矢野経済研究所
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2018年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模は、前年度比0.5%減の6,477億円

~症例数に則して各市場が形成されており、好調な製品群に牽引されて2019年度は前年度比2.3%増を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)では、国内のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場について調査を実施し、製品別市場規模推移、今後の成長要因、市場特性などの分析を行った。

メディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模推移

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1.市場概況

メディカルバイオニクス(人工臓器)製品とは、病院、クリニック、検査センター等で使用される体内植込み型及び関連装置の医療機器(デバイス)である。診療報酬や薬価の改定は、国内の医療機器市場に影響を及ぼすが、2019年10月の消費増税に伴う薬価基準改定では、改定品目全体の37%に相当する約6,100品目の薬価が上がったものの、残りの6割強の品目の薬価は下がっている。また、2020年4月の診療報酬改定では、技術料に当たる本体部分については0.55%増、薬価は市場拡大再算定の見直し等を含め0.99%減、医療材料価格は0.02%減となり、その上で、本体部分の引き上げ0.55%のうち0.08%を「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」に充て、残りの0.47%を各科に配分し、医科が0.53%、歯科が0.59%、調剤が0.16%となった。

このような環境下で、メディカルバイオニクス製品のうち心臓血管外科領域では、弁膜症関連デバイスや補助循環関連製品は数年単位で捉えると比較的安定しているが、不整脈インプラントや循環器系デバイスなどは償還価格改定時に影響を受けている。整形外科等の骨領域では、脊椎固定システムやHTOプレートシステム等のプレート&スクリューが高い伸び率を示す一方で、リウマチ性関節症患者への医薬品(骨粗鬆症薬やリウマチ治療薬)投与が増加しており、手術件数の減少・人工関節の伸び率鈍化に影響を与えている。その他分野を含めて、各疾患:部位に対する治療デバイスの好不調の両極化が継続している。
また、体外循環を除いた人工臓器の市場では、より低侵襲な手術手技の発展、新デバイスの採用が引き続き市場の趨勢で、ここ数年、適用基準はあるものの経皮的手術用デバイスが臨床で採用されている。高齢者人口の増加は、60~65歳前後で手術数が多い疾患・デバイスや慢性疾患・継続的治療デバイスへの好影響が見られるものの、手技やその他の市場環境によって成長率が変動しており、必ずしも人工臓器市場にプラスに作用するわけではない。

2.注目トピック

止血・接着材(剤)市場の動向

止血・接着材(剤)市場に関連する症例数についてみると、大動脈置換弁はTAVI・TAVR(経カテーテル大動脈弁植え込み術)の影響を受けているが、胸部心臓外科領域では解離性大動脈瘤等の胸部大動脈手術件数の増加に伴う4分岐管と1分岐管の症例増や、弁形成術症例の伸び、心臓切開縫合閉鎖術の増加に比例し、推移している。整形外科領域では、人工関節(THA、TKA)に加え、止血材(剤)やシーラント材(剤)の使用量の多い脊椎固定システムでも症例数の伸びがある。一方で、構成比の高いフィブリン糊の大幅ダウンの影響が大きく、2018年度の止血・接着材(剤)市場規模は、前年度比5.9%減の185億93百万円となった。2019年度もその傾向は変わらず、同6.9%減の173億19百万円になると予測する。

3.将来展望

主要科目別に市場をみると、胸部・心臓血管外科分野では人工弁がTAVI・TAVR(経カテーテル大動脈弁植え込み術)症例数の増加や、経皮的僧帽弁接合不全修復術の保険適用による症例数増、人工血管は腹部・末梢血管領域でのDCB(薬剤コーテッドバルーン)の保険償還化・本格販売の影響があった。整形外科領域は、人工関節(THAやTKA)やREVERSE型の症例が増加している人工肩関節の市場拡大、変形性膝関節におけるHTOプレートシステムや脊椎固定システム市場の続伸により、2018年度の主要科目で唯一市場拡大している。人工腎臓及び関連市場では、慢性透析患者数が5,000人以上増加し、HDF(血液濾過透析)が拡大するものの、透析用回路や腹膜透析のマイナスから前年度比微減となっている。
こうしたことから、2018年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比0.5%減の6,477億35百万円となった。
症例数に比例して市場は形成されており、2019年度の整形外科領域は脊椎固定システムをはじめ人工関節、人工骨等の続伸から引き続きプラス成長を見込み、胸部・心臓血管外科分野では、TAVI・TAVR、Stent Graftといった経皮的・MIS的手技の製品群が高成長し、透析分野では引き続きHDF採用患者の増加等が市場を牽引することで、2019年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場規模を、前年度比2.3%増の6,627億88百万円になると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2019年5月~2020年3月
2.調査対象: 国内メーカー及び輸入製品の総発売元(製造業・製造販売業)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに電話取材調査併用
<メディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは>
本調査におけるメディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは、病院やクリニック、検査センター等で使用される体内植込み型及び関連装置の医療機器を指し、インプラント材や体外循環関連装置・製品(主要34項目、68製品)によって構成される。
主に、胸部・心臓血管外科系循環器系分野では人工心肺や人工血管、ペースメーカー、人工弁等、整形外科分野では人工関節や人工骨、人工靭帯、各種プレート、その他では人工腎臓(透析)、皮膚欠損用創傷被覆材、人工肛門・膀胱(ストーマ装具)、各種ステント製品等が該当する。
<市場に含まれる商品・サービス>
人工心肺装置及び関連製品、心臓関連治療製品、ペースメーカー、植込型除細動器/両室ペーシング機能付除細動器(埋込型頻拍性不整脈治療装置)、人工弁、人工弁輪、人工血管、補助人工心臓セット、血管系メタリックステント、各種補填材料・補綴材料、人工関節、骨セメント(ボーンセメント)、内固定材、ミニ・マイクロプレートシステム、創外固定器、脊椎固定システム、人工靱帯・固定材料、人工骨(人工補填材料・人工補綴材料)、皮膚欠損用創傷被覆材・真皮欠損用グラフト、組織拡張器、人工鼻、コラーゲンインプラント、胆管メタリックステント(胆道用メタリックステント)、食道・消化管ステント、気管・気管支メタリックステント・チューブ、人工喉頭・電気式発声器、尿道ステント/BPH(前立腺肥大症)治療用メタリックステント、人工腎臓透析市場、人工肛門・人工膀胱(ストーマ装具)、人工内耳(セット)、脳動脈瘤手術クリップ、シャントバルブ、(カテーテルアクセス)ポート・CAP、止血・接着材(剤)

出典資料について

資料名2019年版 メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析
発刊日2020年03月31日
体裁A4 780ページ
定価120,000円(税別)

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