PoC(概念実証)とは?実施ステップや成功のポイントをわかりやすく解説

目次

  1. PoC(概念実証)とは
  2. PoCと関連用語の違い
  3. PoCを実施・活用する3つのメリット
  4. PoCを実施・活用するデメリット
  5. PoC実施の4ステップ
  6. PoCで検証すべき観点
  7. PoCを成功させるためのポイント・注意点
  8. まとめ

PoC(概念実証)は、新技術やアイデアの実用性を検証する重要なプロセスです。この記事では、PoCの意味や「PoV」「PoB」の関連性、関連用語との違い、実施ステップ、成功のポイントを解説します。新規事業やサービス導入を検討している企業担当者は、参考にしてください。

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PoC(概念実証)とは

PoC(Proof of Concept)とは、「概念実証」と訳されるもので、新しい技術やアイデアが本当に機能するかを確認するための検証作業です。開発に入る前の段階で試作やデモを行い、技術的な効果や有用性を見極めます。

例えば、AIやIoTなどの新技術を導入する際や、セキュリティシステムの構築、新しいサービスの立ち上げなどで、PoCは重要なステップとして活用されます。

PoCと「PoV」「PoB」の関連性

PoCは、狭義には「技術的に実現できるかどうか」を検証するものですが、広義には「ユーザーにとって価値があるか」「ビジネスとして成り立つか」といった点まで含めた検証を指します。広義のPoCは、PoV(Proof of Value)、狭義のPoC、PoB(Proof of Business)の3つの要素に分けて考えられます。

PoVは、事業がユーザーにとって価値やニーズがあるかを検証するものです。PoBは、収益性やコスト構造などから事業として成立するかを確認します。

PoCと関連用語の違い

PoCの理解を深めるためには、関連用語との違いを把握することも大切です。以下で、関連用語との違いについて解説します。

PoCと実証実験の違い

PoCは、技術や概念の実現性を確認する工程です。対して、実証実験は実際の環境で製品やサービスを運用し、実用化に向けた課題を検証することを意味します。ただし、PoCで課題が見つかることもあるため、両者を同じ意味で使う場合もあります。

PoCとプロトタイプの違い

PoCは実現できるかどうかを探る初期段階の検証であり、方向性や目標を定めるためのプロセスです。一方、プロトタイプは実現性があると見込まれた後に、具体的な試作品を作る段階です。目的が異なるため、通常はPoCを経てからプロトタイプを作ります。

PoCとMVPの違い

MVP(Minimum Viable Product)とは、必要最小限の機能だけを備えた製品のことです。市場やユーザーの反応を見ながら改善を重ねる開発手法で、PoCとは目的が異なります。しかし、検証の一環としてMVPが使われることもあり、PoCに含める考え方もあります。

PoCを実施・活用する3つのメリット

PoCを実施・活用するメリットは、主に3つあります。以下で、それぞれについて詳しく解説します。

コスト・工数の削減

PoCの主なメリットは、無駄なコストや工数を抑えられることです。PoCを実施すると、不確実性を早期に確認できます。社会や消費者のニーズに合うか、方向性が合っているかを把握できるため、開発や製造のコストを抑えやすくなります。

また、小規模で行うPoCは、低コストで大きな効果を得られるため、開発や製造の進め方を見極めるのに役立ちます。製品化では価格が重要で、原価が高くなると販売価格も上がり、売れ行きに影響します。PoCで費用対効果を検証すれば、本格開発に入る前にリスクを減らし、大きな損失を防ぐことが可能です。

リスクの抑制

開発リスクを抑えられる点も、PoCを実施・活用するメリットです。実物の使用や実際の環境で検証することで、技術やサービスの動作確認や使い勝手の評価、投資に対する効果までシミュレーションできます。これにより、本格的な開発や市場投入の際に起こりうるリスクを事前に抑制可能です。

円滑な意思決定・投資家からの評価

PoCのメリットとして、意思決定をスムーズに進められる点も挙げられます。PoCによって技術的な課題がないことや、期待する効果が得られることを実証できれば、導入後のメリットや実装イメージを関係者に明確に伝えられます。

