LBO
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数あるM&A手法の中でも「LBO(レバレッジド・バイアウト)」は、現代の錬金術と言われるほど特徴的だ。日本国内にも、LBOをうまく活用した事例はいくつか存在する。M&Aに興味のある経営者は、これを機にLBOの基礎知識を身につけていこう。

目次

  1. LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?
    1. LBOを積極的に実施する「PEファンド」とは?
  2. LBOと「MBO・EBO」は何が違う?
  3. LBOはどんな手順で実施する?基本的なスキームを解説
    1. 【STEP1】SPC(特別目的会社)を設立する
    2. 【STEP2】金融機関などから資金調達をする
    3. 【STEP3】SPCが譲渡企業を買収する
    4. 【STEP4】SPCと譲渡企業を合併する
  4. LBOを実施するメリット
    1. 1.投資額を抑えられる
    2. 2.大きなリターンを期待できる
    3. 3.投資のリスクを限定できる
  5. LBOを実施するデメリットと注意点
    1. 1.譲渡企業の経営改善のハードルが上がる
    2. 2.必ずしもリターンを得られるとは限らない
  6. LBOの成功事例・失敗事例
    1. 【成功事例】ソフトバンクによる、ボーダフォンの買収(2006年)
    2. 【失敗事例】ダイセンホールディングスによる、さとうベネックの買収(2012年)
  7. 特に債務を抱える譲渡企業側は、デメリットやリスクを理解したうえで検討を
  8. 会社売却を成功させて悠々自適の生活を送る

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは?

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、金融機関などからの借入金を活用して企業・事業を買収する、M&Aの手法のひとつだ。最大の特徴は、売り手側(譲渡企業)の資産や将来のキャッシュフローを担保にする点であり、LBOを利用した買い手は少ない資金でM&Aを実施できる。

また、LBOでは買い手が借入金の返済をするのではなく、譲渡企業が債務者になる点も合わせて覚えておきたい。つまり、LBOを実施するために調達した資金は、最終的に売り手側の負債となる。

LBOを積極的に実施する「PEファンド」とは?

LBOを実施している組織としては、「PE(Private Equity)ファンド」と呼ばれるファンドが挙げられる。数あるファンドの中でも、PEファンドは非上場企業の株式に対して積極的な投資を行っており、その投資で発生した利益を投資家に分配している。ちなみに、スタートアップに投資することが多いVC(ベンチャーキャピタル)もPEファンドの一種だ。

PEファンドがLBOの対象にする企業には、主に以下のような特徴が見受けられる。

・内部留保が多い
・自己資本比率が高い
・有利子負債が少ない
・業績やキャッシュフローが安定している

つまり、事業環境が安定しており、かつ将来性のある(=株価が上がりやすい)企業は、LBOの対象になりやすいと言えるだろう。

LBOと「MBO・EBO」は何が違う?

LBOと混同されやすい用語に、「MBO(マネジメント・バイアウト)」や「EBO(エンプロイー・バイアウト)」と呼ばれるものがある。これらの用語の違いは、簡単に言えば「誰が買収をするのか」という点だ。

バイアウトの種類概要
・MBO経営陣自らが、自社の株式を買収すること。
・EBO従業員が自社の株式を買収すること。
・LBO借入金を活用する形で、株式を買収する行為の総称。借入金を活用して自社を買収する場合は、MBOもEBOも「LBOの一種」に含まれる。

MBOやEBOは、主に経営を効率化する目的で実施される。市場に出回る株式を減らしつつ自社株式を集めることで、経営権をスムーズに移動させられるため、会社の迅速な意思決定を実現できるのだ。

また、自己資本利益率(ROE)をはじめとした財務指標が改善される点も、MBO・EBOを実施するメリットと言える。うまく活用すれば資本効率の向上につながるため、財務状況について悩みを抱えている経営者は、選択肢のひとつとしてMBOやEBOを覚えておきたい。

LBOはどんな手順で実施する?基本的なスキームを解説

ここからは、話を「LBO」に絞って解説を進めていく。

LBOの基礎知識としては、スキームも押さえておきたい。LBOの仕組みや概要をより理解するために、特に「債務がどのように移るのか?」を意識しながら、以下で基本的なスキームを確認していこう。

【STEP1】SPC(特別目的会社)を設立する

SPC(Special Purpose Company)とは、特定の目的を達成するために設立される法人のことだ。LBOにおいては、主に買収資金を調達する役目を果たす。

SPCは後に譲渡企業の買収役にもなるが、会社の資金を使って買収をするわけではないので、資本金を高額に設定する必要はない。会社形態についても特に決まりはなく、株式会社はもちろん、合同会社としても設立できる。

