
キリングループのヘルスサイエンス事業は、アジアパシフィック(APAC)の消費者に幅広くリーチし、健康課題の解決に貢献していくビジネスモデルの構築を目指している。3月5日、キリンホールディングスでは、ヘルスサイエンス事業戦略ならびに、ヘルスサイエンス事業に共に取り組んでいくファンケルおよびBlackmores Limited(以下、ブラックモアズ)の事業戦略を発表した。キリングループのヘルスサイエンス事業ではCSV(Creating Shared Valueの略。消費者や社会と共有できる価値の創造)経営の重点課題の一つである「健康」への取り組みとして、「プラズマ乳酸菌」を配合した商品の国内外への展開を進めている。特に2023年8月にブラックモアズがキリングループの一員となって以降、APACにおける消費者の健康課題解決を目指し、ヘルスサイエンス領域におけるビジネスモデルの構築とシナジーを探索。今回初めてキリンとブラックモアズが共同開発した商品「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」を台湾で発売することなどを発表した。

「キリン・ファンケル・ブラックモアズがそれぞれに持っていた強みを掛け合わせて、消費者への提供価値を最大化し、APAC最大級のヘルスサイエンスカンパニーとなる。そのために、消費者のニーズを起点にコンセプトを設計し、グループ内外の素材・技術を組み合わせ、幅広い商品を展開すると共に、高付加価値素材の探索、機能開発によって、潜在的な消費者の健康ニーズや事業チャンスを開拓する」と、キリンがヘルスサイエンス事業で実現したいことを、キリンホールディングス 取締役 常務執行役員 ヘルスサイエンス事業本部長 吉村透留氏が高らかに宣言する。「ブラックモアズのナチュラル・ヘルスにおける強いリーダーシップ。ファンケルの幅広い商品と技術力、店舗・通販チャネルを通じた顧客理解および化粧品事業と、健康食品事業の両方を展開する強みといった、当社だけでは届けられない消費者へ価値を届ける。そして当社だけでは生み出すことができない価値を創出していく」と、単独ではできない取り組みを3社の力を結集して成し遂げていくことで、世界の消費者一人ひとりの健康促進に寄与していくと語る。

「健康課題への当社独自のアプローチとして、土台の健康づくりを推進することで、人間が元来もっている力を高め、個別の健康課題をより効果的、効率的に解決に導くことを提案。素材からサービスまでグループの強みを発揮し、消費者の個別の健康課題解決を目指す。さらに、プラズマ乳酸菌を中心に、健康のベースに必要な要素である『食事・運動・休息』に『免疫ケア』を掛け合わせ、人間が元来持っている力を高めていく」と、健康課題に対するキリン独自のアプローチについて言及する。「内外美容の取り組みについては、両社の知見・アセットを生かし、肌の健康と美容を提供するための革新的なアプローチを探索する」と、キリンとファンケル双方で、価値創造に向けたパーパスを作成。今後の両社の強みを生かした具体化を進めるという。

「サプリメント、健康関連の食品および 飲料、スキンケアの分野はAPACに広く展開しながら、各ブランドは各エリアでポジションを明確に棲み分け、消費者の健康課題解決に貢献する」と、各エリアでブランドごとに戦略を立案していくことで、効率的に消費者の健康課題解決に貢献していくのだと訴える。「各エリアでの事業戦略として、各ブランドが基盤としている市場で、マーケットリーダーの地位を強固にするべく、豪州では、安定市場でNo.1シェアを維持。協働してヒト試験を実施していく。中国では、ブランド投資による認知度向上とチャネル展開拡大による成長を加速。東南アジアでは、成長市場のニーズに合わせた商品展開によるプレゼンスの拡大とスキンケア市場の新規開拓を模索していく。そして日本では、事業プロセスの最適化とキリン、ファンケルブランドでの成長を実現。健康課題への内外ケアのアプローチのさらなる展開を図るべく、キリン・ファンケルの両ブランドを活用し、幅広い消費者へのアプローチとチャネル特性に合わせたアプローチ強化によって付加価値を創出していく」と、APAC最大級のヘルスサイエンスカンパニーとなるため、2030年までに事業利益拡大を実現するべく、キリン・ファンケル・ブラックモアズ3社のオーガニック成長に加えてグループならではの取り組みを推進していくと語気を高めた。

