
目次
- 香川県多度津町で3つの工場を運営 小型から大型まで多種多様な油圧装置をオーダーメイドで設計製作 事業を通じて社会課題の解決に貢献
- 需要増加に対して、2026年12月の完成を目指して多度津町内に新工場の建設を計画 最新鋭の工作機械を導入して生産能力を増強する
- 1992年に株式会社化 社名を「ユニゾン(調和)」と「コンペティション(競争)」の二つの単語を組み合わせてユニコムとした
- 3D-CADモデルによる設計業務の高度化による顧客の信頼向上と、属人化解消・チームのスキルアップで顧客ニーズの多様化に備える
- 2020年に販売管理システムを入れ替えることで、在庫状況の把握も瞬時にでき、顧客への対応力が大幅に上がった
- 複合機により文書のペーパーレス化を進め、会社見学者向けにも貼り紙でなくデジタルサイネージにより、見学者へのメッセージを表示することも可能になった
- 「美点凝視」の精神で月に1回、従業員全員でコミュニケーションを取る時間を設けるなど物心両面から人材を育成
- 従業員は9割近くが異業種での就労経験者 会長自ら油圧技術を入社した人に伝授 組織横断型の9つのプロジェクトチームの活動が会社を元気にしている
- 福利厚生、研修制度、柔軟な働き方に対する取り組みが高い評価を受け、「かがわ働き方改革推進大賞」を受賞
- 強く、そして愛される世界に冠たる油圧総合メーカーを目指す
大きな力を生み出す産業機械や建設機械の心臓部として重要な役割を担う油圧装置。香川県仲多度郡多度津町に生産拠点を置くユニコム株式会社は、創業から45年近い歴史を通じて油圧に関する高度な技術を蓄積してきた国内トップクラスの油圧専業メーカーだ。油圧装置の設計から製造、据付、メンテナンスまで一気通貫で対応している。社会の脱炭素化の流れを受けて高度な油圧技術へのニーズが高まる中、積極的な設備投資を行うと共に生産性を向上させるツールとしてデジタル技術を活用している。(TOP写真:油圧装置を製造しているユニコムの本社工場の様子)
香川県多度津町で3つの工場を運営 小型から大型まで多種多様な油圧装置をオーダーメイドで設計製作 事業を通じて社会課題の解決に貢献

臨海工業団地を中心に、造船やエレクトロニクスなどの工場が集積している香川県中央部に位置する多度津町。ユニコムは、同町内で本社を構えると共に、高度な品質マネジメントシステムの認証を受けた3つの工場を運営している。本社工場では国内外の機械メーカーから委託を受け、オーダーメイドで小型から大型の油圧装置を幅広く製造。別の工場では、油圧装置の中央ハブとなる部品、マニホールドブロックを製造している。ユニコムが手掛けた製品は、造船、環境、建設、機械、食品、発電といった様々な産業分野で活用されている。

「油圧装置に対するお客様の要望は、小さな力を大きな力に変える従来の油圧の機能だけでなく、省エネ、省スペース、高精度、長寿命など多様化しています。この状況は油圧に関する高度な技術を蓄積してきた弊社にとって大きなチャンスと捉えています。事業を通じて環境問題を含めた社会課題の解決にしっかりと貢献していきたいと考えています」。ユニコムの本社で取材に応じた藤原康雄代表取締役社長は、これからのビジョンを力強く語った。
需要増加に対して、2026年12月の完成を目指して多度津町内に新工場の建設を計画 最新鋭の工作機械を導入して生産能力を増強する
ユニコムは現在、同町内のマニホールドブロックを製造する工場の隣接地で、2026年12月の完成を目指して新工場を建設している。また、マニホールド工場には最新鋭の工作機械を導入。需要が高まっている油圧装置、マニホールドブロックの生産能力を増強する。現在の本社工場の生産機能を新工場に移した上で、現在の本社工場は船舶用二重配管システムの生産拠点として活用する。また、本社機能を新工場に移転すると共に販売管理システムや生産管理システムを更新し、業務のDXを加速することを考えている。「最新鋭の生産拠点を効果的に活用することで、これまで以上に高い品質の製品とサービスをお客様に提供していきたい」と藤原社長。
1992年に株式会社化 社名を「ユニゾン(調和)」と「コンペティション(競争)」の二つの単語を組み合わせてユニコムとした
ユニコムの歴史は、前身の有限会社讃州機工が1981年に大手企業の代理店として、ステンレスコーティング材の販売を開始したことにさかのぼる。その後、現会長の藤原了氏は1984年に油圧機器販売、油圧装置の設計、製作を開始した。その後も同町内で工場を新設しながら着実に事業を拡大。1992年に株式会社化するとともに社名を現在のユニコムに改めた。ユニコムは「ユニゾン(調和)」と「コンペティション(競争)」の二つの単語を組み合わせた造語で「厳しい競争の中で切磋琢磨すると同時に調和を求め、成長を続けていく」との思いを込めているという。藤原了氏は2021年、代表取締役社長の役職を娘婿の藤原康雄氏に委ね、新体制をスタートさせた。

