点呼業務は法律で義務付けられている?実施の目的や手段を解説!

目次

  1. 点呼業務とは
  2. 点呼業務の役割
  3. 点呼業務の確認事項
  4. 点呼業務の手段
  5. 普及が進むIT点呼とは?
  6. 点呼業務を怠った場合の罰則
  7. まとめ

運送会社では自社が保有する車両を使用する際に、点呼が必要です。点呼を実施する目的は、ドライバーの健康や整備不良などが原因で発生する事故を防ぐことです。

本記事では、自社の点呼業務の改善を検討している人に向けて、詳しい業務内容や方法などを解説します。普及が進むIT点呼についても解説しています。是非最後までご覧ください。

点呼業務とは

点呼業務とは、法律で定められている運行管理者の業務の一つです。本章では、具体的な業務内容や役割などを解説します。

運送会社の点呼業務

運送会社には、運送車両を使用する前後などに点呼を行い、安全な運行が可能かどうかの確認する業務を行う義務があります。この点呼業務は、ドライバーの出退確認、業務指示、および安全な運行が可能かどうかをチェックするための作業です。

特にドライバーの体調に異変がないかを確認することは、運行管理者に課せられた重要な業務といえるでしょう。

※参考:運転者の労務管理等|国土交通省

点呼業務の執行者・記録

点呼業務は『道路運送法及び貨物自動車運送事業法』で、運行管理者による実施と記録が定められています。運行管理者は国家資格の1つで、事業用車両を使用した運送業務における管理者を指します。

一定数以上の事業用車両を有する運送会社では運行管理者の設置が必要で、事業用車両の使用時は運行管理者が点呼を実施して内容を記録し、営業所で保管しなければなりません。

※参考:自動車運送事業の運行管理者になるには|国土交通省

点呼業務の役割

点呼業務には、ドライバーの健康状態によって起こり得る事故を防止する役割があります。ドライバーが体調不良や疲労などがある状態のまま運転をすると、居眠り運転や運転中の意識喪失による事故のリスクが高まる恐れがあります。

また、ドライバーの健康状態を確認するだけでなく、車両が安全な走行が可能かどうかの確認も必要です。

※参考:点呼は安全運行の要|国土交通省中部運輸局

点呼業務の確認事項

点呼業務を実施するタイミングは乗務前・乗務後または中間です。本章では、それぞれの点呼業務で確認すべき項目を解説します。

乗務前点呼

運行管理者による点呼は、乗務前と乗務後の2つのタイミングで実施されるのが原則です。国土交通省では、乗務前に実施する点呼で次に挙げる項目の確認を法律で定めています。

・日常で実施している点検状況
・アルコール検知器による酒気帯びの有無
・ドライバーの健康状態の把握状況

また、事故を未然に防止するために、運行管理者が実施すべき指示内容として次の指示項目が挙げられます。

・運行経路や道路状況、気象状況など
・運行にかかる時間
・運行上注意すべき点

以下は、点呼の際に記録すべき内容です。

・氏名(運行管理者、ドライバー)
・運行業務に使用する車両の登録番号
・実施日時
・実施方法
・アルコール検知器による検査結果
・ドライバーの健康状態(疾病や疲労の有無など)
・日常点検の状況
・その他の必要事項

※参考:運転者の労務管理等|国土交通省

点呼業務の手段

原則として、点呼は対面で実施しなければなりません。しかし、対面での点呼が難しい場合は別の手段で実施します。

原則は対面点呼

やむを得ない事情を除き、ドライバーと対面で点呼することが原則です。やむを得ない事情の主な例は、宿泊を伴う遠隔地に運送が必要な場合などが挙げられます。

点呼業務の手段は対面点呼の他に、電話点呼や遠隔点呼、業務後自動点呼、IT点呼があります。次項では、それぞれの点呼の具体的な方法を解説します。

対面点呼

対面点呼は、営業所または車両を保管している車庫で行う点呼の手段です。点呼業務は対面による点呼が原則です。やむを得ない事情がない限りは、乗務にあたる前後に2回実施します。

電話点呼

運行時間が数日に渡る長距離の運行を行う場合は、対面点呼の実施が困難であるケースも少なくありません。対面での点呼が難しい事情がある場合は、電話点呼による手段を取ります。運行管理者とドライバーが電話で通話して点呼を実施します。

※参考:①-1 同一事業者内での中継輸送について|国土交通省

遠隔点呼

遠隔点呼は2022年4月から申請が開始された制度で、非対面で実施できる点呼の手段です。営業所-車庫間、同一事業者内の営業所間、グループ企業の営業所間での点呼を実施可能とします。 実施には、機器やシステムの導入と届出などの一定の要件を満たす必要があります。提出期限までに運輸支局長や窓口に添付書類を提出し、承認が得られれば遠隔点呼を実施できます。

※参考:対面点呼に代わる遠隔点呼が実施できるようになります|国土交通省

業務後自動点呼

業務後自動点呼は2023年1月から開始された制度で、要件を満たしたロボットを用いて実施する点呼の手段です。実施には運輸支局長などへの届出の提出と、認定機器の準備などの要件を満たす必要があります。