「広範囲の免疫細胞を活性化するプラズマ乳酸菌は、素材の価値向上に向けて取り組む。また医薬品開発も含め、さらなる高付加価値化を進めていく。国内での基盤を盤石なものとしつつ、海外はブラックモアズも活用し、台湾を皮切りに毎年展開エリアを拡大していく。そして、大手食品企業と交渉・外部企業と提携し海外での機会探索など、導出の拡大を図る」と、プラズマ乳酸菌事業は素材の高付加価値化と国内外での展開を拡大すると発表。「プラズマ乳酸菌サプリメントは、3月に台湾で上市し、豪州では2026年の上市を目指す。タイ・ベトナムにおいては2026年以降に順次上市していく」と、機能開発や規制対応は新たな素材や新商品上市にも展開可能と説明。「3月5日には台湾へ初進出となる『澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末』を発売した。顆粒商品でのテスト販売を通じて、台湾におけるプラズマ乳酸菌の受容性を確認し、今後の展開国拡大の検討につなげる」と、台湾での「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」の販売を足がかりにプラズマ乳酸菌の展開国拡大を図る。「8月26日には業務用チャネル向けに『キリン iMUSE 免疫ケア顆粒サプリメント』を販売する。大容量1kg袋の顆粒商品の発売によって社食や給食事業などの新規チャネル開拓を行い、消費者の免疫ケアの習慣化を促進する」と、国内では新たなチャネル開拓を行い、プラズマ乳酸菌事業の成長を加速させる考えを示した。
「定量目標については、2025年は初の事業利益黒字を実現し、2030年には売上収益3000億円規模、事業利益300~330億円を目指す」と、今年初の黒字化を達成し、5年で急拡大させるのだと意気込んだ。

「ブランドマーケティングカンパニーへの変革、海外事業の成長シナリオ策定・実行、中長期構想の策定、実現に向けた体制・基盤整備の着手に取り組む」と語るファンケル 代表取締役 社長執行役員 三橋英記氏。「昨年度は紅麹問題や中国における苦戦によって単年での成長は鈍化、ただし売上収益は前年を超えることができた。化粧品事業では新規投入商品および『アテニア』の販売好調、健康食品事業では『プレミアムカロリミット』の販売好調が売上増に寄与した。紅麹問題も概ね落ち着き、定期顧客数は紅麹問題発生前の水準に戻ってきている」と、新スキンケアライン「toiro」の上市や、「アテニア」ブランド計が過去最高売上を2年連続更新、「カロリミット」ブランド計の昨年売上が前年比108%であったと振り返る。

「『顧客に選ばれるブランドに』再構築するべく、化粧品事業では、『肌不調』を解消するファンケルという確固たるポジションを確立。健康食品事業では、健康サポート企業としての信頼を獲得し、企業ブランド『ファンケル』を育成する」と、キリンのブランドマーケティングの優位性をファンケルにも積極的に投入していくと訴える。「化粧品事業の重点取り組みとして、『基礎スキンケア』と『洗顔』領域を強化し、消費者の拡大を図る。また、『男性』『ベビー・キッズ』を中心にチャレンジ領域でのブランド認知を向上させる。一方、健康食品事業の重点取り組みとして、プレシニア層と女性にリソースを集中し、『健康サポート企業』としてのブランド価値向上を目指す。さらに、女性には『カロリミット』ブランド中心、プレシニア層には『えんきん』などに加え、今年大型商品を投入する予定」と、化粧品事業、健康食品事業それぞれ重点的に取り組む分野について発表した。
「海外事業については、キリングループのリソースを活用し、新たな戦略をもとに“選択と集中”を行い、海外事業を次のステージへ進化させるべく、中国の健康食品事業では、投資の選択・集中を行い、着実な売上拡大を図る。また、『アテニア』の中国での一般貿易をスタート。中国市場におけるさらなる存在感の拡大を図る」と、これまでのナレッジを生かすと述べる。「そして、キリン、ブラックモアズとのシナジー効果を創出するべく、中国では化粧品事業の今後の戦略再構築に取り組む。タイ・オーストラリアにはブラックモアズのリソースを活用し、新規進出を予定している」と、中国市場を中心に事業強化を行いながら、グループリソースをフル活用し海外事業を伸長させるとの考えを示した。

「当社は、自然療法の伝統を受け継ぐ、豪州を代表する健康食品(ナチュラル・ヘルス)会社で、豪州を拠点とするナチュラル・ヘルス製品の製造および販売を行っている」と、ブラックモアズ チーフ エグゼクティブ オフィサー アンド マネージング ディレクターのアラスター・シミントン氏。「当社のブランドプロポジションと持続的な競争優位性を支える6つの強みとして、教育とソートリーダーシップ、パートナーシップの獲得、イノベーション、店頭における成功(オフラインとオンライン)、規制・品質・安全性、消費者理解が挙げられる」と、同社の強みについて言及する。「『ブラックモアズ』ブランドでは、消費者に最も信頼された、個性的なVDS(ビタミン剤健康食品、サプリメント、栄養ドリンクトニックを含む)ブランドとして規模を拡大し、長期的に持続可能な成長を実現するべく、すべての人々の健康をサポートするため、顧客接点を最大化することでブランド浸透を促進している。中国および東南アジアでは、より多くの消費者に届けるために、消費者の健康ニーズと政府の健康政策に基づき、市場でのイノベーションとポートフォリオの拡大実現を目指す」と、市場でのポジショニングと戦略について語る。「『バイオシューティカルズ』ブランドでは、専門家のお墨付きで、他に類を見ないナチュラル・ヘルスのソリューションを、錠剤やそれ以外の方法で提供することで、より多くのオーストラリア人の健康をサポートする。そして、自然が持つ唯一無二のパワーを癒しに活かすブランドとして展開している。さらに、大規模な消費者認知の促進や、顧客に対して医療専門家の推薦を加速させたり、イノベーションにおけるリーダーシップを発揮する戦略を図っている」と、同社を代表する2ブランドについて紹介した。