ユニコムは、中国の古典「大学」の一節から引用した「修身 斉家 治国 平天下」を社是としている。「世界の平和的発展も国を治めることも家を斉(おさ)めることも、全ては己自身を修めることからしか実現し得ない」との意味を持つ名言を通じて、社会のために働く意義を常に考えている。また、藤原社長は2021年に就任した後、新たな経営理念として「全社員の物心両面の幸福を追求します。仕事を通じて人格を高め、一隅を照らす人材となり、業界の進歩発展並びに地域社会と日本の繁栄に貢献します」を制定した。
3D-CADモデルによる設計業務の高度化による顧客の信頼向上と、属人化解消・チームのスキルアップで顧客ニーズの多様化に備える
ユニコムは、工場の設備投資を着実に進める一方で、業務を効率化するためにデジタル機器やデジタルサービスの活用にも力を入れている。「デジタル技術の活用は、顧客ニーズの多様化に備える事と、仕事の属人化を解消しチームのスキルアップを図る上で必要不可欠なツールと考えています」と藤原社長は話した。
設計業務では、国内メーカーが開発した機械装置向けの3D-CADを2020年から活用している。3D-CADは、設計物の立体形状を画面上で把握できるだけでなく、体積、表面積、質量、重心などのデータも瞬時に計算できる。2D-CADと比較して設計作業を効率化できるだけでなく、部品同士の干渉も実際に製造に取り掛かる前にチェックすることができる。ユニコムが活用している3D-CADは、直感的な操作で、ラフスケッチから簡単に立体形状を作成できる機能を備えており、マニホールドブロックの流路形状など複雑な設計をする際に重宝しているという。顧客への提案力も格段にアップし信頼アップにつながっている。
2020年に販売管理システムを入れ替えることで、在庫状況の把握も瞬時にでき、顧客への対応力が大幅に上がった

基幹業務では、使いやすい情報検索機能を備えた販売管理システムを2020年に導入した。導入以前に使っていた販売管理システムには検索機能が備わっていなかったため、部材の発注や入荷状況、受注や出荷状況についての情報は、システムに入力した情報をプリントアウトした上で、紙ベースで管理していたという。そのため、部材の在庫状況などを確認する際は時間と手間がかかり、担当者の悩みの種になっていた。新しい販売管理システムを導入してからは検索機能のおかげで、時間をかけずに必要な情報を把握できるようになったことに加え、定期的に発注する部材の在庫管理もしやすくなったという。データの移行もCSVファイルを通じてスムーズに行うことができたという。これにより顧客への在庫問い合わせにスムーズに応えることができるようになった。
複合機により文書のペーパーレス化を進め、会社見学者向けにも貼り紙でなくデジタルサイネージにより、見学者へのメッセージを表示することも可能になった

