
「話題のAIレコメンドについて知りたい」「自社ECにAIレコメンドを導入するには何から始めるべき?」
EC市場の競争が激化する中、自動でユーザーに最適な提案を行う「AIレコメンド」の活用が注目を集めています。AIレコメンドシステムとは、AIを活用してユーザーにとって関連性の高い商品などを自動的におすすめするシステムです。ユーザーの新規獲得や顧客満足度の向上など、EC運用にさまざまなメリットをもたらします。
本記事では、AIレコメンドシステムの基本的な仕組みや導入方法について紹介します。AIレコメンドシステムの導入メリットも説明するので、AIレコメンドシステムの導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
AIレコメンドシステムとは?4つの仕組み
AIレコメンドシステムとは、AIを活用してユーザーの行動履歴や属性情報などを分析し、一人ひとりに最適な商品やコンテンツを推薦するシステムです。まずはAIレコメンドシステムの基本的な仕組みについて紹介します。
仕組みを理解できれば、活用方法をイメージしやすいはずです。ここでは、AIレコメンドシステムの以下の仕組みについて紹介します。
- 協調フィルタリング
- ルールベース・レコメンド
- コンテンツベース・フィルタリング
- ハイブリッド・レコメンデーション・システム
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、ユーザー同士の「行動の共通点」をもとにおすすめを導き出すレコメンド手法です。例えば、「ユーザーAとユーザーBが過去に同じ商品を購入した経歴があれば、新たにユーザーAが購入した商品をユーザーBにもおすすめする」といったイメージです。
この方法では、商品そのものの特徴ではなくユーザーの行動パターンに着目しています。協調フィルタリングはAmazonやNetflixなどの大手サービスでも採用されており、多くのユーザーが使うほどデータが蓄積され、レコメンド精度が高まります。
購入履歴や閲覧履歴などを活用するためパーソナライズ精度が高い一方、新規ユーザーやレビュー数の少ない商品には適用しにくい可能性があるため、小規模ECサイトへの導入は十分に検討すべきです。
ルールベース・レコメンド
ルールベース・レコメンドは、あらかじめ設定した条件やルールに基づいて商品を提案する方式です。「ある特定の商品をカートに入れたら、関連商品AとBをおすすめ表示する」というように、企業側が設計したルールに従ってレコメンドします。
ほかのレコメンドの仕組みと比べても実装が簡単なので、AIレコメンドの導入経験がない場合にもおすすめです。また、ビジネス的に販売を促進したい商品をレコメンドできるので、売り上げのコントロールをしたい場合にも適しています。
ただし、ルールのメンテナンスや更新は人手に頼る部分が多く、コストがかかりやすい傾向にあるため注意が必要です。
コンテンツベース・フィルタリング
コンテンツベース・フィルタリングは、ユーザーが過去に閲覧・購入した商品の特徴をもとに、似た特徴を持つ商品を提案する仕組みです。例えば、あるユーザーが「赤いスニーカー」を好んで購入していれば、同じような色や形、カテゴリのスニーカーをおすすめするようになります。
この方式では商品そのものの情報を活用するため、ユーザーが明確な嗜好を持っていれば効果的に販促できます。また、商品の特徴が共通していれば新商品から定番商品まで満遍なくレコメンドされるのも特徴の一つです。
ただし、似たような商品ばかりがレコメンドされやすく、新しいジャンルの提案にはやや弱い傾向があるため、ユーザーが飽きを感じないような工夫が求められます。
ハイブリッド・レコメンデーション・システム
ハイブリッド・レコメンデーション・システムは、複数のレコメンド手法(協調フィルタリング、コンテンツベース、ルールベースなど)を組み合わせて、より高精度な提案を実現する方法です。例えば、通常は協調フィルタリングを用いながらも、ユーザーデータが少ない新規顧客にはコンテンツベース・フィルタリングを適用するといったように、状況に応じて手法を使い分けて弱点を補い合います。
特に、ECサイトのように扱う商品が多様でユーザー層が幅広い場合には、単一の手法では限界があります。複数の手法を組み合わせることで、商品を効率的にレコメンドできるでしょう。
最近ではAIが各手法の出力比率を自動で調整する仕組みも進化しています。運用側の負担軽減にも、AIの活用は有効です。
AIレコメンドシステムと従来型のレコメンドシステムとの違い
従来型のレコメンドシステムと比べると、AIレコメンドシステムはさまざまな点で進歩しています。なかでも大きな違いが、自動学習と予測能力です。
従来型のレコメンドシステムは、あらかじめ人間が設定したルールや条件にもとづき、「Aを買った人にBを提案する」といった静的な提案を行うものでした。そのため、設定済みの内容しかレコメンドできず、柔軟性に欠ける点がネックとされていました。
一方、AIレコメンドはユーザーの行動履歴や属性、文脈情報をAIがリアルタイムで自動学習し、最適な商品をレコメンドします。ディープラーニング技術の進化により、ユーザーが気づいていないニーズや気分に基づく提案も可能です。
