富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

総合マーケティングビジネスの富士経済は、価格改定を行うとともに、付加価値メニューの提供や既存店のリニューアルなどによる客単価上昇、客数増加などが進められるファストフード店、ファミリーレストラン、専門料理店の国内市場を調査した。その結果を「外食産業マーケティング便覧 2025 No.1」にまとめた。トピックスとして、2025年市場見込(2024年比)では、上位チェーンも好調なほか、ブームもあり新興チェーンによる参入や出店増も旺盛なドーナツ店が1678億円(9.9%増)を見込む。付加価値メニューの強化が進む一方、割安メニュー展開の動きもみられるハンバーガー店は1兆1072億円(6.0%増)と2024年に1兆円突破した。店舗数増加などによって市場拡大し、他業態からの需要流入も期待できるイタリアFRは、2119億円(15.8%増)と予測する。

この調査では、ファストフード店、ファミリーレストラン、専門料理店(アジア・エスニック料理、西洋料理、日本料理)など食事の提供を主とする外食57業態の市場を捉え、将来を展望した。また、料飲店や喫茶店といった 飲料の提供を主とする飲食店、交通機関やレジャー施設、宿泊宴会場といったコト消費に伴う飲食施設のほか、テイクアウト、ホームデリバリーなど各市場の調査結果の概要については、今後発表する予定である。

ドーナツ(ファストフード店)は、ドーナツをメインに販売するファストフード店を対象とする。ドーナツチェーンの派生ブランドや同一チェーン店名のテイクアウト専門店についても対象とする。

2024年は「ミスタードーナツ」「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が前年に続き店舗数増加と客単価上昇により好調だったほか、「ジャック イン ザ ドーナツ」が駅構内や商業施設への出店により幅広い世代で認知度が向上しており、市場は前年比二桁増となった。さらには、セブン-イレブンや丸亀製麺“丸亀うどーなつ”といったドーナツ店以外によるドーナツの展開強化(市場対象外)など、ドーナツ自体への関心が高まりブームとなったことも追い風となった。

2025年は上位チェーンの店舗数増加や積極的なメニュー展開により好調なことから、引き続き市場拡大が予想される。新興チェーンによる参入や新規出店は旺盛なものの、中位以下の既存チェーンが注力度を増す動きはみられず、上位チェーンへの集約が進むとみられる。

富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

セルフ式うどん(ファストフード店)は、うどんをメインに販売し、立ち食い形式、カウンター席またはテーブル席によるセルフサービスを主体とするチェーンを対象とする。

2024年は昨年まで多くのチェーンが実施した店舗整理が落ち着き、上位チェーンの積極的な新規出店によって店舗数が増加したことに加え、猛暑で冷やしメニューが需要を獲得したほか、「丸亀製麺」が“丸亀うどーなつ”を発売しデザート需要を獲得したことで客単価上昇につながったため、市場は前年以上の伸びとなり、二桁増となった。

2025年は原料価格の高騰が続き、上位チェーンによる価格改定が予想されるほか、小容量うどんメニューの展開によるサイドメニューの注文促進、おでんメニューの展開強化、高級食材を使用したメニューの投入などにより客単価上昇が進むとみられ、市場は引き続き拡大が予想される。

富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

ハンバーガー(ファストフード店)は、ハンバーガーをメインに販売する、客単価1500円未満のファストフード店を対象とする。また、チキンバーガーをメインとする業態や同一チェーン店名のテイクアウトに特化した専門店についても対象とする。

2024年は「マクドナルド」が前年に続き既存店のリニューアルに注力したほか、セルフオーダー端末の設置による回転率の向上や客数増加がみられたことや、「モスバーガー」「バーガーキング」の新規出店による客数増加、付加価値メニュー投入に伴う客単価上昇によって好調だったことから、市場は1兆円を突破した。

2025年は上位チェーンによる店舗数増加や1店舗当たりの売上増によって、市場が拡大するとみられる。近年はフード、 ドリンク両方における付加価値メニューの強化が行われており、アイドルタイムをはじめ利用層の広がりがみられる。また、物価高の中で価格志向の消費者を取り込むため、「ファーストキッチン」や「マクドナルド」では割安なメニューを強化する動きもみられる。

富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

カルビ丼(ファストフード店)は、カルビ丼をメインに販売するファストフード店を対象とする。

市場は2010年に立ち上がり、主力のカルビ丼に加えスンドゥブなど韓国料理メニューをラインアップに加えることで、男性・女性に関わらず幅広い需要を獲得しているため、市場は拡大を続けている。2021年には物語コーポレーションが、2023年には吉野家が新規参入し、市場はさらに活気づいている。