ユニコムは、ほかにも複合機のスキャン機能を使って紙文書をデジタル化してペーパーレス化を推進している。パソコンからの印刷指示を従業員のIDに応じて振り分けて複合機に蓄積するアプリケーションも活用。複合機のパネルで内容を確認してから印刷する仕組みを整えることで無駄な印刷を削減している。工場内にはデジタルサイネージを設置し、工場見学者に合わせたメッセージや、社内外への地域のイベントの情報などを表示している。
「美点凝視」の精神で月に1回、従業員全員でコミュニケーションを取る時間を設けるなど物心両面から人材を育成
ユニコムは、会社の成長を持続する経営基盤を整える上で物心両面からの人材育成を大事にしている。「美点凝視」の精神でお互いの素晴らしいところを見つけて認め合う「社内木鶏会」の活動を社内に取り入れ、月に1回、従業員全員が参加してコミュニケーションを取る時間を設けている。「部署の垣根を越えて普段、職場で顔を合わすことが少ない従業員同士で、自らの考え方や意見を前向きに伝え合い、交流を深めています。回数を重ねるごとに社内全体の連携が取りやすくなるという大きな効果を生み出しています。知識や技術だけでなく人間力も高い人材を育てていきたいと考えています」と藤原社長は穏やかな表情で話した。
従業員は9割近くが異業種での就労経験者 会長自ら油圧技術を入社した人に伝授 組織横断型の9つのプロジェクトチームの活動が会社を元気にしている

ユニコムは「社内木鶏会」以外でも組織横断型のプロジェクト活動に力を入れている。油圧技術の教育、安全管理、品質管理、業務改善、BCP、採用、厚生、5Sといった計9つのプロジェクトチームが現在活動し、それぞれのチームは従業員が自発的に運営している。複数のプロジェクトチームに参加する従業員も多いという。ユニコムの従業員は9割近くが異業種での就労経験者で、油圧について初歩から学んだ自らの経験を基に技術や知識を新しく入社した人に伝授している。異業種からの人材確保だけでなく、新卒従業員の採用も毎年行っている。油圧装置調整技能士の特級・1級・2級の資格取得の勉強会を開催するなど従業員のスキルアップを図る機会を積極的に設け、今後はICTやDXについての研修にも力を入れていきたいという。
福利厚生、研修制度、柔軟な働き方に対する取り組みが高い評価を受け、「かがわ働き方改革推進大賞」を受賞

福利厚生では、時短勤務、財形貯蓄、退職金などで充実した制度を設け、1年に1回、家族や友人を共にしたコンサート、食事に活用できる「リフレッシュチケット」を配布している。勤続10年、20年のタイミングで旅行チケットを支給する制度も設けている。また、従業員の家族を招いて職場を見学してもらうイベント、ユニコムフェアも年に1回程度のペースで開催している。これら一連の充実した福利厚生、研修制度、看護休暇や介護休暇の導入など柔軟な働き方に対する取り組みは高い評価を受け、ユニコムは、香川県が実施する2024年度の「かがわ働き方改革推進大賞」を受賞した。
強く、そして愛される世界に冠たる油圧総合メーカーを目指す

高度な油圧技術を強みに地元ファーストで着実に事業を拡大しているユニコム。雇用創出を通じて地域経済の活性化にこれからも貢献し、デジタル技術の効果的な活用を通じて人材育成の取り組みの更なる充実を図る。「開発能力を強化して循環型社会の実現につながる自社のオリジナル製品を社会に提供していきたい」と藤原社長は先を見据える。ユニコムは、強く、そして愛される世界に冠たる油圧総合メーカーを目指してこれからも改革に取り組む。
企業概要
会社名 | ユニコム株式会社 |
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本社 | 香川県仲多度郡多度津町堀江3丁目7番15号 |
電話 | 0877-56-6068 |
設立 | 1992年5月(創業1981年) |
従業員数 | 90人 |
事業内容 | 油圧ユニットの設計・製作、マニホールドの設計・製作、油圧機器及び付属機器の販売、高圧ホース・継手製作・販売、油圧装置の改善・改造工事及びメンテナンス、油圧機器の分解整備、油圧装置の据付工事及び油圧配管工事、機械加工、各種水門・ゲートの現地据付工事及び潜水作業 |