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面接で人を見抜く方法
リーダーになれば、人の採用にかかわる機会も増えてくるでしょう。面接についても触れておきます。私は新卒採用も含めた採用こそが、経営者にとってもっとも大切な仕事のひとつだと考えています。
特に新卒採用は、会社のカルチャーを形作る大切なポイントです。学生の視点から言えば、採用に社長自らがどれだけエネルギーをかけているかというのは、よい会社かどうかを見分けるポイントです。ザ・ボディショップで私が新卒採用に注力したことはすでに述べましたが、とりわけ力を入れたのは会社説明会でした。東京だけでなく地方も含め、毎年20回以上行いました。そこで話したのは、ザ・ボディショップのミッションやストーリーであり、アニータの人となりです。みんな一所懸命メモをとってくれます。
その反応はすぐに現れます。説明会場の近くにあるザ・ボディショップの店舗の売り上げが伸びるのです。
入社を希望する人には、ミッションをできるだけ説明し、創業者であるアニータの生身に近い姿を知ってほしい。それに心から共鳴できる人に受けてほしい。その中から何人かが、ザ・ボディショップの仲間に加わってくれるのです。
しかし、たとえ入社してくれなくても、説明会に来てくれた学生のほとんどが、ザ・ボディショップやアニータのファンになってくれます。もしこれを店頭でやろうとすれば、お客様は逃げていってしまいます。
最終面接は、私の大切な、しかもうれしい仕事でした。新卒の場合でも、中途採用の場合でも、決まってする質問があります。
まずは、「あなたの強みを3つ、弱みを3つ教えてください」です。
強みは、ほぼイコール自己PRです。じつは、私が一番注目しているのは、弱みのひとつ目です。強みを3つ、必死にアピールしたあとの「自分の弱み」には、素直な本音が隠されているからです。小売業なのに人とつき合うのが苦手とか、チームワークが得意でないという人は、さすがに敬遠します。
もうひとつの質問は「あなたが今までの人生の中で一番光り輝いていたのは、どのようなときですか?」。部活でもサークルでも、アルバイトでも何でも構わないけれど、自らがもっとも輝いていた瞬間を、どう考えているかを聞きます。それこそ、その人がもっともその人らしい火花が散った瞬間だと思うからです。
もしも宝くじで3億円当たったら……
もし私が「経営者の就職面接」の採用担当者であれば、きっとこんな問いかけをします。「もし起業するのなら、あるいはどこかの会社を経営者として任されるのなら、どんな会社を作りたいですか?」
そして、私自身のこの質問への答えはこうです。
「社員が、宝くじで3億円当たったあとでも働き続けたいと思う会社を作りたい!」
個人的に、この基準を「宝くじテスト」と呼んでいます。
もし宝くじで3億円を手に入れたら、どうしますか?インフレがなく、よほど高い生活水準を望まなければ、預金しておいてそのまま使うだけで一生暮らしていけるお金。つまり、もうお金のために働く必要はないのです。
3億円当たってもなお働きたい。それはもはやお金のためではありません。経営者にとっては、とてもハードルが高いけれど、究極的な会社の存在目的を示しているような気がするのです。
私が考える社長の究極の喜びはふたつあります。まずは、業績が絶好調で、特別賞与を払う瞬間です。配るほうももらうほうも笑顔の洪水。とてもわかりやすい社長の喜びです。
もうひとつは、人を育てるという喜びです。ザ・ボディショップの会社説明会では、学生たちに向けて入社2年目の若手社員にも話をしてもらうようにしました。私はそれを横で聞いていて、うれしくて泣きそうになったことが何度もあります。少し前までは、不安げに話を聞いている学生の立場だったのに、面接で緊張して、言葉に詰まっていたのに、今こうして自信を持って、笑顔で会社のことを話してくれている。
人って、短期間でこんなに成長するものなのか。リーダーとしてその瞬間に立ち会える充実感は、かけがえのないものです。