※参考:乗務後自動点呼が実施できるようになります!~ICTを活用した運行管理の高度化に向けて~|国土交通省

IT点呼

IT点呼とは、専用の機器を用いて実施する点呼の手段です。対面点呼や電話点呼の実施が必要ないため、点呼業務の効率化を図れます。IT点呼の詳細は次章で詳しく解説します。

※ 参考:IT点呼の概要|国土交通省

IT点呼と遠隔点呼の違い

遠隔点呼とIT点呼、どちらも運転者の安全確認を遠隔で行う方法ですが、「機器・システムが満たすべき要件」「場所・環境の要件」「点呼を実施できる範囲」が異なります。

IT点呼は営業所や時間、機器・システムに制約があり、場合によっては実施できないことがあります。一方、遠隔点呼は時間の制限がなく、要件を満たす機器を使用すれば、どの営業所でも実施可能です。

普及が進むIT点呼とは?

IT点呼は運送業界で普及が進んでいる点呼の方法です。運送業界で導入される目的や経緯、具体的な手段、効果などを解説します。

導入の目的・経緯

IT点呼の導入は、点呼業務の効率化が目的です。対面点呼では運行管理者とドライバーが対面で点呼を行う必要があり、両者への業務負担を指摘する声も少なくありません。

一方のIT点呼では、ITシステムと専用の測定機器を導入してリモートで点呼を実施することで、業務効率化を図れます。また、IT点呼は働き方改革の推進にもつながります。

IT点呼の手段

IT点呼は、ITシステムと専用の測定機器を連携して点呼業務を行います。IT点呼の実施には、カメラやモニターを設置する必要があります。カメラやモニターの設置により、運行管理者とドライバーが物理的に離れていてもスムーズな点呼が可能です。IT点呼の記録項目は対面点呼と違いはありません。

※参考:遠隔点呼が実施できるようになります!~ICTを活用した運行管理の高度化に向けて~|国土交通省

IT点呼導入による効果

運送会社がIT点呼を導入すると、運行管理者とドライバーは対面で点呼を行う必要がなくなるため、両者の業務負担を軽減できます。また、非接触で点呼を行えることから、感染症の予防も可能です。

また、データによる保管が可能になり、従来のように紙で点呼業務に関する記録をする必要がありません。結果的に、運行管理者の手間も減らせます。

IT点呼と遠隔点呼の違い

IT点呼ではGマークの取得が必要ですが、遠隔点呼ではGマークを取得する必要がありません。Gマークとは、貨物自動車運送業で安全性が評価された優良事業所に与えられる認証です。

また、IT点呼は営業所外での実施は1営業日のうち、連続する16時間以内と制限があります。一方で、遠隔点呼は時間の制約はありません。

※参考:対面点呼に代わる遠隔点呼が実施できるようになります|国土交通省

点呼業務を怠った場合の罰則

点呼業務は法律で義務付けられているため、業務を怠ると罰則が課せられます。本章では、点呼業務を怠った場合の罰則を解説します。

トラックにおける点呼未実施の処分

行政処分は、点呼の未実施回数や、実施事項に不備がある実施不適切の場合が対象となります。行政処分を受けた場合の処分内容は以下のとおりです。

違反行為・回数 初回違反 再違反
未実施 19件以下 警告 10日車
20~49件以下 10日車 20日車
50件以上 20日車 40日車
実施不適切 一部のみ 警告 10日車
全て 10日車 20日車

初回違反かつ未実施19件以下や一部のみ実施不適切の場合は、警告で済む傾向があります。その他のケースでは初回違反でも車両停止の処分が下されます。

点呼記録の不備による処分

点呼に関する記録内容に不備があると、行政処分を受ける可能性があります。行政処分の内容は以下のとおりです。

違反行為・回数 初回違反 再違反
未記録 一部のみ 警告 10日車
全て 30日車 60日車
記載事項などの不備 警告 10日車
記録の改ざん・不実記載 30日車 60日車
記録の未保存 一部のみ 警告 10日車
全て 10日車 20日車

点呼未実施の場合と同様に、初回違反か再違反か、回数によって処分内容が異なります。

アルコール検知器の不備による処分

運行管理者が点呼を行う際はアルコール検知器を使用して、ドライバーの酒気帯びの有無を確認する必要があります。アルコール検知器に関する不備があると発覚した場合は、行政処分の対象となります。行政処分の内容は以下のとおりです。

違反行為 初回違反 再違反
アルコール検知器の未完備 60日車 120日車
アルコール検知器の常時有効保持義務違反 20日車 40日車

アルコール検知器を備えていない場合は、初回違反でも車両の停止処分を受けます。

※参考:「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」|国土交通省

まとめ

点呼業務は法律で義務付けられており、営業所に設置された運行管理者による実施が必要です。点呼業務を怠ると、警告や10日~120日の車両停止の処分を受ける恐れがあります。早急に自社の点呼業務の見直しや、改善をするため、まずは現状の確認を進めましょう。

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点呼業務は法律で義務付けられている?実施の目的や手段を解説!
記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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