近年はAIの予測能力も精度が高まっているため、よりユーザーの好みに適した提案が可能です。AIの自動学習と予測能力によって、ECサイトのレコメンドに関する業務負担は大幅に軽減できるでしょう。
EC運用にレコメンド機能を実装したい場合には、AIレコメンドシステムの導入がおすすめです。
AIレコメンドシステムの導入方法
EC運用にAIレコメンドシステムを導入する際は、自社に合った手法を選ぶことが重要です。一般的な導入方法としては、以下の2種類に大別されます。
- ASP(Saas型)
- オープンソース型
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ASP(SaaS型)
ASP(SaaS型)とは、クラウド上のサービスを利用してAIレコメンド機能を導入する方法です。代表的なSaaS型レコメンド機能付きマーケティングツールとしては「Rtoaster」や「NaviPlus」、「KARTE」などがあり、月額料金を支払うことでAIレコメンド機能を利用できます。
ASP(SaaS型)のAIレコメンド機能は、開発・導入の手間を大幅に軽減できる点がメリットです。タグの設置や商品フィードの連携だけでAIによる提案機能をサイトに反映できるため、手軽にAIレコメンド機能を導入したい企業や、エンジニアのリソースに限りがある企業に向いています。
ただし、カスタマイズ性には制限があることが多く、自社独自の要件に合わせた細かな調整には不向きな場合もある点にご注意ください。
オープンソース型
オープンソース型は、自社サーバーやクラウド環境にソフトウェアを導入し、独自にカスタマイズ・運用していく方式です。代表的なオープンソースには、かつて広く使用された「PredictionIO」(現在は開発終了)、Pythonベースのアルゴリズム実装ライブラリ「LightFM」や「Surprise」などがあります。
ASP(SaaS型)と比べると柔軟なカスタマイズが可能なので、自社独自のロジックや設計でAIレコメンドを運用したい場合におすすめです。
ただし、初期導入にはエンジニアリングスキルが必要不可欠になります。データ整備やモデルのチューニング、運用体制の構築など、内製化の負担は大きくなるでしょう。
また、セキュリティ面やパフォーマンスの最適化にも配慮しなければなりません。そのため、中〜大規模ECサイトや技術に強い企業には特におすすめの導入方法です。

AIレコメンドシステムを導入するメリット
EC運用にAIレコメンドシステムを導入するメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- CVRの向上
- ユーザーの利便性向上
- アップセルやクロスセルの促進
それぞれ詳しく見ていきましょう。
CVRの向上
AIレコメンドシステムの最大の導入メリットのひとつが、CVR(コンバージョン率)の向上です。AIレコメンドシステムは、ユーザーの閲覧履歴や購入傾向をもとに、一人ひとりに合わせた商品をリアルタイムに提案できます。
ユーザーの好みに合う商品を提案し続けることで、関心が高い商品への導線が整うため、売り上げや顧客満足度の向上が期待できます。また、初回訪問ユーザーには離脱防止効果が期待でき、再訪ユーザーにはスピーディな提案が可能になります。
AIによって「出会うべき商品」と「出会えるタイミング」が最適化されることで、より多くのユーザーを獲得できるでしょう。
ユーザーの利便性向上
AIレコメンドは、膨大な商品数の中からユーザーに合うアイテムを短時間で提示してくれるため、スムーズでストレスのない購買行動を可能にします。つまり、ユーザーにとっての利便性向上につながるのです。
特にスマホユーザーにとっては、スクロールや絞り込みに時間をかけずに欲しいものへ辿り着けることが、満足度の向上につながります。過去に購入したサイズや好みのジャンルをもとにした提案、季節やトレンドを反映したおすすめなど、細かいニーズに合わせたレコメンドは、ユーザーからの信頼を高めます。
利便性が高まることでサイト滞在時間や回遊性も向上し、CVRやリピート率も高くなる好循環を生み出せるでしょう。
アップセルやクロスセルの促進
AIレコメンドは、アップセル(より高価格な商品の提案)やクロスセル(関連商品の追加提案)を自動で行う販売促進ツールとしても機能します。例えば、ユーザーがスマートフォンをカートに入れた際に、AIがケースや保護フィルム、ワイヤレスイヤホンなどを即座に表示することで、追加購入を自然に促せます。
従来はマニュアル設定が必要だったこれらの提案も、AIならユーザー情報を分析して、内容とタイミングを最適化することが可能です。ユーザーにとって押しつけ感のない提案ができるので、心地よい買い物体験を提供できるでしょう。
特に、複数カテゴリを扱うECサイトの場合は、AIによる適切な提案が売り上げアップのカギとなります。ユーザーが見つけられなかった別カテゴリの商品をAIが自然に提案することで、購入のきっかけとなるでしょう。
ECサイト特有のAIレコメンド機能を紹介
