかになります。 そのため、相続廃除された人は法定相続情報一覧図には記載しません。

相続放棄や欠格がある場合は、法定相続情報一覧図に記載される相続人と実際に相続できる相続人が異なることに注意しなければなりません。

1-2-2.数次相続の場合は2つの一覧図に分かれる

被相続人が死亡して間もなく相続人が死亡したときのように、2人分の相続を同時並行で進めることを数次相続といいます。

数次相続の場合は、2人分の相続関係を1つの法定相続情報一覧図にまとめることはできません。次の2つの法定相続情報一覧図を作成します。

 1.はじめに死亡した被相続人に関する法定相続情報一覧図
 2.次に死亡した相続人に関する法定相続情報一覧図

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(画像=税理士が教える相続税の知識)

1-3.法務局で認証を受ける

法定相続情報一覧図を作成することができれば、法務局で認証を受けます。
認証の申し出方法は以下のとおりです。

法定相続情報一覧図の認証の申し出方法

申出人 亡くなった人の相続人またはその代理人
(代理人は親族または一定の有資格者に限られます)
申出先 次のいずれかを管轄する登記所(法務局)
・被相続人の本籍地
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地
   (管轄の登記所は法務局ホームページ「管轄のご案内」を参照してください)
手数料 なし
必要なもの 作成した法定相続情報一覧図
・法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
・被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票(取得できない場合は戸籍の附票)
・相続人全員の戸籍謄本または抄本
・申出人の住所・氏名が確認できるもの(住民票の写し、運転免許証・マイナンバーカード表面のコピーなど)
  ・コピーには原本と相違ないことを記載のうえ記名押印します。
  ・住民票の写しは原本還付されないため、原本が必要な場合はコピーを提出します。
・【相続人の住所を記載する場合】各相続人の住民票の写し
・【親族が代理で申し出る場合】委任状、申出人と代理人が親族であることがわかる戸籍謄
・【資格者代理人が申し出る場合】委任状、資格があることがわかる身分証明書の写し
その他 郵送で申し出ることもできます(返信切手の同封が必要です)。
法定相続情報一覧図の原本は法務局で5年間保存されます。

法定相続情報一覧図の保管および交付の申出書の様式は、法務局ホームページに掲載されています。

法務局ホームページ 法定相続情報一覧図の保管および交付の申出書の様式(Word形式)

法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の記載例

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(画像=法務局ホームページより)

2.認証されれば法定相続情報一覧図の写しが交付される

法務局で法定相続情報一覧図の認証を申し出ると、登記官が一覧図の内容を確認します。不備がなく認証されれば、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。

法定相続情報一覧図の写しは偽造防止対策がされた専用の用紙で発行され、登記官による認証文が記載されます。

法定相続情報一覧図の写しの例

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(画像=法務省発行資料より)

法定相続情報一覧図の写しは、認証から5年以内であれば必要な部数が無料で交付されます。相続手続きが複数ある場合は特に便利です。

再交付が必要な場合は、原則として当初の申出人が当初申し出をした法務局で申請します。他の相続人が再交付の申請をする場合は、当初の申出人による委任状が必要になります。

3.相続税申告の添付書類としても使える

法定相続情報一覧図の写しは、平成30年4月1日から相続税申告書の添付書類としても使うことができるようになりました。

ただし、相続税申告に使用するには以下の条件があります。

 ・子の続柄が「実子」と「養子」で区別されていること
 ・図形式で作成されたものであること

相続税の計算では相続人に含めることができる養子の数に制限があるため、被相続人の子が実子であるか養子であるかが明確でなければなりません。

また、様式は図形式に限られます。 列挙形式では相続人の法定相続分を確認できない場合があるためです。

4.まとめ

ここまで、法定相続情報一覧図の作成と認証の方法を詳しくお伝えしました。

法定相続情報一覧図は、相続手続きで戸籍謄本のかわりに故人と相続人の関係を証明するものです。法務局で認証を受けるまで少し手間がかかりますが、一度認証を受ければ相続手続きの負担を軽減することができます。(提供:税理士が教える相続税の知識