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群馬県高崎市に本社を置くトウショウレックス株式会社は、不動産の売買や賃貸、仲介から住宅や施設の建設、リフォーム、マンスリーマンションの提供まで不動産に関わる事業をトータルで展開している企業だ。70人におよぶ従業員の労務管理や、従業員が使っているパソコンの管理をシステム化し、有給休暇や残業など各種申請も端末からペーパーレスで行えるようにして、事務や従業員の負担を減らし仕事に専念できる体制を整えた。(TOP写真:様々な事業を展開するトウショウレックスのホームページ)
2002年2月に創業のトウショウレックス株式会社は、群馬県から近隣の埼玉県や栃木県、茨城県、そして東京都内や神奈川県の案件も取り扱う不動産会社として、群馬県でも有数の存在感を放っている。取締役社長の松本エリカ氏は、創業から間もない2004年に同社へ入社した。
代表取締役会長を務める渡部和祐氏の「徹底した調査に裏付けされた正確な物件情報のご提供、お客様の信頼を勝ち取る営業トーク、スムーズな商談を叶える事前の段取り、プロ意識の高さ」に引かれ、働きたいと申し出た。いったんは断られたものの、パートとして入り正社員に昇格し、2021年10月に社長に抜擢された。
信条・使命・経営ビジョン・行動指針を策定して「誠実」であることを徹底的に守り顧客の信頼を得てきた

ここまで人を引きつける渡部会長とは、「お客様に絶対ご迷惑をおかけしないという信念を持っている人」(松本社長)だという。「『私たちが目指すもの』として2020年に策定したPMVV(目的、PURPOSE / 信条、MISSION / 使命、VISION / 経営ビジョン、VALUE / 行動指針)のうちの行動指針に『誠実』という項目があります。『嘘をつきません。逃げずに向き合い、そして寄り添う。逃げることは遠回りと考えます』という内容で、これを全従業員が徹底して遂行するようにしています」(松本社長)。創業から同社が確実に成長し続けられた背景に、こうした信念がありそうだ。
「VALUE」の中では、「挑戦・進化」と銘打ち、従業員に顧客のためになるサービスを提供したいという気持ちを抱かせ、「前向き・改善」と銘打って、常に改善の努力を怠らないよう求めている。サービスのクオリティを高めると同時に、従業員の意欲を引き出すことにもつながっているようだ。こうした従業員の不断の努力に対し、公平な評価を行うことが、さらなるやる気を引き出しサービスの強化につながる。そんな好循環が生まれている。
「どのような働き方をすれば評価されるのかを可視化しています。主任はこう、課長や部長やこう、役員はこうといった目標に対して、どこまで達成できていたかを評価の際に示すようにしています」(松本社長)。もしも評価基準が示されなかった場合、陰でどうして自分は評価されないのかといった声が起こり、会社の空気がネガティブになってしまう。「定性的な評価ではなく定量的な評価を行う意味でも、基準を明確にする必要がありました」(松本社長)。
日々の実績を記録し定性的ではなく定量的に仕事の成果を把握できるようにして公正な評価を行える体制を構築した

従業員のロードマップ作りにも取り組んでいる。「自分が将来どうなりたいのかを考えてもらい、そのためには何が必要なのか、役職者になるための要件はどうなのか、賃金はどのように変わるのかを示して、将来像を描きやすいようにしています」(松本社長)。こうした長期的な取り組みの一方、毎月優秀な従業員を表彰して報奨金を出すことで、常に全力を出したくなる雰囲気を作っている。表彰式では従業員たちが見守る中で、前に出て松本社長から表彰を受ける。その顔は誰もが誇らしげで楽しそうだ。
統合型運用管理ツールを使い午後7時にパソコンをシャットダウン、事務所も消灯して働き方改革に努める