AIレコメンドシステムは、ECサイトの運用効率化や顧客満足度の向上に有効です。ECサイト運用に有効な機能としては、以下のようなものがあります。
- AIレコメンドによるCX(顧客体験)の改善
- 離脱防止型レコメンド
- ランキング風レコメンド機能
CX(顧客体験)の改善とは、ユーザーが過去に見た商品やカテゴリをもとに、関心が高そうなアイテムを再提案することで、再訪時の購入率を高めることを意味します。さらに、カートに追加された商品に合わせて、関連性の高い商品を自動表示し、自然なクロスセルを促進することも可能です。
ページ離脱の直前に人気商品や期間限定アイテムなどを表示して引き止めを図る離脱防止型レコメンドや、話題の商品を演出するランキング風のレコメンド機能もECサイトの運用には有効です。
このようなAIレコメンドシステムは、ECサイトにおけるユーザーの買い物体験をより高められます。EC売り上げの向上にも、AIレコメンドシステムの活用がおすすめです。

AIレコメンドシステムの活用例
AIレコメンドシステムはすでにさまざまなサービスで活用されています。大手サービスの活用事例の一部を以下の表にまとめました。
プラットフォーム | 主なレコメンド機能 | 実績・KPIインパクト |
Amazon | ・商品詳細ページ
・カート/メールでのクロスセル・アップセル |
総売上の35%がレコメンド経由と推定 |
Walmart | ・AI検索で「用途ベース」商品束を提示
・パーソナライズ広告/プロモーション |
ショッパーセグメント導入でCVR +6.2 %、導入した91 %が CVR改善を報告 |
楽天市場 | ・ホームの「あなたにおすすめの商品」
・ビジュアル検索→類似アイテム提案 |
パーソナライズ導入店舗で平均CVR +12〜18 %になった事例あり
(参考:Inside Rakuten AI: Guangda Li on reinventing customer experiences with GenAI_Rakuten Today) |
どのサービスも、AIレコメンドシステムを導入したことで大きく利益を増やすことに成功しています。もちろん、AIレコメンドシステムの導入は大手サービスだけでなく、中小規模のECサイト運用にも有効です。
EC運用の効率化や売上向上を目指す場合は、ぜひAIレコメンド機能を導入してみてください。
AIレコメンドシステムの導入はfutureshopにご相談ください
future AI Recommendは、フューチャーショップが展開するECサイト運用に特化したAIレコメンドシステムです。
このレコメンド機能は、ECサイト内でのユーザーの訪問・閲覧・購入といった行動をリアルタイムで分析します。お客様がサイトに訪問し、商品を閲覧・購入するたびに、顧客行動履歴データ(閲覧履歴や購入履歴など)が蓄積されます。
データが増えるほど、お客様一人ひとりに最適な商品を自動で提案できるようになっていく成長性の高いシステムです。さらに、future AI Recommendで利用しているAIは、「Conata™ 」を採用しています。
「Conata™ 」は、Tポイントや蔦屋書店のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、NTTドコモなどで既に導入・成果が実証済みのAI搭載のデータ活用プラットフォームです。
数々の有名企業で導入実績のあるAIが、ECサイトのレコメンド機能の改善・向上を目指します。
そんなfuture AI Recommendが提供するレコメンド機能は以下の3点です。
AIレコメンド | 特徴 |
行動履歴ベースレコメンド | ・顧客が「過去」閲覧した商品に合わせて最適な商品をおすすめします。
・顧客の目的が定まっていない場合、トップページなどに掲載すると効果的です。 |
閲覧商品ベースレコメンド | ・顧客が「今」閲覧している商品に関連して最適な商品をおすすめします。
・主に、商品詳細ページなどに掲載すると 効果的です。 |
購入商品ベースレコメンド | ・顧客が「購入した商品」「購入しようとしているカート内商品」に合わせて最適な商品をおすすめします。
・主に、購入完了ページなどに掲載すると効果的です。 |
このほかにも、カテゴリに絞ったレコメンドや除外表示を可能にする「フィルタ機能」や7種類から選べるルールベース・レコメンド、レコメンドの効果を確認するレポートなど、豊富な機能で快適なEC運用をサポートします。
詳しくは以下のページをご覧ください。

まとめ
AIレコメンドシステムはECサイトの運用にも有効です。ユーザーの行動データをもとに最適な商品を提案することで、CVRや客単価の改善、リピーター獲得といった効果が期待できます。
まずは自社に合った最小限の形で導入し、データを活用しながら改善を重ねていくことがおすすめです。ECサイトにおけるAIレコメンドの導入に興味がある場合は、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。
また、ECサイトへのAIレコメンドシステム導入にお困りの方は、futureshopにご相談ください。