その結果、経営層や外部投資家といった意思決定者の理解が得られやすくなり、プロジェクトの採用や投資判断を促す材料として有効に活用できます。

PoCを実施・活用するデメリット

PoCを実施・活用するメリットもあれば、デメリットも生じます。以下で、2つのデメリットについて解説します。

コストが増幅する可能性

PoCのデメリットの1つは、検証回数が増えるとコストも増えることです。想定パターンが多いと検証規模が拡大し、コストもかさみます。コストの増幅を防ぐには、PoCの目的を事前に明確にし、必要なプロセスを絞り込むことが重要です。

情報漏えいのリスク

PoCが進むと、情報漏えいのリスクが高まります。特に他社と協業する場合は、自社の技術やアイデアを守るために、PoC契約やNDAの締結が重要です。また、パートナー選びはトラブル防止だけでなく、プロジェクトの進行速度や柔軟性にも関わるため、慎重に行う必要があります。

PoC実施の4ステップ

PoCを実施する際には、4つのステップを踏む必要があります。以下で、4つのステップについて解説します。

1.課題・目的の明確化

まずは、PoCで検証する課題や目的、達成したい成果を具体的に明確化します。PoCの実施自体が目的にならないようにし、目標達成後の状態をイメージしておくことが重要です。どのようなデータを収集し、結果が出れば成功と判断できるかを事前に整理しておきましょう。

2.検証方法・内容の設定

課題を解決するために必要な検証方法や手順、収集・分析すべきデータを具体的に決めます。開発者視点だけでなく、利用者の視点も取り入れながら、複数のアイデアの実現可能性を比較検証すると効果的です。複数の案を比較し、最も効果的な方法を選定した上で、詳細な進め方や簡易版のプロトタイプも準備しましょう。

3.実験や検証の実施

実際の環境に近い状況を用意して検証を行います。対象者は多様な層や立場から選ぶことで、より客観的で信頼性の高いデータを得られます。これにより、今まで見えなかったリスクも明確になります。数値データだけでなく、使用感やユーザーの反応など、定性的な情報も記録することも大切です。

4.結果の評価

PoCで得られた結果をもとに、投資対効果やリスク、技術の実用性などを客観的に評価します。その際、小規模な検証の場や機会を設けて成果を関係者と共有し、コミュニケーションを密にとり、PoCに積極的に取り組める環境を整えましょう。結果が期待した投資効果に達していなければ、再度検証を行い、改善策や対策を検討することが重要です。

PoCで検証すべき観点

PoCでは「価値」「技術」「事業性」の3つの視点で実現性を検証します。一般的に、まず「価値」を確認し、その後「技術」と「事業性」をチェックします。

  • 価値の検証:顧客やユーザーにとっての課題やメリット、技術の必要性を確認する
  • 技術の検証:技術の実現可能性や効果、品質、仕様を評価する
  • 事業性の検証:費用や費用対効果を踏まえ、事業として成り立つかを判断する

PoCを成功させるためのポイント・注意点

PoCを成功させるためには、押さえておくべきポイント・注意点があります。以下で、詳しく解説します。

スモールスタートで実施する

PoCを成功させるためには、スモールスタートで実施することが重要です。スモールスタートとは、新しい事業を始める際に、機能や規模を絞って小さく始め、状況を見ながら段階的に広げていく手法です。企業の目的に合わせて確実にシステムを構築するために、まずは小規模から始めて効果を確認し、段階的に拡大していきましょう。

明確なゴールやルールを設定し共有する

PoCを成功させるためには、ゴールやルールを明確かつ適切に設定することが大切です。ゴールやルールが明確になっていれば、PoCが手段ではなく目的化してしまうのを防げます。収集したデータは意思決定や開発に活かすことが可能です。PoCの長期化を避けるためにも、期間や撤退基準をあらかじめ定めておきましょう。

運用現場に条件を合わせて検証する

PoCで有効なデータを得るには、本番に近い環境で検証を行うことが重要です。実際の運用と異なる条件では、実態とかけ離れた結果になる恐れがあります。また、実際の利用者視点も欠かせません。ユーザーや現場に近い関係者からのフィードバックを受けながら、検証を進めることで、より実践的な成果が得られます。

まとめ

PoCは、新たな技術やアイデアの実現可能性を現場で確かめるための重要なステップです。目的を明確にし、段階的に進めることで、無駄な投資を防ぎ、成功確率を高められます。PoCを活用して実現可能性と事業性を見極め、より確実な意思決定につなげましょう。

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