【STEP2】金融機関などから資金調達をする

次は【STEP1】で設立したSPCが、M&Aの買収資金を調達していく。調達先として主に活用されるのは、銀行などの金融機関や投資ファンドだ。

SPCは返済財源を有さない会社であるため、この段階で譲渡企業の資産や将来のキャッシュフローを担保にする。この資金調達によって、SPCは買収をするための多額の資金と債務を抱えることになる。

【STEP3】SPCが譲渡企業を買収する

買収資金を用意できたら、いよいよSPCが譲渡企業を買収していく。基本的には100%の株式取得を目指すことになるが、仮に株式の売却に応じない株主が存在する場合は、強制的に株式を取得する「スクイーズアウト」を実施することがある。

このような流れで譲渡企業の買収が済むと、SPCは親会社に、譲渡企業は子会社になる。ただし、この段階で借入金の債務を背負っているのは、まだ「SPC」だ。

【STEP4】SPCと譲渡企業を合併する

最後に、SPCと譲渡企業を合併させることで、ひとつの会社にしていく。このとき、消滅会社となるのはSPC側のほうであり、譲渡企業は存続会社として経営が続けられていく。

その結果、ここまでSPCが抱えていた債務は、譲渡企業へと移ることになる。つまり、借入金の返済は譲渡企業が行うので、SPCを設立した買収者は、実質的に借金を背負っていない形に収まるのだ。

このようにLBOでは、SPCを巧みに利用することで少額での買収を進めていく。

LBOを実施するメリット

では、一般的なM&Aと比べて、LBOにはどのようなメリットがあるのだろうか。立場によって生じるメリットは変わってくるので、まずは買い手に発生する主なメリットを詳しく見ていこう。

1.投資額を抑えられる

買い手がLBOを実施する最大のメリットは、買収する投資額を大きく抑えられる点だ。前述のスキームを見てわかる通り、買い手は借入金を使って株式を買収し、かつその債務は譲渡企業が背負う形になるので、LBOを活用すれば少ない資金でも大きな会社を買収できる。

2.大きなリターンを期待できる

LBOの実施後に譲渡企業が成長を遂げると、企業価値の上昇とともに株価も上がっていく。このタイミングで株式を売却すれば、買い手側は投資額を抑えられている分、非常に大きなリターンを得ることになる。

また、細かいメカニズムは割愛するが、借入金が増えるほど投資効率が上がっていく点もLBOの大きなメリットだ。借入金を増やすと「てこ(※英語でレバレッジ)」のように投資利益が増えていくため、借入金を利用した買収は「レバレッジド・バイアウト(LBO)」と呼ばれているのだ。

3.投資のリスクを限定できる

LBOの買い手は最終的に債務を負わないため、投資リスクを大きく抑えられる。細かく言えば、買い手側が負うリスクは「SPCへの出資金部分のみ」となるので、仮に譲渡企業の経営がうまくいかなかったとしても、一般的なM&Aのような大きなダメージを被ることはない。

LBOを実施するデメリットと注意点

LBOには魅力的なメリットがある一方で、当然デメリットも存在している。買い手にどのようなデメリットがあるのか、以下で詳しくチェックしていこう。

1.譲渡企業の経営改善のハードルが上がる

LBOが実施されると、譲渡企業は大きな借金を背負うことになる。もちろん、譲渡企業は利息を加えた形で返済をするが、この利息が経営を圧迫する可能性は決して低くない。

なぜなら、LBOを目的とした借入金(※LBOローンと呼ばれる)に設定される金利は、一般的なローンに比べると高い傾向があるためだ。LBOローンは借入期間が5年前後とやや短く、さらに譲渡企業が返済不能に陥るリスクがあるので、金利が少し高めに設定されている。

したがって、譲渡企業が債務を抱えない一般的なM&Aに比べると、経営改善のハードルはどうしても高くなってしまうだろう。

2.必ずしもリターンを得られるとは限らない

上記のデメリットにも関連するが、LBOによって譲渡企業を買収したからと言って、買い手は必ずしもリターンを得られるわけではない。たとえば、想定通りに事業が進まなかったり、シナジー効果が発揮されなかったりすると、逆に損失を被ってしまう可能性もあるのだ。

リスクが限定されているとは言え、LBOはノーリスクの手法ではない。仮に譲渡会社が倒産をすると、SPCに出資した資金はもちろん、それまでに費やしてきた時間も無駄になってしまうだろう。

ここまでは買い手のメリット・デメリットを解説してきたが、よりLBOへの理解を深めるには、買い手以外のメリット・デメリットも理解しておくことが重要だ。そこで以下では、「買い手・譲渡企業・金融機関」の3者のメリット・デメリットをまとめた。

