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聞くに聞けない経営用語集vol.1ビジネスよく耳にする経営用語の意味、ちゃんと理解して使っていますか?用語の使い方や、似ている用語の違い、中小企業経営に役立つ情報もあわせて解説した、経営用語集を無料配布中!関連資料をダウンロードする
ビジネスシーンにおいて、しばしば「ステークホルダー」という言葉を目にします。何となく使っているものの、詳しい意味や正確な使い方をあらためて確認しておきたい方も多いのではないでしょうか。 今回は、ステークホルダーの正しい意味や具体的な使い方、企業にとっての重要性についてわかりやすく解説します。中小企業がステークホルダー分析に取り組む意義や、効果的に信頼関係を築いていくためのポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ステークホルダーの意味
はじめに、ステークホルダーの意味について解説します。ストックホルダーやシェアホルダーとの違いとあわせて確認しておきましょう。
一言で表すと「利害関係者」のこと |
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ステークホルダーを一言で表すと、「利害関係者」のことです。ビジネスシーンで用いられる場合には、企業活動に関係するすべての利害関係者のことを表します。 ここでいう利害関係者は、利益や損失といった金銭的な意味合いにとどまりません。企業活動によって直接的・間接的に何らかの影響を受けるすべての人や組織が含まれています。
ストックホルダー/シェアホルダーとの違い |
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ステークホルダーと似た用語に「ストックホルダー」や「シェアホルダー」があります。 ストックホルダーとは株を所有している人、つまり株主のことです。ストックホルダーも企業活動の影響を受ける利害関係者であることから、ステークホルダーに含まれます。 シェアホルダーも株主を表す言葉ですが、その中でもとくに議決権を有する大株主のことを指す場合があります。シェアホルダーも、当然ながらステークホルダーの1つです。
直接的ステークホルダーと間接的ステークホルダー
ステークホルダーには、大きく分けて「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」が存在します。企業活動との間に直接的な影響を受ける/与える関係がある人や組織は直接的ステークホルダー、間接的な利害関係のある人や組織を間接的ステークホルダーといいます。一般的な分類例は下記のとおりです。
直接的ステークホルダー
・株主・投資家 ・顧客・取引先 ・従業員 ・グループ会社・関連会社 ・債権者 |
間接的ステークホルダー
・地域社会 ・利益団体 ・行政機関 ・マスメディア |
上記のように、利害関係が顕在化しているのは主に直接的ステークホルダーです。一方で、間接的ステークホルダーは重要度が低いわけではありません。企業活動には幅広い利害関係者が存在し、常に評価の対象となっている点を認識しておくことが大切です。
ビジネスシーンにおける「ステークホルダー」の使い方9選

ビジネスシーンでステークホルダーという言葉を用いる場合、どのような使い方が適しているのでしょうか。シーンごとに使い方の具体例を見ていきましょう。
使い方1:株主・投資家を指すケース |
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株主や投資家は企業に出資している方々であり、会社の実質的な所有者に当たります。よって、自社にとって非常に重要なステークホルダーです。具体的な使用例を紹介します。
例1:「ステークホルダーの利益の最大化につながる経営戦略を策定するべきだ」
例2:「株主総会では、ステークホルダーに納得していただける説明が求められる」
使い方2:顧客・取引先を指すケース |
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自社の商品・サービスを購入・利用している顧客や、取引している事業者もステークホルダーに含まれます。安定的に業績を伸ばしていくには、こうしたステークホルダーから信頼を得ていくことが重要です。
例1:「ステークホルダーの満足度を高めるために、サービスの継続的な改善が必要だ」
例2:「ステークホルダーの信頼を損なうことがないよう、期日までに漏れなく支払うこと」
使い方3:従業員を指すケース |
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自社の従業員は、経営陣にとってのステークホルダーといえます。従業員との信頼関係のことを「従業員エンゲージメント」と呼ぶこともあります。
例1:「ステークホルダーとの信頼関係の構築には、適切な労務管理が欠かせない」
例2:「ステークホルダーの満足度向上を図るため、待遇改善を検討する」
使い方4:グループ企業を指すケース |
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自社と資本関係のあるグループ企業や関連会社も、ステークホルダーの一種です。連結決算ではグループ全体の業績が問われるため、グループ内で良好な相乗効果を生み出していく必要があります。
例1:「ステークホルダーも含めて、経営戦略に則って事業を遂行していくことが重要だ」
例2:「ステークホルダーとともに、グループ一丸となって事業目標を達成しよう」
使い方5:地域社会を指すケース |