2024年は上位チェーンの店舗数増加に加え季節限定メニューの投入や「焼きたてのかるび」でのドライブスルー店舗の拡充による利便性の向上もあり、市場は大きく伸びた。

2025年も上位チェーンによる出店攻勢が続くとみられるほか、ドライブスルー店舗やモバイルオーダーシステムの導入などによるテイクアウト利用の強化を進めることで、引き続き市場拡大が予想される。なお、立地としては郊外ロードサイドへの出店が多い。ただし、牛丼店やラーメン店など、ほかのファストフードにとってもコロナ禍以降、郊外は重要なロケーションとなっているため、競合になることも考えられ、店舗数増加による認知度向上や、メニュー施策によるリピーター育成が重要と考えられる。

富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

イタリアFR(ファミリーレストラン(FR))は、キッズメニューを設けるなど主に家族連れを想定した、テーブルサービスによってイタリア料理をメインに提供するレストランを対象とする。

2024年は店舗数の伸びは鈍化したものの、各チェーンのメニュー施策が奏功したことや、新興チェーンの「ピソラ」「オリーブの丘」が郊外をメインに新規出店を強化したことから、市場は前年比二桁増となった。

2025年は各チェーンが出店を進めていることから、店舗数増加による市場拡大が予想される。また、ほかのファミリーレストランと比較して価格優位性に優れるとして、「サイゼリヤ」への他業態からの需要流入が期待される。

富士経済、ファストフード店・ファミリーレストラン・専門料理店の国内市場調査、ドーナツ店の2025年市場見込は1678億円

2024年は、各カテゴリーにおいて各チェーンが原材料費の高騰によって価格改定し、付加価値メニューや期間限定メニューの提供、不採算店舗の整理や既存店のリニューアルによる客単価上昇・客数増加に努めたことで、市場が拡大した。2025年も引き続き価格改定や客単価上昇・客数増加策などの展開が予想される。また、新規出店や、DX化によるオペレーションや業務効率の改善による客数増加の取り組みが活発化するとみられる。

ファストフード店では、2024年にはInstagramやXをはじめとするSNSでのプロモーション、自社アプリでのクーポン配布などによって、価格改定によるユーザーの離反防止に成功したため、市場が拡大した。また、ハンバーガー店での ドリンクメニュー拡充や牛丼店でのアイドルタイム需要の獲得などにより、新規顧客開拓が進んだ。

2025年は、上位チェーンによる新規出店のほか、新興チェーンの店舗数増加、セルフオーダーシステム導入による回転率向上などオペレーションの改善による客単価上昇、客数増加などで、市場は引き続き拡大するとみられる。

ファミリーレストランでは、2024年は、上位チェーンを中心に不採算店舗の整理を進めたことで、店舗数は減少したが、客単価上昇、客数増加に努めたことで市場は拡大した。また、価格改定ではなく各種メニュー施策の実施によって、客単価上昇と客数増加につながった例もみられた。

2025年は、前年にあまりみられなかった新規出店が行われていることから、店舗数は微減に留まると予想される。消費者の節約志向の高まりを受けて、割安なメニュー展開や人気メニューの値下げなどによって、ユーザーの間口拡大や休眠ユーザーの掘り起こしを進めるチェーンもあり、市場は拡大するとみられる。

アジア・エスニック料理店では、2024年には、コロナ禍が収束し忘年会や新年会など宴会需要が拡大したほか、都市部やオフィス街を中心に客数が増加したことで市場は前年に続き拡大した。全体の4割程度を占める焼肉料理店では上位チェーンでファミリー層を中心とした需要獲得が進み、好調だった。2025年は、焼肉料理店では上位チェーンが出店攻勢を強めているほか、一般中華料理店や餃子専門店ではメニュー施策への注力度の高まりがみられ、市場は引き続き拡大が予想される。

西洋料理店では、2024年には、イートインのうちディナーを中心とした客数増加のほか、価格改定による客単価上昇により市場が拡大した。2025年はフランス料理や高級イタリア料理が消費者の節約意識の高まりによる来店減少などから伸びが鈍化するとみられるが、カフェレストランがサードプレイスとしての利用が好調なこともあり、市場拡大が続く見通しである。

日本料理店では、2024年には、訪日外国人客数が過去最高を記録したことによるインバウンド需要の増加を受け、市場が拡大した。一方で、店舗数は不採算店舗の整理や個人店の廃業などにより減少が続いている。2025年は、インバウンド需要の獲得やメニュー施策などにより引き続き市場拡大が予想されるが、価格の高騰による客離れが懸念されるほか、職人不足といった人手不足の課題解消は急務となっている。

[調査方法]富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
[調査期間]2025年2月~4月
[小売価格]
書籍版:16万5000円
書籍/PDF版セット:19万8000円
書籍/PDF+データ版セット(全体編):22万円
ネットワークパッケージ版:33万円
(すべて税込)

富士経済=https://www.fuji-keizai.co.jp