LBOのメリットLBOのデメリット
買い手・投資額を抑えられる
・大きなリターンを期待できる
・投資のリスクを限定できる
・譲渡企業の経営改善のハードルが上がる
・必ずしもリターンを得られるとは限らない
譲渡企業・株主が利益を得られる・有利子負債が増加する
・短期間での業績向上が求められる
・経営の自由度が下がる
金融機関・高い金利で資金を貸し出せる・資金を回収できないリスクがやや高い

LBOでは通常、株価を高めに設定した形で買収が行われるので、譲渡企業の株主は多額の利益を受け取れる可能性がある。ただし、多額の借金(有利子負債)を抱える点や、短期間で業績が向上しなければすぐに株式が転売されてしまう点などは、譲渡企業にとって深刻なリスクだ。

また、実は金融機関にもデメリットがあり、債務者である譲渡企業が大きな借金を抱えた形で経営にあたるので、LBOローンで貸し出した資金は回収不能に陥るリスクが高い。このリスクを抑えるために、LBOローンを提供している金融機関は金利を高めに設定している。

LBOの成功事例・失敗事例

さらにLBOのイメージをつかむために、最後に成功事例・失敗事例をひとつずつ見ていこう。

【成功事例】ソフトバンクによる、ボーダフォンの買収(2006年)

2006年に実施されたソフトバンク株式会社のLBOは、日本国内における代表的な成功事例だ。同社は2006年に1兆7,500億円をかけて、携帯電話事業を営んでいたボーダフォン株式会社の日本法人を買収した。

買収資金のうち、借入金として調達した資金は実に1兆円。譲渡企業であるボーダフォンは巨額の有利子負債を抱えたが、結果的にこのLBOは成功を収めており、後にソフトバンクブランドに移行したボーダフォンは「三大キャリア」と呼ばれるまでに成長を遂げている。

成功の要因はいくつか考えられるが、「顧客との契約期間が長い」という携帯電話事業ならではの特徴が、良い方向に働いたと予測される。つまり、顧客から一定の収益を見込める事業モデルであったため、LBO実施後の返済負担を効果的に抑えられたのだ。

【失敗事例】ダイセンホールディングスによる、さとうベネックの買収(2012年)

次は、最終的に黒字倒産を迎えた失敗事例を紹介しよう。主に土木関係の事業を営んでいたダイセンホールディングス株式会社は、2012年に大手ゼネコンの株式会社さとうべネックを買収した。

当時のさとうベネックは、安定した売上高と経常利益を記録しており、現預金も20億円と倒産とは程遠い状況に。しかし、SBIキャピタルからの巨額の借入金を返済できず、買収から8ヶ月後には約44億円の負債を抱えた状態で倒産をしてしまった。

このように、譲渡企業の経営が仮に安定をしていても、LBOによって急激に負債が増えると黒字倒産をしてしまう恐れがある。有利子負債による「資金繰りの急激な悪化」は、ときに業界大手の経営までも崩してしまうのだ。

特に債務を抱える譲渡企業側は、デメリットやリスクを理解したうえで検討を

本記事で紹介してきた通り、LBOは少額での企業買収に効果的な手法だ。ただし、特に譲渡企業側には注意するべきリスクがいくつかあり、なかでも「多額の債務を抱える点」には細心の注意を払わなくてはならない。

そのため、PEファンドなどへの自社売却を考えている経営者は、慎重に検討を進めるべきだ。従業員や取引先などにも影響が及ぶため、デメリットやリスクなどの悪い面にも目を向けたうえで、安易に自社売却を決めないようにしておきたい。

会社売却を成功させて悠々自適の生活を送る

会社売却は一人で全てを行う事は困難なので、専門家の手を借りながら進めていくことが大切だ。それと同時に、専門家に任せにするのではなく、自分でもM&Aに関する知識を身につけ、専門家の進め方をチェックする必要がある。

会社売却は簡単ではないが、うまく会社を売却できれば、まとまった資金を手に入れて悠々自適のセカンドライフを送れるだろう。

事業が順調な時はプレミアムをのせやすく、想定以上に高額な報酬で会社売却が成立することもある。逆に売上や利益が減少し始めると、買収候補先は慎重にならざるを得ない。

事業が順調なうちに会社売却を決断するのは勇気がいるが、「今が売り時だ」というタイミングを自分なりに見極めて速やかに行動に移すことが、納得のいく会社売却を行う秘訣といえるだろう。

売却についてはまずM&Aの仲介業者に相談してみるのがよいだろう。

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文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)

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