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自社が属する地域社会も、広い意味でのステークホルダーといえます。企業の社会的責任を果たすには、地域社会との良好な関係の構築や地域貢献に注力していくことが大切です。
例1:「新規事業の推進について、ステークホルダーの理解を得る必要がある」
例2:「経営理念の根底にあるのは、ステークホルダーとの共存です」
使い方6:債権者を指すケース |
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会社に融資している金融機関などの債権者もまた、自社にとって重要なステークホルダーといえます。融資の返済といった債務を確実に履行し、債権者の信頼を獲得していくことが大切です。
例1:「将来的な資金調達に向けて、ステークホルダーの信頼を獲得していく必要がある」
例2:「利益剰余金を、ステークホルダーへの繰り上げ返済に充てることとする」
使い方7:利益団体を指すケース |
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自社が属する業界と関わりのある利益団体も、ステークホルダーの一種です。この場合、自社の立ち位置は利益団体の構成員に当たります。
例1:「ステークホルダーの意向をくんだ経営計画を立てていく必要がある」
例2:「ステークホルダーが示した指標を踏まえて、事業目標を設定しよう」
使い方8:行政機関を指すケース |
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行政機関は自社の事業を監督する機関であり、広い意味でのステークホルダーに該当します。行政機関の通達事項や告示の内容に則って、事業を推進していくことが重要です。
例1:「先般ステークホルダーより告示されたとおり、サービス算定基準を変更する」
例2:「ステークホルダーの通達を踏まえて、労働安全衛生規則を改定する」
使い方9:マスメディアを指すケース |
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マスメディアは企業や業界に関する報道を担っていることから、ステークホルダーの一種です。近年はとくに、レピュテーション(評判)リスクに対して事前に対策を講じておく重要性が高まっています。
例1:「今回の決定事項については、ステークホルダーへ迅速に公表すること」
例2:「レピュテーションリスクを回避するには、ステークホルダーとの平時のコミュニケーションを深めておくことが重要だ」
なぜ企業にとってステークホルダーが重要なのか

企業にとってステークホルダーとの関係性が重要な理由として、主に次の3点が挙げられます。
- 理由1:企業活動を安定的に継続するため
- 理由2:関係者との信頼関係を築くため
- 理由3:事業をやりやすくするため
それぞれ重要な理由と、企業に求められる取り組みについて確認しておきましょう。
理由1:企業活動を安定的に継続するため |
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企業活動は多方面のステークホルダーによって支えられています。企業活動を安定的に継続していくには、ステークホルダーの理解と協力が欠かせません。 たとえば、株主や投資家の評価が急落すれば、自社の株式を売却するステークホルダーが続出し、株価が急落するおそれがあります。また、取締役の選任をはじめ重要な決定事項に関しては株主総会にて株主の承認を得なくてはなりません。株主や投資家が不利益を被ることのないよう、熟慮した上で企業活動を推進していく必要があります。
理由2:関係者との信頼関係を築くため |
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顧客や取引先、自社の従業員は事業を推進していく上で不可欠な存在です。公平性や透明性を欠いた取引や就業のルールになっていないか、信頼を損なう要素がないか、常に注視していくことが求められます。また、将来にわたって良好な関係を維持できるよう、適切なタイミングで対話や協議を行うことが大切です。 とくに近年は人材採用が難化しつつあります。既存の従業員が不満を抱き、人材が流出するのを防ぐためにも、従業員との信頼関係の構築はいっそう重要な要素となっていくでしょう。
理由3:事業をやりやすくするため |
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間接的ステークホルダーとの良好な関係を築くことは、企業活動を推進しやすくする上で重要なポイントといえます。利益団体や地域社会、マスメディアなどの協力を得られれば、自社の影響力を上回る広報活動やマーケティング活動を実現できる可能性があるからです。 こうした協力体制は、一朝一夕に築けるものではありません。日頃から地道にコミュニケーションや地域貢献を積み重ね、信頼を獲得していくことが重要です。
ステークホルダーとCSR、SDGsの関わり
ステークホルダーと密接に関わりのある用語として「CSR」や「SDGs」が挙げられます。それぞれの用語がステークホルダーとどのように関わっているのか、ポイントを押さえておきましょう。
ステークホルダーとCSR |
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CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業の社会的責任のことです。企業は自社の利益を追求するだけでなく、従業員や取引先、株主などの利益についても考慮し、社会全体に貢献すべきという考え方のことを指します。