「当社はさらなる成長を目指すべく、アジアでのブラックモアズの存在価値拡大や、免疫領域における予防医療のイノベーション加速、デジタルヘルスにおけるリーダーシップ、本拠地における事業基盤の盤石化を成長ドライバーに掲げ、オペレーティング・モデルの変革を未来への投資と位置づける」とのこと。「アジアでのブラックモアズのプレゼンス拡大においては、新たなチャネルへの展開および新パッケージによって、既存のSEAK(東南アジア・韓国)およびGCR市場(香港・台湾・中国)で成長を実現する。免疫領域における予防医療のイノベーション加速としては、主要な予防医療分野におけるイノベーションの成功として免疫や新剤型などを掲げる。デジタルヘルスにおけるリーダーシップでは、デジタル・チャネルとAIを活用し、APAC全域でデジタル・ヘルス・ソリューションの革命をリードする。本拠地における事業基盤の盤石化については、オーストラリアにおけるカテゴリー成長の原動力となり、リーダーとしての地位を強固にする」と具体的な取り組みについて紹介。「オペレーティング・モデルの変革においては、成長を下支えするため、スピードと変化対応力の向上、コスト改善を推進するシステム・プロセス・能力の改善に投資する」と、将来に向けたアクションプランについて発表した。
「キリンのヘルスサイエンスの事業拡大に向けて、当社では、グローバル経営の専門知識と能力、グローバルな規制対応ノウハウおよび、デジタルヘルスでリーダーシップを確立するための投資で貢献することができると考える」と、キリングループの一翼としてグローバル領域での成長を支えていきたいと訴えた。
キリンホールディングス(以下、キリン)と、ブラックモアズは、キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」を配合した「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」を3月5日から台湾で発売した。同商品は台湾向けに日本で製造し、ブラックモアズ台湾のECサイトおよび台湾大手ECモールmomoで発売している。

「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」(1包1g 15包入り/箱)は、初めてキリンとブラックモアズが共同開発した商品であり、また台湾での「プラズマ乳酸菌」配合商品の販売も初めてとなる。台湾では、健康意識の高まりからビタミン剤や栄養補助食品に対する需要が継続的に伸長しており(出典:Euromonitor「カテゴリー別栄養補助食品の売上高:2019-2024年(Sales of Dietary Supplements by Category:Value 2019-2024)))、消費者が“腸内環境”と“健康”の関係性を意識している傾向が高いことから、「腸内関連商品」は台湾のサプリメント市場全体の約20%を占める最大のカテゴリーとなっている(出典:Euromonitor「栄養補助食品のポジショニング別売上高2019-2024 ※2024年のデータは暫定的なものであり、一部の年間推定値に基づく(Sales of Dietary Supplements by Positioning:% Value 2019-2024. Note:2024 data is provisional and based on part-year estimates.))。また、台湾から日本を訪れる人のサプリメントの消費金額(出典:Overseas Community Affairs Council, R.O.C.(TAIWAN) Taiwan visitors rank as biggest foreign spenders in Japan in 2023 OCAC.R.O.C.(TAIWAN)-News)からも「日本製」の商品が好まれていることから、今後のチャネル拡大を視野に入れ、台湾での発売を決定した。
中味は、「プラズマ乳酸菌」1000億個と食物繊維を1包に配合した。パッケージは、ブラックモアズブランドの品質や商品の特性が伝わるデザインに仕上げている。1000億個の「プラズマ乳酸菌」が配合されていることが一目でわかるよう、ロゴを加えた。
特長は、4つの効能として、改變細菌叢生態(腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整える)、促進代謝(食べたものを処理する体の機能を助ける)、排便順暢(定期的な排便をサポートする)、滋補強身(身体の自然な防御機能をサポートする)--が期待される。日本で特許取得(プラズマ乳酸菌の用途で日本において特許を取得。日本特許取得の食物繊維使用)している「プラズマ乳酸菌」と「難消化性デキストリン」を使用。24本の科学的論文(加熱処理されたLC-Plasmaを用いた健康な人々に対する臨床試験」および「加熱処理されたLC-Plasmaに関する試験管および生体を用いた前臨床試験」に関する論文)に基づいている。添加物は含んでおらず、日本で製造している。
[発売日]3月5日(水)
キリンホールディングス=https://www.kirinholdings.com
キリン=https://www.kirin.co.jp
ファンケル=https://www.fancl.co.jp
ブラックモアズ=https://www.kirinholdings.com/jp/domains/health_science/blackmores/