WeWork
(画像=michelmond / Shutterstock.com)

ソフトバンクグループに関するニュースとして「WeWorkの救済取りやめ…」「資産を最大4.5兆円現金化…」などが叫ばれており、苦しい様子がうかがえる。投資先企業の不振や新型コロナウイルス問題に相次いで見舞われることになり、会長兼社長の孫正義氏の心中も穏やかではないはずだ。最近のソフトバンクグループの動きを追う。

目次

  1. 新型コロナウイルスがソフトバンクGに与えた影響は?
  2. 資産現金化による自社株買い、株価下落に歯止めをかける狙い
  3. WeWorkの経営難と株の買い取りの取りやめ
  4. 孫氏はどのように窮地を乗り切るのか

新型コロナウイルスがソフトバンクGに与えた影響は?

まず新型コロナウイルスの感染拡大によるソフトバンクグループへの影響についてみていこう。

ソフトバンクグループは自らを「投資会社」だと定義している。そして孫氏は「株主価値」こそが重要だとこれまで度々強調してきた。つまり、ソフトバンクグループがビジョン・ファンドなどを通じて投資している企業の時価総額が上がれば自社の業績も良くなる、という理屈を展開してきた。

逆に言えば、投資先企業の時価総額が下がればソフトバンクグループの業績は悪化するということだ。そして今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、このケースがまさに現実に起きる事態となっている。

ソフトバンクグループが保有する代表的な銘柄としては、中国の巨大企業アリババ集団や米通信企業のスプリント、英半導体企業のアームなどがある。例えばアリババ集団に関して言えば、1月中旬に230ドル台まで上がっていた株価が2月中旬には200ドル台を切る結果となっている。

こうした保有株式の価値の下落が株式投資家などに嫌気され、ソフトバンクグループの株価自体も下落していく格好となった。これが新型コロナウイルスの感染拡大がソフトバンクグループに与えた直接的な影響だ。

資産現金化による自社株買い、株価下落に歯止めをかける狙い

ではソフトバンクグループの株価はどれだけ落ちたのか。今年に入ってから株価が最も高かった2月12日の終値を基準にすると、同日の終値5,751円から3月19日の終値2,687円へとわずか1ヵ月あまりで株価が3,064円下落した。下落率で言うと53%減。つまりソフトバンクグループの株価は半分以下になったのだ。

こうした事態をなんとか改善しようとして決定したのが、最大4.5兆円の当社保有資産の売却・資金化である4.5兆円のうち最大2兆円を自社株買いに充て、残りを負債の削減などに充てるというものである。ソフトバンクグループはこの時点で27兆円超の資産を保有しており、約16%の資産を売却するということになる。

通常、自社株買いは株式マーケットに好感される。また、負債が削減されれば財務基盤が強化されたとみなされ、これらも同様に好感される。こうした取り組みで孫氏は自社株式の株価下落に歯止めをかけようとしたのだ。ちなみにソフトバンクグループは資産売却に関する報道発表で、次のような孫氏のコメントを添えている。

「このプログラムは当社史上最大の自己株式取得であり、さらに過去最大の現預金等の増加につながるもので、当社の事業に対する揺るぎない自信に基づくものです。くわえて、このプログラムによって当社は、負債の削減を通じてバランスシートを強化します。なお、今回の資金化の対象となる資産は、当社の保有資産価値の20%に満たないものです」

WeWorkの経営難と株の買い取りの取りやめ

では続いて、ソフトバンクグループの最近の動きとしてWeWork問題についても振り返っておこう。ちなみにソフトバンクグループはWeWorkの運営会社であるウィーカンパニーの筆頭株主である。

WeWorkは世界を舞台に事業の拡大を続けてきたが、深刻な経営難に陥っている。そんな中でソフトバンクグループは約95億ドルの経営支援策をウィーカンパニー側に提案し、昨年10月にはウィーカンパニー側がその経営支援策を受け入れる方向であることが報じられた。

支援策としては既存株主から株を買い取る内容などが含まれていた。しかし今年の3月中旬ごろ、ソフトバンクグループがその計画を見直す可能性がある、という趣旨の報道があり、4月に入ってすぐ株式の買い取りの取りやめが正式に発表された。発表では「最大30億米ドルの公開買付けについて、必要な条件の一部が充足されなかった」としている。

新型コロナウイルスの感染拡大問題が今回の取りやめに影響を与えたのかどうかは不明だ。しかし時期が時期だけに、新型コロナウイルス問題による自社株式の下落もあり、ソフトバンクグループ側が支援に尻込みしたのでは、という見方も強くなっている。

孫氏はどのように窮地を乗り切るのか

こうした危機下でこそ経営者の手腕が本当に問われる。厳しい状況が続くが、世界が注目する投資家・孫氏がこの窮地をどのように乗り切るのか注目される。

だがいますぐに業績回復の道筋を示せ、というのは少し酷と言えるだろう。今回のようなウイルスの世界的な感染拡大は、ソフトバンクグループを含む世界中のほぼ全ての企業にとって想定外だったからだ。孫氏も苦しんでいる。

文・岡本一道(経済・金融ジャーナリスト)

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