会社が存続していくためには、ステークホルダーに対する責任や、ステークホルダーの利益を意識してビジネスを推進していくことが重要です。このように、ステークホルダーと良好な関係を築き、信頼を得ていく上でCSRは重要な考え方といえます。
CSRについては下記の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
ステークホルダーとSDGs |
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SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のことです。紛争や貧困、感染症などの危機を乗り越え、人々が地球上で長く暮らし続けていくために達成すべき17の目標が掲げられています。
SDGsは世界規模での取り組みです。企業においても、取引先や地域社会、自治体などのステークホルダーと連携しながら、社会問題や環境問題の解決に寄与していく姿勢が求められています。ステークホルダーとの情報共有や関係強化は、SDGsの観点からも重要視されている取り組みです。
また、2023年1月31日に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正にて、「サステナビリティに関する考え方および取り組み」の有価証券報告書への記載が義務付けられました。持続可能な経営を実現するための取り組みは、株主や投資家をはじめとするステークホルダーにとって重要な判断材料の1つとなりつつあります。
SDGsについては下記の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
ステークホルダーの関連用語
ステークホルダーには、いくつかの関連用語があります。
- ステークホルダーマネジメント
- ステークホルダー分析
- ステークホルダーエンゲージメント
各用語が表す意味を確認しておきましょう。
ステークホルダーマネジメント |
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ステークホルダーマネジメントとは、企業やプロジェクトの利害関係者を管理することです。主に、具体的なプロジェクトについて関係する人や組織を明確にして信頼関係を築き、それぞれのニーズに対応しながら、プロジェクトを円滑に進めていくことを意味します。 会社運営やプロジェクトの成功のためには、プロジェクトにおける各ステークホルダーの役割を定めた上で、適切なコミュニケーションの中、それぞれの利害や満足度を管理しながら、プロジェクトを実行する必要があります。
ステークホルダー分析 |
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ステークホルダー分析とは、ステークホルダーに対するアプローチ方法を分析することを指します。事業やプロジェクトにはどういった利害関係者が存在するのか、関心度はどの程度高いのか、最終的にどのような状態にしたいのか、といった観点で分析し、結果を取りまとめる手法のことです。 ステークホルダー分析を適切に実施しておくことで、必要な連絡や情報共有を漏れなく行いやすくなります。また、ステークホルダーの立場や状況に応じたコミュニケーション手段を選択することにより、伝えるべきことを的確に伝えられる効果が高まるでしょう。
ステークホルダーエンゲージメント |
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ステークホルダーエンゲージメントとは、ステークホルダーとの良好な関係を築くために、その期待や関心を理解するための取り組みです。エンゲージメントとは、所属・関係する組織に対する愛着や信頼感の度合いのことを指します。ステークホルダーに寄り添う取り組みを通じて洗い出された課題や改善事項に対処し、期待に応えることが相互の信頼醸成において重要なポイントです。 ステークホルダーエンゲージメントの一例として、株主に対する株主総会、IR説明会、株主向けの説明会など、株主に情報を提供する取り組みが挙げられます。また、ショールームや展示会での商品紹介、お客様窓口の運営、顧客満足度調査など、顧客の要望に応える取り組みも、ステークホルダーエンゲージメントの1つです。そのほか、従業員満足度の調査や、サプライヤー向け説明会など、社員や取引先とのコミュニケーションも、ステークホルダーとのつながりを深める有効な施策といえます。
中小企業がステークホルダー分析に取り組む意義

ステークホルダー分析は、中小企業においても重要な取り組みといえます。中小企業がステークホルダー分析に取り組む意義は、主に次の3点です。
新規顧客の獲得につながる |
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ステークホルダーとの関係強化は、新規顧客を獲得するための取り組みとして非常に重要な要素といえます。ステークホルダーの満足度や利益に目を向けることで、新規顧客の獲得を含むビジネスの成長へとつながるからです。 たとえば、信頼関係が築かれている既存顧客は、新しい顧客を自社に紹介したり、サービスを周りにすすめてくれたりします。また、仕事や会社への満足度の高い従業員は、会社に新しいアイデアをもたらすほか、自社サービスに自信や愛情をもって顧客に提案できるでしょう。このように新規顧客の獲得を強化する上で、ステークホルダー分析は不可欠なプロセスです。
BCP対策の強化に役立つ |