公正な評価を行う上でICTの利用が必要となる。同社では、日々の一人ひとりの働きぶりがスプレッドシートに入力されるようになっていて、数字で確認できる。どれだけの時間働いたかについても、労務管理のシステムを使って時間を把握している。一方で、働き過ぎが起こらないような「仕掛け」として、統合型運用管理ツールを導入して運用している。
従業員が使っているパソコンが、「午後7時になるとすべてシャットダウンするようになっている」(松本社長)。事務所の照明も7時15分には消えるようになっていて、残って仕事をすることも外で仕事を続けることもできない。緊急を要する案件があれば、残業を申請することで作業を続けられるが、大半は通常の終了時刻を頭に入れ、あらかじめ段取りをつけ効率を考えて仕事をする。これが働くことへの意識の改革を促し、よりよいサービスの提供にもつながっていく。
統合型運用管理ツールは、セキュリティーの強化でも効力を発揮している。同社で業務に利用しているパソコンでは、USBメモリーを使用できないようになっている。「お客様の情報が漏洩(ろうえい)したら大変な迷惑がかかります。従業員たちが頑張って集めた不動産物件の情報が、ほかに漏れて扱えなくなれば大損害です」(松本社長)。そうした事態を避けるには、パソコンからデータを持ち出せなくする必要があった。
一方で、必要なデータはクラウドに上げて共有化し、必要としている人が見られるような環境を整えている。一連のシステムは、銀行でATMシステムの構築に携わったITのエキスパートに来てもらい、構築を行った。パソコンからは有給休暇や残業など各種の申請も行えるため、紙に書いたり入力し直したりといった手間が減った。「紙に印刷することもなくなって、省資源化につながりました」(松本社長)。
リノベーションに力を入れ、中学生の見学を受け付け、地域とのつながりも増やしてSDGsを推進している

この環境に優しいという経営スタンスは、事業の面でも中古住宅をリノベーションしたり資材などの再利用を行って廃棄物を減らしたりする活動につながり、同社のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして評価を得ている。SDGsでは他にも、地元の中学生の会社見学を通して事業を知ってもらって地域とのつながりを強めたり、フードロス対策に協力したりして、地域社会に根ざした企業として同社を見てもらうような活動を展開している。
70人の従業員全員に、最新型のiPhoneを支給しているのも特徴だ。メールによるコミュニケーションの促進、出先で売買契約に関する重要事項の説明に必要な情報へのアクセスなどを可能にしたり、搭載された高性能のカメラを使っての取扱物件の画像収集を行えるようにしたりと、スマートフォン1台で結構な作業を行える。1台10数万円と安くはないが、活用によって得られる便利さを考えれば導入しない手はなかったという。
映像制作のプロが撮影・編集した入社式の様子や建設した物件の紹介映像をYouTubeで公開して会社をアピール

対外的な発信でもICTをフル活用している。ホームページで事業内容を細かく説明している上に、YouTubeに会社のチャンネルを立ち上げてさまざまな動画を公開している。入社式の模様から本社やJR高崎問屋町駅近くにあるショールームへの道案内、自社の取扱物件の紹介映像などがあって、視聴すれば同社の雰囲気や事業内容について理解できる。
「有名アーティストのミュージックビデオも手がけている映像制作会社にお願いして作ってもらっているものもある」(松本社長)。入社式の映像はドキュメンタリー的なストーリー性がある。木造グループホームの施工紹介映像は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも抑えた建設コストで、広々とした無柱の大空間が作られていく様子を見て取れる。ガレージが屋内についたアパートの紹介映像では、魅力的なコンセプトとスタイリッシュな住空間を見て自分も住みたいと思わせる。
2021年の松本社長就任以降、こうしたICT化を積極的に推し進めた同社に魅力を感じ、新卒者も2023年から毎年4、5人のペースで入ってくるようになった。不動産会社というと足を棒にして歩き回る営業がイメージされがちだが、同社では「新入社員には反響営業で売却の依頼があった不動産物件を担当させます。年長者が2人ついて相談に乗りながら一人前になっていってもらいます」(松本社長)とのこと。自身が業界に飛び込んで21年が経ち、パートから社長に上り詰めたように、次代のトウショウレックスを担う人材がそこから生まれてくることになるかもしれない。

企業概要
会社名 | トウショウレックス株式会社 |
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住所 | 群馬県高崎市上中居町17番地1 |
HP | https://www.tousyou7.co.jp/ |
電話 | 027-345-3100 |
設立 | 2002年2月 |
従業員数 | 70人 |
事業内容 | 不動産・建設業 |