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ステークホルダー分析はBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)対策の強化にも役立ちます。BCPとは、企業が災害や感染症、システム障害などの危機に面したときも、重要な業務を継続できるように対策する計画のことです。従業員や地域社会、地域住民といったステークホルダーとのつながりを強めることは、自社のBCP対策の強化につながります。
また、緊急事態においても事業を継続し、社会やステークホルダーに対する責任を果たせる会社であることが示されれば、ステークホルダーからより高い評価を得られるでしょう。万全なBCPの策定によって、従業員も社会に対して責任を果たす会社に所属しているという充実感や、会社に対する信頼感を得られます。
BCPについては次の記事で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
BCPとは?中小企業にも必要?BCP策定が必要な理由とメリットを徹底解説
事業承継への備えになる |
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ステークホルダー分析を適切に実施しておくことは、事業承継に備えておく意味においても重要です。従業員や株主、取引先などのステークホルダーは、経営者が変わることで会社の将来に期待や不安を感じるケースは少なくありません。事業継承が利害関係者に与える影響を十分に配慮しながら進める必要があります。 たとえば従業員に対しては、事業継承や今後の事業の展望について周知し、不安を取り除くことが大切です。取引先や金融機関に対しても、挨拶状を送り、重要な取引先には訪問して報告するなどして、今後の経営体制について説明を行いましょう。このように、どの利害関係者にどういった対処が必要になるのかを明確にするためにも、ステークホルダー分析の取り組みが欠かせません。
ステークホルダーと信頼関係を築くためのポイント
ステークホルダーとの信頼関係を醸成する上で、意識しておきたいポイントを紹介します。
特定のステークホルダーに注力しない |
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ステークホルダーとの関係性を構築していく際には、特定の利害関係者に偏らないよう注意する必要があります。ある利害関係者との関係構築に注力するあまり、別の利害関係者への対応が疎かになるようでは、ステークホルダーの信頼を失いかねないからです。 たとえば、株主の利益を優先するあまり顧客に提供するサービスの品質低下を招いたり、顧客に良質なサービスを提供するために従業員が長時間労働を余儀なくされたりするようでは、バランスを欠いた施策といわざるを得ません。こうした偏りが生じないよう、すべてのステークホルダーとの関係性を常に注視していくことが重要です。
自分自身もステークホルダーに含まれることを理解する |
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従業員自身もステークホルダーに含まれていることについて理解を促し、当事者意識をもってもらうことも重要です。従業員一人ひとりの行動や発言、担当業務への取り組みなどが常に多方面から見られており、評価の対象となっている点を十分に理解してもらう必要があります。 たとえば、営業担当者が売上目標を達成するために強引なセールスを行えば、見込み客や既存顧客、さらには地域住民といったステークホルダーの信頼を失いかねません。一人ひとりが会社の「顔」であり、企業名やブランド理念を背負っていることについて、定期的にメッセージを発信していく取り組みが求められるでしょう。
ステークホルダーを意識した事業方針を策定する |
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事業方針を策定する際には、ステークホルダーに対する姿勢や関係強化を図るための取り組みについても盛り込んでおくことをおすすめします。現場は事業方針を元に戦略や計画を立て、具体的な施策を検討していくことになるからです。ステークホルダーを意識した事業方針を打ち立てることにより、現場においても利害関係者を意識した施策を講じやすくなります。 ステークホルダーの重要性を念頭に置いた事業のあり方は、事業部単位での取り組みではなく全社的な取り組みであるべきでしょう。経営理念や経営方針においてもステークホルダーの重要性に言及するなど、会社全体での取り組みにしていくことが大切です。
ステークホルダーの意味と重要性への理解を深めよう
ステークホルダーとの良好な関係の構築は、企業が持続的に成長していく上で非常に重要な要素です。株主や顧客はもちろんのこと、自社の従業員や地域社会といった幅広い利害関係者が存在することを念頭に置いて事業を推進していく必要があります。今回紹介したステークホルダーの意味や用語の使い方をはじめ、ステークホルダーとの信頼関係が企業経営にもたらず影響について理解を深め、ビジネスをよりよい方向へと導いていきましょう。
リコーでは、ビジネスパーソンが知っておきたい経営用語を、中小企業応援サイト独自のお役立ち資料「聞くに聞けない経営用語集」にて詳しく解説しています。ステークホルダーに関連する用語をはじめ、ビジネスシーンでよく耳にする経営用語への理解を深めたい方は、「聞くに聞けない経営用語集」をぜひご活用ください。

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